プラネタリウム

第101回 南極昭和基地の空とオーロラ 南極の空を彩るオーロラと様々な大気現象

南極昭和基地は、創設以来60年間、世界で最も清浄な大気といわれる環境のなかで、オーロラ観測をはじめ様々な観測を続けています。昭和基地では、オーロラはもちろん「転がる太陽」、「地球影」、「極成層圏雲」など様々な大気現象や気象現象を見ることができます。普段越冬隊員しか目にすることができないような美しい昭和基地の自然現象をご覧いただきました。

概要

日時

平成31年2月2日(土曜日)午後7時~午後8時30分

講師

岡田 雅樹(おかだ まさき)氏
国立極地研究所 研究教育系 宙空圏研究グループ 准教授
第58次南極地域観測隊 越冬隊長

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  1. 南極観測隊越冬隊の1年
  2. 昭和基地の自然と観測
  3. オーロラが輝く夜
  4. 質疑応答

聴講者のみなさまへのメッセージ

ご来館ありがとうございました。多くの質問ありがとうございます。 私自身も、本格的なプラネタリウムにオーロラを投影してみるのは初めてでしたので、全天のオーロラを見るのは、南極昭和基地以来でした。皆さんにもご覧いただくことができたことが大変うれしく思いました。
またお目にかかりましょう。

聴講者からの質問と講師回答

(1)オーロラが出現しているときには、撮影することの他にどのような観測、測定を行っているのでしょうか? (2)極地で使用するカメラにはどのような寒さ対策が必要ですか? (Nさん・男性・60歳)

(1)オーロラの観測と同時に行う必要がある観測としては、オーロラの発生時に磁気嵐を伴うことが多いので、磁場の観測をおこなったり、上空を通過する衛星で観測されるデータを地上に降ろす(ダウンリンクという)作業をしたりします。最近は、自動化が進んでいるので、隊員は時間があれば外に出て肉眼でオーロラを見たりしていることもよくあります。
(2)カメラの寒さ対策としては、やはりバッテリーに注意したほうが良いと思います。氷点下20℃でも動作するタイプのバッテリーを選ぶことと、できれば予備を持つこと。そして予備は"ふところ"で温めておくことが大切だと思います。寒い屋外から、室内に入るとカメラに霜が付くので、ビニール袋に入れるなど霜対策もお忘れなく。

南極観測隊に入るにはどのようにすればよいのでしょう。資格などがあるのでしょうか?(いつか行きたいと思っていたので...!!)ぜひおしえてください。 (Aさん・女性・54歳)

まず、どの部門で観測隊に入るか、どういう役割が果たせるかを考えるのがよいと思います。得意な分野で、調理師免許などの資格を取ることも重要ですし、その分野で実績を積むことも役に立つと思います。頑張ってください。

磁場が強いとのことですが、電子機器に影響はないのですか?(?さん・?・?歳)

磁場が強いといっても、人体や機械に影響するほどのものではありません。観測するのも結構難しいくらい、微弱なものです。微弱なものを毎月決まって精度よく図ることは結構大変です。

(1)どのような食事をされていましたか? (2)オーストラリアから昭和基地まで何日ほどですか? (3)冬期はほとんど毎日オーロラが見れますか? (4)不思議な体験、何かありました? とても楽しかったです。ありがとうございました。(?さん・女性・?歳)

(1)プロの調理隊員が工夫して、日本にいるときとほとんど同じ食事をなんでも出してくれています。
(2)オーストラリアから昭和基地までは、南極観測船"しらせ"でおよそ3週間かけて行きます。帰りは、海洋観測をしながら帰るので、7週間くらいかかります。
(3)よく出る年と出ない年がありますが、少ない年でも週に2,3日は見ることができます。よく出る年は、ブリザードの日を除いて、毎日のように見えると思います。
(4)南極では、蜃気楼がよく発生します。結構大規模に発生するので、自分の目か頭がおかしくなったのではないかと思うくらい広い範囲で見ることができます。不思議な体験と感じました。

南極の全天オーロラ感動でした。オーロラには熱量はあるのですか?(Bさん・男性・51歳)

電子の運動エネルギーが、光に代わり、最終的には熱に代わると考えられています。具体的な熱量はわかりませんが、高度100キロメートル近くの大気をいくらか温める効果があると考えられています。地球の気候に影響があるほどかどうかは、まだ未解明で観測を進めているところと思います。

O2の励起でオーロラの色が出ると聞きましたが他の元素の色は出ないのですか? (Gさん・男性・5歳)

酸素以外に窒素の基線も発光します。低高度の紫色の発光は、窒素が多いと思います。

(1)ブリザードの日でも風船は飛ばすのですか? (2)オーロラシーズンは昼夜逆転の生活になりますか? (3)日射不足でビタミンD不足になったりしますか? (Oさん・女性・?歳)

(1)ブリザードの日でも高層気象観測は行っています。が気象観測の決まりがあり、風速が30メートル毎秒を超えた場合や、外出禁止令が出た場合は、危険なので観測も中止となります。
(2)オーロラを観測する隊員は、1週間交代で夜勤になりますので、昼夜逆転の生活が2,3週間に1回回ってくることになります。半年ずっとではありません。
(3)かつては、ビタミンの不足など心配されましたが、最近は食事が良いことと、ビタミン剤もありますので、不足になることはまずありません。

