郷土と天文の博物館ブログ

台風と星座

令和4年9月30日

9月は台風のシーズンでもあります。天気予報でも台風情報が何度となく登場します。台風は、毎年発生順に1号2号と番号がつきますが、合わせて名前もつけられます。かつて葛飾にも大被害をもたらした「カスリーン台風」もその一つです。

台風の名前は西暦2000年から、日本付近やアジア地域で発生した台風には、米国とアジア各国で取り決めた台風の名前が付けられるようになりました。日本を含む14カ国で、全部で140個の名前リストから順番に、台風に名前がつけられます。各国が10個づつ名前を提案していて、日本が提案した名前は、すべて「星座」の中から選んだものです。

どんな名前かというと...
「こいぬ」「やぎ」「うさぎ」「かじき」「こと」
「くじら」「こぐま」「コンパス」「とかげ」「やまねこ」
の10個です。馴染みのある星座はありますでしょうか?

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この中で特に有名な星座は、「こと座」でしょうか。
9月下旬から10月上旬には、夜8時ごろ南西の空高くに見えています。
一等星のベガは、小学4年生が理科で学習する「夏の大三角」の星のひとつです。

他には...
冬の季節の「こいぬ座」や「うさぎ座」
しっぽの先の星が北極星の「こぐま座」
暗い星を結んでつくられたのでオオヤマネコのように鋭い目で見ないと分からない「やまねこ座」
海の怪獣「くじら座」や、秋の空高くに隠れている「とかげ座」
葛飾からは見られない南の「コンパス座」や「かじき座」
そしてお誕生日の星座の一つ「やぎ座」も選ばれています。

やぎ座は、毎年9月下旬から10月上旬に夜8時ごろ、南の空でよく見える星座です。「夏の大三角」を見つけて、こと座のベガからわし座のアルタイルに向かって空を見下ろしたところが、やぎ座です。
明るい星がなく、暗い星をいびつな逆三角形に結ぶ星座なので、葛飾の空でやぎの姿とご対面するのは難しいのですが、今年(2022年)はちょうどやぎ座のところに0(レイ)等星に輝く「土星」が見えていますので、土星を見つけたらそこに隠れているやぎ座の気配を感じることができるでしょう。

やぎ座は、パーンという神様の姿です。上半身は「やぎ」、下半身は「魚」のたいへんユニークな姿をしています。これには、お話が残っています。

『あるとき、パーンが川のほとりで神様たちとお酒を飲みながら歌ったり踊ったり楽しく宴会をしていると、海のおばけ「テュポーン」がやって来た。それに気が付いた他の神様はそれぞれ動物に変身して急いで逃げた。しかし、パーンは楽しく踊っていて、テュポーンに気が付くのが遅かった。テュポーンが目の前にやってきたとき、やっと気が付いたパーンはやぎに変身して逃げ始めた。すると目の前に川が流れている。パーンは咄嗟に魚に変身し直して川に飛び込んだ。だがその川は、荒川みたいな川ではなく、子どもが立てるくらいのとても浅い川だった。水に浸かった下半身だけが魚になり、水がかからなかった上半身はやぎのままで逃げ切った。その姿が星座になったとさ。』

さて、このお話に登場した、宴会をめちゃくちゃにした海のおばけ「テュポーン」は、台風の語源なのだそうです。台風は外国語でもタイフーンと言います。
台風の時期に、やぎ座が空に見えていて、おはなしにも台風にちなんだ怪獣が登場する... 台風の名前には利害関係がなく、イメージがあまりついていないものが選ばれていますが、その中でも「やぎ」は台風の名前に相応しいといえるのではないでしょうか。

アジアでの台風の名前の命名は、各国の防災意識を高めることを目的としての取り組みです。いつか日本語で意味のわかる単語を台風の名前で耳にしたら、「台風と星座」の話題を思い出していただければと思います。そして、私たちも事前にできる「備え」をして過ごしましょう。

台風一過では、空気も綺麗になって、いつも以上に星が見やすくなります。
台風が去ったあとは、夜空の星座を楽しみましょう。

参考URL(2022年9月30日閲覧)
国土交通省気象庁「台風の番号とアジア名の付け方」

記事・写真:博物館専門調査員(天文担当)

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