郷土と天文の博物館ブログ

葛飾の正月のごちそう

令和2年12月3日

12月を迎え年の瀬の忙しい時期をお過ごしと思います。そろそろ新しい年を迎える準備を始めたいですね。

 全国的に正月には、おせち料理といわれる料理が食べられています。そのほとんどは、特産品を使った地域独自のごちそうです。今回は、葛飾区のお正月特有の食文化を紹介していきたいと思います。

餅つきと雑煮

葛飾区青戸地区の餅つきの様子。昭和30年代。

 年末がせまると餅つきを行います。12月31日は正月(元旦)の前日のため「一夜餅」、29日は9が苦と読めるので「クンチ餅」といって餅つきは行いません。もっぱら27日、28日もしくは30日に行います。この餅つきですが、家族はもちろん近所や親戚の人と手伝いあって行っていました。餅つきをする家に米を持参して一緒についたりしていたようです。

 餅は米以外にも粟(あわ)やモロコシなどの雑穀を混ぜた餅もつきました。そのほかにもゴマや海苔を混ぜてつくった家もあったようです。

葛飾区内正月雑煮、餅とサトイモ、小松菜が入っている

 新年を迎えてからは、1年に1度のごちそうと、お雑煮を食べました。ごちそうは家々で違いを見せましたが、購入した食材を中心に魚をメインとしたものが多かったようです。そのほかに里芋を煮たものなどを食べていました。

 葛飾の雑煮は醤油ベースの澄まし汁に、カクモチを焼いたものが基本です。だし汁はかつおぶしでとります。餅のほかに、餅と同じ大きさ程の薄味で炊いた里芋も入れて、餅とともに食べます。具材は葛飾産の大根や小松菜、にんじんくらいで比較的シンプルなものでした。

 都市化が早くから進んでいた葛飾では地方から多くの人々が集まっていたので、雑煮は様々なバリエーションがあったといえます。特に埼玉県南部、千葉県北東部との交流が多かったため、その地域の雑煮の特色が継承されており、根菜や豆腐などをたくさん入れるけんちん汁のお雑煮を食べている家も多かったようです。

山東菜(さんとうさい)の漬物

埼玉県三郷市の山東菜畑

 お雑煮のほかにも、正月になってから食べるごちそうとして「山東菜の漬物」がありました。山東菜はアブラナ科の野菜で、白菜に似ていますが、塩漬けにすると、白菜漬けのように酸っぱくならないので正月から2月くらいまで食べることができたそうです。

 この山東菜は、葛飾区を含む東京の南東部の地域で栽培が盛んで、市場では125日から15日までしか取り扱われず、幻の菜っ葉とまでいわれています。葛飾区郷土と天文の博物館では、山東菜の歴史や文化を後世に継承していくために、葛飾産の山東菜※の販売を「歳の市(農業交流市)」で行います。栽培する農家さんも少ないため出荷量も10株のみです。ぜひこの機会に葛飾区の郷土料理に触れてみてはいかがでしょうか。

※葛飾産の野菜ブランド葛飾元気野菜ウェブサイト(外部サイトが別ウィンドウで開きます)もぜひご覧ください。

青戸地区に伝わる山東菜の漬物のレシピ
山東菜の漬物
材料
  • 山東菜:1株
  • 塩:約100グラム(山東菜の3パーセントが望ましい)
  • 赤唐辛子:2本
葛飾区内で栽培された山東菜を干しているところ
作り方

1)山東菜は縦8つに切り、よく洗ったら、半日干しておく。

上がった水を取り、別の容器に入れなおしているところ

2)山東菜のそれぞれの根元に切り込みを入れ、切り口を上にして山東菜をきっちり敷き並べる。全体に塩をすり込む。特にしっかり根元の部分にすりこむ。

3)漬物たる(容器)に重ねて入れ、中蓋をし、山東菜の重さの23倍の重しをする。

完成した山東菜のつけもの

4)水が上がったら、それまでの重しを半分以下ぐらいにする。2週間過ぎたあたりで食べられる。

山東菜の漬物マスターからのワンポイントアドバイス
  • 苦くなってしまうので、半日以上は干さないで。
  • 気候や環境によって漬かり具合が変わるので味をみながら判断してください。

記事:博物館学芸員(歴史担当)

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