郷土と天文の博物館ブログ

この秋の夜空の見どころ(2020年)

令和2年11月7日

街もすっかり秋模様。並木道が、赤や黄色に染まる季節となりました。
最近は、あっという間に日も暮れます。
秋の夜長。のんびり夜空を見上げてみましょう。

夜の早い時間(日没後~午後8時頃)は、木星・土星・火星

 【夜の早い時間】には、【西の空低く】に「木星」が見えています。黄色っぽく明るいので、すぐ見つけることができるはずです。木星のとなりで、やや控えめに輝いているのは「土星」です。11月19日(木曜日)と12月17日(木曜日)には、木星と土星の近くに、さらに月も寄り添います。月と木星と土星の競演は、お天気がよければ、だれでも楽しめます。

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図:2020年11月19日午後7時頃、南西の空での土星・木星・月の位置関係

 木星も土星も火星も、地球と同じように太陽の周りをまわる太陽系の「惑星」です。太陽系の惑星は、全部で8個あります。「すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい」と、惑星の並び順を覚えませんでしたか?太陽に近い方からの並び順で、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星です。どの惑星も、太陽の周りを回っています。地球は、太陽の周りを1年(365日)で一周します。地球の一つ外側のレーンを回る火星は、一周するのに約1年10か月かかります。さらに外側の、木星は約12年で、土星は約30年で一周です。

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図:宇宙から俯瞰した太陽系の惑星と軌道線(惑星の位置は2020年11月頃)

 私たちは、地球に暮らしていて、地球から他の惑星を眺めているので、夜空で見える惑星の位置や明るさは、どんどん変化していきます。いまは南側に土星、西側に木星ですが、年末には木星が土星を追い越して、来年は南側に木星、西側に土星と位置が入れ替わったように見えます。

 西の空で「木星」と「土星」を見つけたら、そのまま振り返って空を見上げると、やや南寄りの東の空高くに、赤く輝く「火星」が見えています。いま火星が明るく見ごろなのは、地球と火星の距離が、普段より近いからです。地球は、火星の内側を回っていますので、定期的に火星と横並びになります。火星の内側を移動する地球が、火星を追い抜く直前、地球と火星の距離が最も近くなります。これを「最接近」といいます。先月の10月6日が最接近で、ちょうど地球が火星の真横に並んだ日でした。最接近から1か月が経とうとしていますが、11月上旬では、まだまだ明るく輝く火星を、葛飾の街中でも十分に楽しめます。もちろん火星の内側から追い越した地球は、いまこの時も火星からの距離がどんどん遠ざかっています。ですから今後、定期的に火星を観察すると、少しずつ暗くなるようすもわかります。

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図:最接近の地球と火星の位置関係(2020年10月6日)

夜中(午後11時~午前1時頃)は『赤い三角』

 夜中、寝る前にも空を見上げてみましょう。最近の【夜中、南の空】には、赤い星を結ぶとできあがる三角形が広がっています。赤い星の一つ目は、火星です。夜中、南西の空に見えます。東の空高くのオレンジ色の星は、おうし座の一等星アルデバランで、さらに東の空低く赤っぽい星が、オリオン座の一等星ベテルギウスです。火星とアルデバラン、ベテルギウスの、赤い星を3つ結ぶと、空を渡るような細長い三角のできあがりです。火星の位置は、来年、再来年と変わりますので、今年、2020年だけの特別な『赤い三角』です

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図:2020年11月頃の夜中、東~南~西の空にみえる『赤い三角』

明け方(午前5時頃~日の出前)は、金星

 早起きが得意な方は、夜中の赤い三角はパスして、明け方の空を楽しむのもおすすめです。最近の【午前5時頃、東の空高く】には、金星が昇っています。金星も惑星です。金星は、およそ7か月で一周、地球の内側を回っています。地球に暮らす私たちが眺める空では、時期によって、夕方西の空に見えたり、明け方東の空に見えたりします。今は「明けの明星(みょうじょう)」の時期です。うっすらと東の空がしらんでいく中で輝き続ける金星は、まさに明けの明星の名にふさわしい光景です。

 夜といえどもこの秋は、夜の早い時間、夜中、明け方とそれぞれ見どころがあります。ご紹介した見どころは、街中でも晴れていれば楽しめます。ただし、高層マンションやビルに囲まれた場所だと、建物に隠れて見えないこともあります。昼間のうちに、お目当ての天体が見える方向の空が見渡せるか、観察場所を確認しておくとよいでしょう。あとは見える時間をお間違えなく、空を見上げてください。

記事・作図:博物館専門調査員(天文担当)

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