プラネタリウム

第31回 人間と宇宙 無重力下で起こる体の変化

地球上のすべての生物は、重力があることを前提に進化し、身体が作られてきました。
人間の身体が無重力にさらされるとどうなるのか?
本当に宇宙に行くことは安全なのか?
そのようなことを医学的な側面から考えていくのが宇宙医学です。 これまでの宇宙医学研究の成果や課題について解説していただきました。

概要

日時

平成19年2月3日(土曜日)午後5時~7時

講師

上野 俊昭 氏(帝京大学医学部脳神経外科 講師)

  • 平成元年3月 東京大学医学部医学科卒業
  • 平成元年6月 東京大学医学部附属病院脳神経外科研修医
  • 平成2年1月 東京警察病院脳神経外科
  • 平成8年2月 米航空宇宙局(NASA)エームス研究所:Senior Research Associate
  • 平成10年7月 宇宙開発事業団(NASDA):国際宇宙ステーションプロジェクトサイエンティスト
  • 平成11年10月 東京警察病院脳神経外科
  • 平成14年5月 カリフォルニア大学サンディエゴ校:Assistant Professor
  • 平成16年9月 帝京大学医学部脳神経外科:講師
  • 日本脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、医学博士

質問と回答

無重力でお酒を飲むとどうなりますか?

脱水になっているので、おそらくお酒が回るのが早いのではないかと思います。 ちなみに、飛行機の場合は乾燥と気圧の関係で周りが早くなります。

地球の磁場から離れることによる人体への影響はあるのでしょうか?

磁場の影響はあまり言われていません。

ミールでの放射線の影響はどうだったのでしょうか?

白血球の量が減るというデータはあったようです。発ガンしたというようなことはまだ聞いていません。

飛行機に8時間乗るとどれ位の宇宙放射線を浴びることになりますか?

東京-ニューヨーク往復で0.19mSv(ミリシーベルト)です。1回で危険なほどではありません。 東京-ニューヨーク往復で0.19mSv(ミリシーベルト)です。1回で危険なほどではありません。 職業的に乗っている人でなければ問題は無いはずです。

宇宙は怖いところなのでしょうか?

適応はできるでしょうが、生命は重力を前提にしているので戻ってきた時に危険があります。

無重力での身体の変化の現象から、地上での日常生活に応用できることはありますか?

骨がもろくなったり、筋肉が衰えるというのは、ある意味で老化に近い現象なので、 宇宙で健康になるための対策がそのまま高齢者にとっての対策となりえます。

将来宇宙観光を夢見ているのですが、高齢者でも宇宙にいけるようになりますか?

健康な方であれば短期間なら行けるのではないでしょうか。 健康な方であれば短期間なら行けるのではないでしょうか。健康な方であれば短期間なら行けるのではないでしょうか。

新大阪駅の待合室に向井さんの実験のメダカがいるそうですが、 メダカが自分で重力を作り出したという実験結果があるそうですが。

パラボリックフライトでの実験で回転が始まったことがありますね。 確かに回転するのですが、それが重力を作り出したと言えるかはわかりません。

宇宙旅行にお金を払って行った人がいますが、訓練はどうしているのでしょうか?

行って戻ってくるだけならそれほど特殊な訓練は必要ないはずです。

宇宙に出たことがない生物ですが、初めて人間が宇宙に飛び出して進化論的にはどうなるのでしょうか?

身体は適応できるようになっているようですが、 昔から言われているような頭でっかちな感じになってしまうかもしれません。 重力が無い状態で、子孫繁栄していけるのかという問題も出てきます。 細胞分裂にも重力が必要だと考えられているので、無重力でどうなるのかはわかっていません。

以前テレビで虫歯があると宇宙飛行士になれないので抜歯するという話を聞きましたがなぜですか?

宇宙飛行士は圧力の変化に耐えなければいけないのですが、虫歯があると痛みがでるからです。

宇宙飛行士は長い間に身体の成分が変わり、様々な栄養素が不足して、 無重力の影響が出ますが、ロケットの中で薬の投与は、地球に着陸する前だけでなくいろいろな時に与えられたりするのですか?

宇宙酔いの薬や骨粗鬆症の薬なども使われています。

無重力のときに得られたデータから推定して、月や火星のような重力の小さい星で生活するとどうなるのでしょうか?

たとえば月は重力が6分の1です。どのくらいの重力があればその影響が出なくなるのか、重力の中間のデータがないのでまだわかっていません。

宇宙に行って身体に良いことはありますか?

重力の負担によって腰痛などがある場合は良くなりますが、地上に帰ってこないのであれば、という条件付きです。 帰ってきてもなお良い状態になっているというのは思いつきません。 一時的に、リハビリの為に重力の少ないところに行く、というのはあるかもしれませんが、 他の(悪)影響があるので、トータルとしてはなんともいえません。

無重力で長期間過ごして地球に帰還した時に起きる地球酔いの特徴は自動車酔いとは違うのですか?

酔いというより、むしろ立ちくらみやふらつきの方の影響が言われています。

宇宙線に対する防御は?

厚くすると重くなって打ち上げの問題があるので、安全性の面での保証はありません。

太陽の活動が11年の周期で活発になるが、スペースシャトルの場合には向きを変えて宇宙飛行士を守るが、 宇宙ステーションの場合は?

太陽フレアの影響を受けます。

実験の中で男女差はありますか?

あります。起立性低血圧は男性の方が弱いです。運動選手のほうが弱いというデータもあります。

宇宙酔いになる人、ならない人がいるのはなぜですか?共通したものがあるのでしょうか。

原因がわかっていないので予測できていません。 ちなみに宇宙酔いは、最初の頃は宇宙飛行士自身が報告していなかったが、徐々にわかってきました。

2003年に中国初の有人飛行があったが、中国でも同様の研究が進められていますか?

日本ではアメリカ・ヨーロッパの情報は手に入りやすいが、中国やロシアのデータは手に入りにくいです。 ただ、研究はされていると思います。 日本の方針としては、日本で有人飛行をする計画はありません。

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