(1)精神的にまいってしまう隊員はいますか? (2)立川の極地研のみどころは? (3)7月16日のホイッスルはどんな音でしたか?きけるサイトはありますか? ノルウェーにオーロラを見に、ニュージーランドに南十字星を見に旅行に行きました…葛飾で両方を解説つきで見られて良かったです!! (Hさん・女性・40歳)

(1)疲れや、生活リズムの乱れから精神的にも参ってしまう隊員も時々います。そのため、誕生日会や、運動会、遠足などレクリエーションも結構大切にしています。
(2)やはり、「南極・北極科学館」でしょう。火曜日から土曜日の午前10時から午後5時まで開館しています。夏休み期間中などは、昭和基地とのライブトークなどイベント等もありますので、ホームページでスケジュールを確認してお越しください。
(3)現在は、サイトでは出ていないと思います。聞いていただけるように準備しておきます。

(1)オーロラの出ている間、機器やインターネット等に影響はないのでしょうか? (2)基地の下の方が細くなっているのに理由はあるのですか? (Mさん・女性・45歳)

(1)オーロラは、高度100キロメートルくらいで光っており、地上にはほとんど影響はありません。磁場は結構変化するのですが、機器やネットに影響するほどではありません。
(2)基地の建物は、下を風が吹き抜ける構造になっています。「高床式」と言っています。これは、ブリザードの際に風が吹き抜けることで、雪が溜まらないようにするため、このような構造になっています。

(1)思ったよりも女性が多く驚きました。男女の定数などあるのでしょうか?どういったことをされているのか気になります。 (2)オーロラの影響(?)を体で感じることはありますか? (Tさん・女性・33歳)

(1)特に男女の数は決まっていません。58次隊は偶然、女性隊員が比較的多かったですが、例年は、3,4名前後です。最近は、活発な女性も多く、隊員希望者も増える傾向にあるようです。
(2)オーロラは、高度100キロメートルより上空で光っていますので、直接体に感じることはまずありません。しかし、天気の良い日にしか見られないので、概して放射冷却で寒いが多く、寒く感じる夜は「今日は見れそうかな。」と感じるようになります。

どのような物を食べていましたか? とても楽しかったです!(?さん・女性・?歳)

観測隊の食事は、調理隊員が腕を振るってくれていますので、ほとんど日本にいる時と同じ食事を摂ることができます。
カレーや、ハンバーグ、ラーメンなどから、イタリアン、フレンチ、中華、和食なんでもありますよ。

(1)今は犬ぞりはないのですか? (2)南極では風邪(その他病気も)を引かないというのは本当ですか? (?さん・女性・34歳)

(1)かつては犬を連れて行っていましたが、現在は、南極条約により南極の生態系保護のため、犬を含め動物は連れていけません。
(2)風邪をひかないというわけではないのですが、一旦風邪をひいて免疫ができると、人の往来がないので、2度とひかなくなります。しかし、次の隊が到着すると、一斉に風邪にかかることもあります。

北極圏でのオーロラ観測では、1年間続けてオーロラ観測ができる地域があるときいています。昭和基地はオーロラ観測は4~10月とのことですが、やはり北極圏と同様に1年間続けて観測ができる地域があるのでしょうか? (?さん・?・?歳)

北極点や南極点でも、半年間は、昼となりますので、オーロラ観測ができるのは原則として、夜だけですから、半年間しか観測はできません。しかし、最近は、オーロラの観測でも電波を使ったり、非常に高感度で昼間でも特別な波長の光だけを抜き出すような観測方法をとることで明るい昼間でも観測をする方法があるようです。
人工衛星による観測から、昼間側(太陽側)でもオーロラが発生していることが知られており、これを観測しようとする研究者は、新しい方法で24時間昼間も観測する方法を探っているようです。

オーロラの中に入ったらどんな様子に見えるのでしょうか? すばらしいオーロラの映像をありがとうございました。オーロラホイッスラーとても神秘的でした。 (Kさん・女性・?歳)

オーロラの中に入った観測というものもほとんどなく、もちろん入った"人"もいないので想像ですが、おそらく、周りの空気(大気)が光っているようにみえるのだと思います。地上からの観測からカーテンオーロラの厚さはおよそ1キロメートル程度と見られていますので、そんな感じではないかと思います。

本日はありがとうございました。私のような一般人が南極に行く事は可能でしょうか? (Eさん・男性・47歳)

最近は、観光で南極に行く方もいるようです。世界では、年間4万人くらい観光客が南極に行っているとの報告もあるようです。日本でも、観光ツアーが募集されているようです。

南極の各基地のTimeZoneはどこでどのように決められているのですか?(Nさん・男性・41歳)

昭和基地の現地時間は、基地の場所(東経約40度)で決まっており、UTC+3となります。

南極では月は見えるのでしょうか?(?さん・女性・?歳)

もちろん月は見えます。ただ、ウサギの向きが反対に見えます。なぜそうなるかは考えてみてください。

オーロラホイッスラーの音とオーロラのカーテンにはどうゆう関連がありますか?オーロラホイッスラーは地球全体の音になりますか? (Aさん・女性・?歳)

ちょっと難しいですが、オーロラを光らせる高エネルギー電子は、赤道上空数万キロメートルの場所で作られているということがわかってきています。その近くで、ホイッスラーの電波が発生していると見られています。そこでできた高エネルギー電子が、北極と南極に降り注いでオーロラを光らせていると考えられていますが、ホイッスラーは電波なのでオーロラが見えなくてもかなり広い範囲の地上で観測できることが知られています。

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