郷土と天文の博物館ブログ

12月の夜空の見どころ(2021年)

令和3年12月3日

博物館前の曳舟川親水公園の木々の葉っぱも落ち、心なしか空が広くなりました。最近は、華やかなウィンターイルミネーションや街の夜景の楽しい季節です。さらに空を見上げると、街のあかりに負けず見ごたえのある星空を楽しめます。さぁ、大きく深呼吸して夜空を見上げましょう。

明るい金星と木星

12月上旬は一年で一番日の入りの早い時期です。日の沈む午後4時半頃から、5時過ぎまでの数十分間は、西の空で夕焼けから夜空へ移ろう、空の色の変化を楽しめます。

日没後すぐから西の空を眺めると、まもなく一番星が輝きます。12月4日に明るさのピークを迎える「金星」です。明るさはマイナス4.7等。明るいのですぐに見つけることができますが、太陽を追いかけるようにしてあっという間に低くなってしまいますので、西の空がひらけた場所で見るのがお勧めです。

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撮影:2021年12月1日午後5時20分

この写真は、博物館前庭にて、スマートフォンのカメラで撮りました。街灯に負けず、明るく輝く金星と木星が映っています。写真右付近の点が金星で、左上付近の点が木星です。一眼レフカメラや特殊な高性能のカメラでなくても、手軽に記念撮影ができます。

金星の輝きは、金星そのものが放った光ではなく、太陽の反射光です。金星がものすごく明るく見えるのは、地球と金星の距離が定期的に近づくことも理由のひとつですが、最大の理由は、金星が太陽の光を跳ね返す「反射率」が大変高いことです。金星にあたった太陽の光の約8割が金星の地面には届かず反射されます。私たちが空を見上げて金星を見たとき、金星に当たって跳ね返された太陽の光をみているというわけです。

ではなぜ、金星は反射率が高いのでしょうか? それは、金星が、ぶ厚い雲に覆われているからです。金星は私たちの暮らす地球と同じくらいの大きさがあり地面がある岩石質の惑星です。二酸化炭素の大気に取り囲まれていて、さらに硫酸の雲に覆われています。金星の雲を通りぬけて金星に届く太陽の光は全体の2割と少ないのですが、金星を覆う二酸化炭素の大気が、おふとんや温室ハウスのような役割をして熱が籠もり、金星の気温は約460度と非常に高温であることがわかっています。いわゆる「温室効果」の結果です。いま地球でも環境問題として話題になっています。

明るい一番星の「金星」が見つかったら、そのまま左斜め上方向に目を移してください。方角は南から南西方向です。金星よりもさらに空高いところに「木星」が見えます。木星の明るさは、現在マイナス2等級で、明るく見ごたえがあります。木星は地球よりもさらに太陽から遠いところにある惑星ですが、金星と同じく反射率が高い惑星のひとつです。木星は地面のないガスが主な成分の惑星ですので、太陽の光を跳ね返す反射率が約7割もあります。さらに太陽系の惑星の中で最大の大きさであることも明るく見える理由のひとつです。

「金星」と「木星」が見つかったら、二つを結んだ真ん中あたりに「土星」もあります。金星や木星にくらべるとちょっと控えめな明るさです。

頭上の星を待ち伏せしよう

 こんどは、星もいくつか探してみましょう。葛飾で星を見る時のお勧めは、日にちと時間を調べて、その時に頭の真上に見える星を待ち伏せして見る方法です。空の低い所に見える星は建物や木に隠れてしまったり、街の明りが邪魔をして、観察が非常に難しいのですが、それに比べて頭の真上の空は街の明りの影響も受けにくく、よっぽどの高層ビル群でもない限り良く見えます。それでは、最近(12月上旬)の待ち伏せ時間を紹介しましょう。

夜8時頃

北の空を正面に背筋をそらせて見上げると...
5つの星でアルファベットのMや数字の3のように結ぶことのできる「カシオペヤ座」に出合えます。

夜10時半頃

頭の真上を見上げると...
「すばる」が昇っています。すばるは、星の集まりで星団と呼ばれる天体のひとつです。日本では各地で様々なすばるの和名が残っています。葛飾のある、ここ関東では、「むつらぼし」と呼ばれていました。「むつらぼし」の名前のとおり、小さな星が六つ連なっているように見えます。ごちゃごちゃと星が集まっている様子が、なんとなく目だけでもわかるはずです。もし、双眼鏡やオペラグラスをお持ちでしたら、それで覗いてみるともっとよく観察できます。

夜午前0時半頃

頭上に見えている星を指で追っていくと...
将棋の駒のような5角形ができます。日本で「五角星(ごかくぼし)」と呼ばれていた「ぎょしゃ座」の形です。そのまま目線を南へおろしていくと、冬の王者「オリオン座」とも対面できます。

もっと正確な時間で『待ち伏せ』したい場合は、「星座早見盤」を使って時間を調べることができます。あとは待ち伏せ時間に外に出て、頭の真上を見上げるだけです。少しくらい遅刻しても大丈夫。星は南から西へ巡っていきますので、待ち伏せに大遅刻してしまった場合は頭上から西寄りの空でお目当ての星や星座に出合えます。

寒さ対策も忘れずに、暖かい服装で冬の夜空を楽しみましょう!

記事・写真:博物館専門調査員(天文担当)

※このブログの内容は"FMかつしか「まなびランド」"で令和3年12月3日に放送した内容を編集したものです。博物館専門調査員(情報担当)

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