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夏の大三角と星の距離
令和7年8月7日夏の大三角は、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つの星を頂点にした大きな三角形です。3つとも1等星と呼ばれる明るい星のため、街明かりのある夜空でも見つけやすい星の並びです。
8月上旬午後9時ごろ、空を見上げると3つの星が頭の真上あたりに二等辺三角形のような形で並んでいます。3つの星のうち一番明るいのはこと座のベガ、三角形の一番とがった頂点の星はわし座のアルタイル、もうひとつははくちょう座のデネブです。
夏の大三角のなかで、こと座のベガは七夕の織姫星、わし座のアルタイルは彦星という名前でも呼ばれています。七夕のお話では、織姫と彦星は天の川の両岸で暮らしています。夜空で天の川は織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)の間を横切っています。そして、はくちょう座のデネブは天の川のなかにあります。
はくちょう座は、くちばしから尾までほぼ一直線で、翼を左右に広げた形です。白鳥のくちばしの星は、こと座のベガとわし座のアルタイルの間にあります。また、はくちょう座の尾の星デネブからくちばしまでの星の並びと天の川の伸びる向きは、ほぼ同じ方向を指しています。この時期の天の川は、南側から頭の真上の夏の大三角を横切り、北に向かって伸びています。
以前、空が澄んでよく晴れた夏の夜、博物館の屋上で夏の大三角とはくちょう座の尾からくちばしの星の並びを見つけることができました。街明かりで天の川は見えませんでしたが、夜空のなかに天の川を重ね合わせてみました。
夜空に見える星は同じように並んで見えるかもしれませんが、宇宙には奥行きがあり、星の位置はそれぞれ距離が違うことが分かっています。
夏の大三角の星と地球との距離は、こと座のベガはおおよそ25光年、わし座のアルタイルはおおよそ17光年、はくちょう座のデネブは諸説ありますが1400光年から3200光年程度といわれています。
光の速度はおおよそ秒速30万㎞、ものすごく速い速度です。1光年は、光が1年かけて進む距離で約9兆5000億kmと非常に遠い距離です。
夏の大三角で、例えばベガなら、25年間宇宙を移動して地球に届いた星の光を見ています。つまり、私たちは25年前のベガの姿を見ていることになります。
星を見るとき、遠ければ遠いほど、その星の昔の姿を見ていることになります。
これは宇宙の中で遠くにある天体ほど、長い時間をかけて光が届き遠い過去の姿が見えるため、それは古い宇宙を見ることにもつながります。
この夏は、晴れた夜空で夏の大三角を探してみてください。
同じように明るく見える星でも、それぞれ違う距離にあります。
星空をながめるだけでなく、さらに宇宙の奥行きを感じていただきたいと思います。
記事:博物館専門調査員(天文担当)/写真:県立ぐんま天文台が提供する画像を加工
※このブログの内容は"FMかつしか「まなびランド」"で令和7年8月6日に放送した内容を編集したものです。博物館専門調査員(情報担当)