プラネタリウム

第30回 太陽系の最新の姿  冥王星はどうなったのか?

惑星の定義がニュース報道でも大きな話題となりました。 天文学者は、これまで太陽系の第9惑星と呼ばれ続けてきた冥王星を、惑星の一員からはずすことを決定しました。 しかし、それは冥王星を降格したというのではなく、むしろ新しい太陽系の種族として積極的に位置づけたことを意味しています。 冥王星は新しい種族の代表として、ますます天文学的に大きな意味を持つことになったのです。
天文学者は、どうして惑星の定義をする必要に迫られたのでしょうか。冥王星が所属する新しい種族とはいったい何でしょうか。 それらは天文学的にどんな意味があるのでしょうか。観測技術がすすんだ現在、それによって太陽系の果ては、いったいどこまで広がってきたのでしょう。 国際天文学連合の惑星の定義委員会委員として、今回の定義案作成にかかわった経験を交えながら、最新の太陽系の描像を紹介していただきました。

概要

日時

平成18年12月9日(土曜日)午後5時~7時

講師

渡部 潤一氏(国立天文台 天文情報センター長 助教授)

略歴

1987年、東京大学大学院、東京大学東京天文台を経て、 現在、自然科学研究機構国立天文台天文情報センター長、広報室長、総合研究大学院大学物理科学研究科助教授。理学博士。 流星、彗星など太陽系天体の研究の傍ら、最新の天文学の成果を講演、執筆などを通して易しく伝えるなど、幅広く活躍している。 1991年にはハワイ大学客員研究員として滞在、すばる望遠鏡建設推進の一翼を担った。 主な著書に「太陽系の果てを探る」(東大出版)、「星の地図舘」(小学館、共著)、 「しし座流星雨がやってくる」(誠文堂新光社)、「新・天体カタログ」(立風書房)、 子供向けに「ガリレオが見た宇宙」(岩波ジュニア新書、共著)など。読売新聞書評委員。

質問と回答

今回、惑星の定義が決まりましたが、衛星、彗星についての定義は論議されたのでしょうか。

衛星の定義は次回(2009年)に議論される可能性が高いです。太陽系小天体に含まれる彗星や小惑星は、言葉自体は使って良いことになっています。衛星、彗星いずれも、時間がなくて今回は議論はされませんでした。

カロンが冥王星と二重惑星と解釈されて、一時期惑星候補となった経緯を考えると、カロンも冥王星と共にわい惑星という原案を再度論議する可能性はありますでしょうか?

しばらくは無いと思います。2つの星が回っていた時にその中心(共通重心)が重い方の星の内側にあるか外側にあるかで衛星の定義をしようという案もありましたが、大きな反対を受けました。

dwarf planetの日本語用語はどのようにして決められるのでしょうか。

日本学術会議(20人)において月に1回会議が行われており、平成19年3月末までには決定したいと思っています。大きな候補は矮惑星と準惑星。天文学者は矮という言葉に慣れていますが、言葉のイメージが良くないことと「わ」が2回続くので言いにくいというような理由で、準のほうが良いという意見もあります。 (追記)平成19年4月、日本学術会議はdwarf planetの和訳を「準惑星」としました。ただし、同時にこの用語の使用は推奨せず、またdwarf planetの定義そのものを見直すべきであるとも提言しています。

dwarf planetの中から遠い将来、本当の惑星(第9惑星など)が生まれる可能性があるのでしょうか。

100%無いとは言い切れません。例えば太陽系の果てに地球くらいの星がある、という可能性もあります。ただ、遠いところでは星が大きくなりにくいので、可能性は低いと考えています。

エッジワース・カイパーベルト天体の軌道面は8つの惑星と比べてずれているのでしょうか?

