「星の講演会」の記録

第91回 探査機が見た冥王星の姿

2015年8月、探査機ニューホライズンズは、冥王星に初めて接近通過し、観測を行いました。その結果、冥王星表面には驚くほど多様な物質や地形が存在していることがわかりました。その中でも目を引くのが、クジラ模様の褐色の地域「クトゥルフ領域」です。
研究の結果、このクトゥルフ領域が冥王星の巨大な月「カロン」が形成したときのジャイアント・インパクトの痕跡であることを示しました。
講演では、冥王星の多様な物質や地形から私たちの太陽系誕生についてお話しました。

概要
日時
平成29年5月27日(土曜日)19:00-20:30
講師
関根 康人(せきね やすひと)氏
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 准教授
講演プログラム(当日配布したレジュメより)
1 太陽系の概観
2 外側太陽系の世界
3 探査機ニューホライズンズが見た冥王星
4 わかってきた、冥王星の誕生と進化
5 さらに遠くへ、新しい地平線を目指して
質疑応答
聴講者からの質問と講師回答

岩石のないガスや氷の惑星の衛星になぜ岩石を含む衛星があるのか?
(Vさん・男性・56歳)

ガスや氷の惑星にも中心(コア)には岩石が含まれています。

原始惑星の生き残りが、4つあるとのことでしたが、なぜその4つと分かったのですか?
(Yさん・?・?歳)

原始惑星はおよそ1000~2000kmくらいの直径の天体だと考えられています。このくらいのサイズの天体の数は多くなく、ケレス、冥王星、マケマケなどに限られます。

①タイタンやエンセラダス周辺に探査機カッシーニが留まっていたとのことだが、スイングバイを利用して超加速した探査機をどのようにして、その場に留めたのか?
②ホルムアルデヒドを2880時間保存して高分子が作られた実験において、一般細菌のコンタミネーションをどのように防いだのか?
(Aさん・男性・20歳)

①エンジンを逆噴射して減速します。
②滅菌した超純水を使いました。

海がある天体があると言われましたが、その海には何かしらの生命は存在したりするのでしょうか?全く存在しないのでしょうか?
(Mさん・男性・40歳)

生命が存在する可能性もあると考えられています。水、有機物、エネルギーという生命の必須要素が存在するからです。

太陽から遠く離れた惑星や天体を探査機で写真を撮る時、対象天体は非常に暗いと思いますが、露出時間が長時間になると思います。露光中に探査機の移動等で画像がブレる可能性があると思いますが、どのようにしているのでしょうか?本質的な質問でなくてすみません。
(Nさん・男性・67歳)

暗いこともふまえて、地上のカメラなどに比べて、非常に高感度のカメラをつんでいます。これによって露光時間が短くてもよいようにしています。

①衛星カロンが冥王星のジャイアント・インパクトにより形成された天体だとすれば、このカロンにも冥王星と同じような有機物が存在する可能性はありますか?
②クトゥルフ領域にある褐色部分に存在する有機物は、どのような物質であると考えられますか?
③冥王星の衛星群の中で、カロンだけが、他の衛星などと比較して大きいのは、どのような理由だと考えられますか?
④クトゥルフ領域の褐色部分は、ホルムアルデヒドとアンモニアの水溶液が、加熱によって有機物ができるだろうと考えた決め手は何か理由ですか?
⑤冥王星は重力が小さいのに、衛星群を従がえているのは、どのような理由がありますか?
(Tさん・女性・54歳)

①カロンの北極にも茶色い領域があり、有機物だと考えられています。
②高分子の有機物で、ベンゼン環などを含んでいます。
③ジャイアント・インパクトの時の衝突する角度や速度がちょうど大きな衛星を作るのにちょうどよかったと思われます。
④前に似たような実験をしていたので思いつくことができました。
⑤重力が小さくてもお互いの重力で衛星になることができます。

NASAの中継をみた時は感動しました!先ほど、色分けされた冥王星の映像でハートの左側が窒素だったのですが右半分は何の氷ですか?
(?さん・?・?歳)

右は一酸化炭素などの氷の成分です。なぜ違う氷なのかなど不明なことは多いですが。

再び冥王星へ探査機を送ったら、ハートとクジラは形を変えているかもしれない?(?さん・?・?歳)

そうですね。特にハートはなくなっているかもしれません。

マケマケなど名前はどうやってつけられるのですか?(?さん・女性・?歳)

いろいろな国や地域の神話の神様の名前がつけられます。

①エウロパ、エンセラダス、トリトンは木星、土星によって継続的に潮汐加熱されて、内部海があるのはわかりますが、冥王星は何故内部海があるのですか?
②セドナ、エリス、マケマケ、ハウメアなどに衛星があるのを初めて知りました。発見方法はドップラー法ですか?
(Yさん・男性・59歳)

①冥王星の岩石成分に含まれる放射性元素の熱で内部が暖められます。
②セドナなどの衛星は、ドップラー法ではなく、セドナなどの準惑星の光度の変化から、その存在が示唆されています。

地球は何年大丈夫ですか?(Nさん・男性・63歳)

地球はあと50億年後くらいに膨張する太陽に飲み込まれますが、それまでは灼熱の岩石の惑星として存在し続けます。ただし、生命が生存できる環境という意味では、太陽の光度の上昇で、あと1億年くらいで温室状態になってしまいます。人類が生存するという意味では、もっと短い期間になると思います。

冥王星は楕円軌道をしていますが、近日点と遠日点とでは表面温度はどのくらい変わるのでしょうか?
(Nさん・男性・58歳)

よくわかっていませんが、10℃くらいは変わると予想されています。

氷河の成分が分かれているのは、何か理由があるのか?(窒素やメタン、一酸化炭素など)
(Tさん・男性・51歳)

それぞれの氷の成分が凝縮しやすい温度があるので、その温度に近い地表面にそれぞれ集まって氷河を作ります。

①どうして冥王星には"水"の海があるのか?メタンとか窒素の海じゃなくて?
②どうして内部では水(液体)でいられるの?
③どうして窒素の氷が対流するの?氷は固体じゃないの?
④冥王星の仲間の天体はハワイ語の名前がついた星があるけどなぜ?
(Tさん・女性・35歳)

①メタンや窒素が液体になっている領域もあると思います。水は氷成分の中でも量が多いので海になります。
②岩石成分の放射性元素の熱で内部は温まっています。
③氷もゆっくりと対流しています。地球のマントルも岩石ですが、1億年といった時間スケールでは対流しています。
④名前の由来まではわかりません。

カイパーベルトには小さい惑星しかありませんか?大きい惑星は存在しえないものでしょうか?
(?さん・?・?歳)

太陽から遠く、大きな惑星ができる時間がかかりすぎるため、巨大な惑星はないと思われています。

冥王星のあの写真から本当に色々なことが分かるとおどろきました。先生はあの写真をみて最初どこに注目し、何に一番おどろきましたか?
(?さん・女性・31歳)

クレーターのほとんどない地表が、部分的ですが、存在することです。地表面が更新するような地質活動があることを示唆しているからです。