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ギョギョシくんとオオヨシキリ
令和7年7月18日博物館のウェブサイトやYoutube、Xなどにとってもかわいいキャラクターが登場しているのをご存知でしょうか?
ふんわりとした茶色の体に、ピンク色のほっぺ、花菖蒲の色である、紫と黄色のスカーフを巻いた鳥のキャラクターで、この子の名前は「ギョギョシくん」といいます。お誕生日は11月3日、博物館で毎年行われる秋まつりの日です。2023年にデビューしてから、葛飾に夢と笑顔をふりまくため、博物館だよりや公式SNSに登場しています。

そんなギョギョシくんの悩みは、姿を見た人から「スズメですか?」と聞かれてしまうこと。色や姿は似ていますが、葛飾区で身近な鳥がモデルとなっています。
ギョギョシくんのモデルは「オオヨシキリ」という鳥です。スズメよりも一回り大きく、体長は18センチメートルほどあります。

オオヨシキリは4月ごろから日本へやってきて、水辺に生える「ヨシ」といった植物の葉や茎などを使って巣を作り、子育てをします。水の豊かな葛飾区は、昔からオオヨシキリの生息に適しており、博物館が所蔵する、堀切の菖蒲園を描いた浮世絵に描かれている鳥も、オオヨシキリではないかと考えられています。現在でも、荒川放水路や江戸川の河川敷、水元公園などで姿を見ることができます。

背の高い、ヨシなどの原っぱの中でもオオヨシキリを探すポイントがあります。それは、夏の季語にもなっているほど、特徴的な鳴き声を聞き分けることです。オオヨシキリのオスは日本にやってくると、自身の縄張りを主張するため、大きな声で鳴きます。喉の奥が見えるほど、大きく口を開いて響かせるオオヨシキリの鳴き声を、昔の人は「行々子(ぎょうぎょうし)」と聞き取ったそうで、ギョギョシくんの名前もこの鳴き声が由来となっています。実は、ギョギョシくんの口の中もきれいな赤で、よく見ると、喉の奥に小さなハートが見えます。

いつも元気で、口を開けて笑う姿がかわいいギョギョシくんにも、怖いものがあります。童謡にも出てくる鳥、「カッコウ」です。この有名な鳥、カッコウもオオヨシキリの生態と関係しています。
カッコウには「托卵(たくらん)」という習性があります。自ら子育てはせず、異なる種類の鳥の巣にこっそりと卵を産み、その鳥に世話を任せるのです。カッコウは生き残るため、巣の本当の子供であるオオヨシキリの卵やヒナを蹴り落としたりします。しかし、親鳥は自分の子どもではないカッコウがいても気が付かず、そのまま子育てを続けることが多いそうです。ギョギョシくんのチャームポイントである、黄色いおでこの星は、一緒に育てられたカッコウに蹴られた傷跡なんだとか。負けずに生き延びた強さのあかしです。

昨年10月から始まった博物館の改修工事も終了し、オオヨシキリの鳴き声が聞こえる季節となりました。5月5日に開催された「こどもの日・博物館まつり」では展示室内に隠れているギョギョシくんシールを探す「ギョギョシくんをさがせ!」や、「ギョギョシくんグリーティング」を行いました。お客様の前に登場するのはこの日が初めてだったギョギョシくん。数日前からとても緊張していましたが、たくさんの方が会いに来てくださり、とっても喜んでいました!!
7月から再びプラネタリウムは休止していますが、博物館ではさまざまな講座・イベントを行っていきます。夏休み期間にはギョギョシくんに関するイベントを実施しますので、ぜひ遊びに来てください。ギョギョシくんと一緒にお待ちしています。
記事:博物館学芸員(文化財・教育普及担当)
※このブログの内容は"FMかつしか「まなびランド」"で令和7年2月5日に放送した内容を編集したものです。博物館専門調査員(情報担当)