傾いている天体がとても多いです。

カイパーベルト又は小惑星帯の内部で小天体が合体して今後大きく成長する可能性はありますか。

今から合体・衝突する可能性はほとんどありません。理由は、ガスが充満していないからです。ガスがあると抵抗を受けてゆっくり衝突するため合体することがありますが、ガスがないと激しく衝突して破壊されてしまいます。

カイパーベルトの周りを回るわい惑星の公転周期が非常に長いですが、本当にだ円軌道を維持して回りつづけられるのですか。

何もなければ(他の星の重力の影響を受けなければ)回り続けることができます。軌道面は変化していくことがあります。

惑星の軌道はほぼ同じ平面上にあり、かつ真円に近いようです。彗星などの軌道は惑星の軌道に対して傾いていて、長だ円です。こんなことは定義にはならないのですか。

彗星には長だ円のものばかりではなく円軌道に近いものもあるため、軌道は定義には入れませんでした。

惑星が球形になるか、自由形になるかの境界は半径何kmですか。

岩だと約800キロメートル以上、氷だともう少し大きめになる、と言われています。

宇宙の中では、現在、星がだいたい何こくらいあると言えますか。 また、めい王星の表面温度は約何度と言えて、一番表面温度が高い惑星は何で、約何度ですか。 彗星でもどってくる星ともどってこない星のちがいはなんですか。

銀河系で1000億から2000億、銀河の数が数千億と言われていますので、それを掛け算した数になります。 冥王星の表面温度は非常に低く、約-220度です。最も表面温度が高い惑星は水星の太陽を向いている側で、400度以上あります。 彗星が戻ってこれるかどうかは、軌道の形によります。楕円軌道なら帰ってきますし、放物線軌道になると戻って来られなくなります。

月のシミュレーションは、いつごろで何年間ぐらいかかって月ができたのでしょうか?

45億年くらい前で、衝突から月ができるまでに1ヶ月と言われています。しかし、私(渡部先生)は信じていません。ただ、かなり短い時間であっという間に出来たということは確かだと思います。

小惑星も自転するのでしょうか。

ほとんどの天体が自転していますので、小惑星も自転しています。回らない状態の方が不自然で、回っている状態の方が自然なのです。

何百億光年も離れた所から光が地球に到達するという事がわかりません。天空の曲がり、その他光の減衰(?)があって、光が弱くなり消滅するのではないかと思われますが、何故ですか。

128億光年までは光を捉えていますが、それより遠い光は捉えることができていません。残りの9億光年分は、まだ何の情報も手に入れることができていません。

星が見つかるとアルファベットや数字の名前がつきますが、何かの頭文字でしょうか?

これは命名される前の仮符号と言います。例えば2003UB313は、2003年、Uは10月下旬、B313は24×313+2という意味になり、2003年の11月下旬の中で7514番目に見つかった天体ということになります。 太陽系の天体の場合は、発見した人に命名提案権が与えられます。2003UB313は発見者によりエリスという名前が提案され、国際天文学連合により承認されました。エリスとは、トロヤ戦争の時に混乱をもたらした女神の名前です。

アポロ計画で人類は本当に月に行けたのでしょうか?

月に行った時に反射板を置いてきており、その反射した光を捉えることができていますので、間違いなく月に行っています。

参加者アンケートより
  • 質疑応答の時間がたっぷりあり、とても勉強になりました。 月ができるまでのシミュレーション映像が印象的でした。ますます天文に興味がわきました。
  • とても分かりやすい話でした。質問の時間もたっぷりあったので、 いろいろな事を聞くことが出来てたいへん楽しかったです。
  • 話術が巧みで、笑いもあり、面白かった。
  • とても関心のあったお話をポイントを詳しく、笑いも交えて聞かせていただいて、たいへん楽しかったです。
  • 渡部先生がこんなに楽しい人だとは知りませんでした。また、渡部先生の話を聴きたい。
  • とてもわかり易くユーモアも交えた話でたいへん良かったです。
  • とてもわかり易くて良かったです。惑星のことに興味を持ちました。Dwarfが日本語で何になるか注目です。

ページ先頭へ戻る