郷土と天文の博物館ブログ

3月下旬の星空、主役は『かに座』(2026年3月)

令和8年3月27日

最近はすっかり春めいてきましたね。夜のジョギングや犬のお散歩も、寒さがあまり気にならなくなってきた頃でしょうか? 夜のひととき、ちょっと空を見上げてみませんか。

時間は夜8時から9時ごろ、必ず正面は南を向いてください。見る方角が違うと、これからご紹介する星を見つけるのは至難の業になります。できれば、昼間のうちに、星を見る場所の下見をして方角を確かめておくといいでしょう。

南の空を正面に、見上げると、右手側の空高くに、ひときわ明るく、やや黄色っぽい色をした星が見つかります。それが「木星」です。太陽系の惑星のひとつですね。木星からさらに左側をながめると、なかよく並んだ2つの星をみつけることができます。それが「ふたご座」の「カストル」と「ポルックス」です。木星はいま、ふたご座の方向に位置していますので、かつしかの空でもお天気さえよければ、ふたごの兄弟星を比較的簡単にみつけることができます。2つの星を見比べてより明るいほうが弟の1等星「ポルックス」。やや控えめに輝くのがお兄さんで2等星の「カストル」です。

今度は南を正面に左手側を見上げてみましょう。木星やカストル・ポルックスより、もっと左手方向、東側です。すると、白っぽい色をした星がひとつ見つかります。それが「しし座」の1等星「レグルス」です。

南を正面に空高く、右手側にふたごの兄弟カストルとポルックス、左手側にしし座のレグルスがみつかったら、兄弟の星とレグルスを、線で結んでみましょう。その真ん中あたりには、かつしかの空では何もないようにみえますが、そこに「かに座」があります。

ちょうど、3月の下旬ごろの午後8時から9時ごろには、「かに座」が頭の真上近くにあり、見ごろなのですが、「かに座」には明るい1等星がないので、なかなかその存在に気付いてもらえません。姿は見えずとも、毎年この時期に空高く昇って、私たちのことを見下ろしています。

写真:2026年3月中旬21時頃 東京の星空 国立天文台

「かに座」はふたご座やしし座と同じように、太陽の通り道上にある「黄道12星座」、いわゆるお誕生日の星座のひとつで、古くからある星座です。「かに座」には明るい星はありませんが、空が暗いところでかに座の方向を眺めると、ぼんやりとした、雲のような光の集まりをみることができます。「プレセぺ星団」と呼ばれる星の集まりです。

写真:プレセぺ星団(メシエ天体 M44) 国立天文台

「プレセぺ」とは、ラテン語で「飼い葉桶」という意味です。「かいばおけ」とは、馬のエサや干し草などを入れる桶のことです。プレセぺ星団のすぐ近くにある「かに座」の星2つを2匹のロバに見立てて、ロバたちが葉っぱを食べているようすをイメージしてつけた名前なのだそうです。

「プレセぺ」が星の集まりであることを最初に発見したのは、かのイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイでした。ガリレオが、自分で作った望遠鏡で月や土星の観測を初めて行ったのは大変有名ですが、ガリレオは、プレセぺも望遠鏡で見て、最初に星の集まりだと発見していたのですね。

ガリレオが観測する前までは、プレセぺは、「雲」や「小さな霧」とも呼ばれ、何か雲のような天体だと思われていました。確かに、星団とわかっている今でも、肉眼で眺めたときに、ぼんやりと白っぽい小さな綿雲のように見えます。望遠鏡で見てみると、黒い紙の上にお砂糖や塩をばらまいたように、星がまばらに集まっているようすがわかります。「散開星団」という種類の星団で、若い星たちの集まりです。

プレセぺ星団は、英語圏では「ビーハイブ(ミツバチの巣)」、中国では「積尸気(ししき)」と言ってご遺体から出る燐光にたとえられています。プレセぺ星団は、かに座の甲羅の真ん中にありますので、「カニの泡ぶく」や「カニみそ」のようにも見えます。さらに、今の時期は「春のお彼岸」でもありますので、天国の入口に見立てても良いかもしれません。実際に、ギリシャの哲学者、プラトンの思想を継いだ紀元前の哲学者たちは、人間の魂が、天上から降りてきたり上ったりする、出入口に見立てていたそうです。ぜひ夜空を見上げて思いを巡らしてみませんか。かつしかでプレセぺ星団を見てみたい方は、プラネタリウムで、ばっちり観られますので、見学にいらしてください。

記事:博物館専門調査員(天文担当)/写真:国立天文台ウェブサイトより

※このブログの内容は"FMかつしか「まなびランド」"で令和8年3月18日に放送した内容を編集したものです。博物館専門調査員(情報担当)

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