プラネタリウム

第57回 イカロス 世界初の宇宙帆船

太陽の光を受けて宇宙空間を進む実験に成功した日本の「イカロス」についてお話をいただきました。 本講演はデジタルプラネタリウムを駆使し、当館スタッフとお二人の講師とでのインタビュー形式で進められました。 またプラネタリウムでの講演のあと、1階体験学習室にてJAXAよりお借りした「イカロス」の模型や、 搭載されてるカメラの展示を講師から紹介していただきました。

概要

日時

平成23年2月19日(土曜日) 午後7時~8時30分

講師

森 治氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 月・惑星探査プログラムグループ 小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」デモンストレーションチーム・チームリーダ)

澤田 弘崇氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA) 月・惑星探査プログラムグループ 小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」デモンストレーションチーム・開発員)

講演プログラム

  • オープニング
  • ソーラーセイルとは何か
  • イカロス打ち上げ
  • ソーラーセイル展開
  • イカロス各部の紹介
  • イカロスの成果
  • まとめ、エンディング

質問と回答

イカロスは減速していたとの事ですが、減速すると太陽に近づくはず。しかし、金星の内側を通過した「あかつき」に対し、外側を通過したイカロスは太陽から離れた事になるように思うのですが、どうなのでしょうか。(Hさん)

イカロスはあかつきと同じ楕円軌道上で減速したので、あかつきに比べ近日点(太陽から一番近いところ)の距離は小さくなります。しかし、それ以外の点では、もとの軌道に比べ単純に太陽距離が小さくなるとは限りません(軌道力学の不思議なところです)。金星通過点は近日点から少しズレていますので、イカロスが減速しても太陽から離れることがあり得ます。(森)

太陽フレアの影響はありますか?また、木星プロジェクトにはどのように反映させていく予定ですか?(Eさん)

太陽フレアは推進力には影響しませんが、メモリが反転してデータが変化したり機器が誤動作することがあります。イカロスは、はやぶさやあかつきと同様、メモリが反転した場合でも、ある程度は自分で修復することができます(太陽フレア発生時に実践しています)。木星計画において、強力な磁場への対策(部品選定やシールド等)は検討していますが、太陽フレアに対しては、これまで以上に対策を施すことは考えていません。(森)

もし、時間と予算が充分にあれば、イカロスに可動式太陽電池パネル(SAP)やリアクションホイール(RW)やハイゲインアンテナ(HGA)が載せられたのでしょうか? それとも、イカロスの基本構造上、元々できないことですか?(女性)

時間とお金の他に、重さという重要な制約があります。もし、重さの制約がなければ載せられたと思います。ただ、スピン型の探査機なので、ハイゲインアンテナ(高利得アンテナ)は使い方がとても難しかったと思います(常にアンテナを地球の方に向けてなければいけないのです)。(澤田)

※太陽電池パネル…SAP:Solar Array Panel
※リアクションホイール…RW:Reaction Wheel
※ハイゲインアンテナ(高利得アンテナ)…HGA:High Gain Antenna

木星に行くハイブリッドな衛星(太陽光圧による推進と、太陽電池を電源としたイオンエンジンによる推進ができる衛星)は何年後ぐらいに飛ばしますか。(9歳男性)

2019年ごろに打ち上げることを想定しています。5年後に木星に到着し、さらに5年後にトロヤ群小惑星(木星の軌道付近にある小惑星)に到着します。アメリカとヨーロッパもそれぞれ2020年ごろ探査機を打ち上げ、木星の衛星(エウロパ、ガニメデ)を目指す予定です。これらの探査機と共同でミッションを実施したいと考えています。(森)

日本が、他の国と違い成功した秘訣は?また、今後どのような探査を計画しているのですか?(女性)

イカロスの開発のヤマ場は、膜面の製作と展開機構の開発でした(いずれもソーラーセイル固有の技術です)。膜材料のポリイミドの生産は日本が生産を支えていると言えるほど、日本企業の技術は優れています。これらの会社と協力することで、イカロスの膜面を作り上げることができました。 展開機構については、「折り紙」を実践して膜面を折りたたみ、展開実験を繰り返しながら改良を重ねました。膜材料に対する日本の高い技術力と日本伝統の「折り紙」がイカロスを成功に導いたと思います。 次の計画では、膜面サイズをイカロスの10倍とし、大部分に薄膜太陽電池を貼り付けます。この電力を使ってイオンエンジンを駆動させ、ソーラーセイルと合わせたハイブリッド推進を実現します。このソーラー電力セイル探査機によって木星・トロヤ群小惑星を目指します。(森)

イカロスとの通信にはどのくらいの時間がかかりますか?今後、イカロスはどうなるのですか? どこに行くのですか?(30代男性)

2011年2月中旬において、イカロスの通信時間(往復)は約15分です。 イカロスは太陽のまわりを楕円軌道で回り続ける人工惑星となりました。イカロスと地球の距離は今後徐々に増加し、通信時間も長くなります。 順調であれば2012年の年末には地球から最も離れた地点に到達し、通信時間(往復)は30分以上になります。(森)

イカロスと言えば、工学的成功はもちろんですが、キャラクターを使った広報でも大成功をおさめています。このキャラクター(イカロス君)で行こう!と思ったキッカケなど教えていただけましたら、と思います。(Hさん)

イカロス君は勝手にツイッター(別ウィンドウで開きます)をやり始めたので、スタッフも実は分かりません。彼本人に聞いてみたら答えてくれるかもしれません。(澤田)
※追記 「イカロス君」は、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の広報用ホームページやブログ、ツイッターで活躍するキャラクターの名前です。詳しくは、―翼を広げて―IKAROS(イカロス)専用チャンネル (別ウィンドウで開きます)などをご覧ください。

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