郷土と天文の博物館ブログ

文化財防火デー

令和4年1月27日

毎年1月26日は文化財防火デーです。昨年の年末くらいから、駅や神社、お寺などに貼られたポスターをご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで今回は、文化財防火デーについてご紹介したいと思います。

写真:文化財防火デー消防演習(平成28年(2016)1月22日) 郷倉(区指定有形文化財)の方向へ一斉放水 撮影場所:堀切小学校

文化財防火デーは、文化財保護思想の一層の強化を図るための普及啓発事業の一環として、「文化財を災害から守り、国民の文化財愛護意識の高揚を図る」目的で昭和30年(1955)に制定されました。では、なぜ1月26日なのでしょうか?それは、文化財保護についての総合的な法律である文化財保護法が制定されるきっかけとなった、ある火災が発生した日だからです。

戦後間もない昭和24年(1949)1月26日早朝、聖徳太子しょうとくたいしゆかりの寺院として知られる奈良県斑鳩いかるが町の法隆寺ほうりゅうじ金堂こんどうで火災が発生しました。当時金堂は解体修理中だったため天井より上の部分の部材と、金堂に安置されていた仏像は他のお堂に移されていたため無事でした。しかしながら、金堂内の壁画の大半と柱は、火災の火と熱で焼け焦げた状態になり壁画は元々の色彩がほとんど失われてしまいました。飛鳥文化を代表する仏教美術として貴重な壁画の焼損は日本国民に強い衝撃を与えました。
さらに、この火災にとどまらず、立て続けに愛媛県の松山まつやま城や北海道の松前まつまえ城でも火災が発生、わずか半年の間に当時の法律で指定されていた国宝3件が火災に遭う事態となり、文化財保護の強化を求める世論が高まります。
この世論の高まりを受け、昭和25年(1950)5月30日、文化財保護法が議員立法によって制定されます。その後、同法は時代に合わせた改正を重ねながら、今日に至っています。また、法整備とともに体制も強化、文部省の外局として文化財保護委員会を設置します。この委員会は、昭和43年(1968)には他の部局と統合され、文化庁となりました。

さて、法整備などで文化財保護行政が確立されていくなか、昭和29年(1954)11月3日に法隆寺金堂の修理事業が竣工します。そして翌年、現在の文化庁と総務省消防庁によって文化財防火デーが制定されました。この際、「法隆寺金堂火災の日」であることと、「1月2月が1年で最も火災が発生しやすい時期」であることから、1月26日が選ばれました。
昭和30年の第1回以来、毎年1月26日を中心に、文化庁、総務省消防庁、都道府県・市区町村教育委員会等、各自治体消防本部、文化財所有者、地域住民等が連携・協力して全国各地で文化財防火運動や消防演習が実施されています。
葛飾区内では例年、金町消防署が帝釈天たいしゃくてん題経寺だいきょうじで実施しており、本田ほんでん消防署は管轄区域内の寺社などで消防演習を実施しています。過去には東四つ木の浄光寺じょうこうじや堀切の宝性寺ほうしょうじなどで実施されました。しかしながら、令和3年(2021)と4年(2022)は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて中止となっています。

記事・写真:博物館専門調査員(文化財担当)

※このブログの内容は"FMかつしか「まなびランド」"で令和4年1月26日に放送した内容を編集したものです。博物館専門調査員(情報担当)

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