彗星は、古代の中国や日本では、大洪水を起こす不吉な星などと言われていました。うすぼんやりとした見た目で空に突然現れ、その出現が予想もつかないとすれば、大昔の人には不気味に感じられたことでしょう。現代では、彗星の正体は氷と砂が混ざり合ったものと考えられており、汚れた雪玉に例えることができます。彗星の核が、太陽や惑星の重力に引き寄せられて地球や太陽の近くを通ると、太陽の熱で暖められて氷が蒸発し、尻尾が発達したり突然明るくなったりして見つかるようになります。
彗星の故郷は大きく二つに分けられます。一つは、エッジワース・カイパーベルトです。海王星の外側、太陽から45億km以上離れた場所に円盤状に広がっており、惑星よりも小さな氷でできた天体が多数発見されている場所です。彗星の故郷のもう一つが、オールトの雲です。エッジワース・カイパーベルトより遠く、太陽と地球の距離の1万倍以上遠い場所に、彗星の核が太陽系全体を取り囲むように広がっていると考えられています。
紫金山―アトラス彗星は、二度と戻ってこない彗星=非周期彗星です。200年以上かけて地球の近くに戻ってくる長周期彗星と同様に、オールトの雲からやってくると考えられています。一方、ハレー彗星は短周期彗星です。短周期彗星は、200年以内に地球付近に戻ってくる彗星で、エッジワース・カイパーベルトからやってきます。
彗星の核は、太陽系の歴史の中で大きな変化を受けておらず、太陽系が生まれた頃の情報を残していると考えられています。そのため、彗星を研究することは、太陽系の起源や、どのように私たちの太陽系や地球ができたかを明らかにする手掛かりとなります。
ちなみに、新しく発見された彗星の名前は、発見者の名前が発見した順番の早い順に三名までつけられます。紫金山―アトラス彗星は、中国の紫金山天文台と、南アフリカのアトラス望遠鏡にちなんでいます。アトラス望遠鏡の正式名称は、「小惑星地球衝突最終警報システム(Asteroid Terrestrial-Impact Last Alert System)」の英語の頭文字を取った呼び名なので、地球に近づいた天体を見つける望遠鏡の面目躍如といったところでしょうか。
次は、どのような彗星が発見されるのでしょうか。とても楽しみですね。