プラネタリウム
第62回 オーロラのメッセージを感じて 人類の明かりの届かない極北の大地で
人を寄せ付けない厳しい世界、野生動物が太古から命をつなぐ極北の大地は、当たり前のように夜な夜なオーロラが舞う。同じものは2つとない「一期一会」のダイナミックなオーロラダンスを独自の手法で動画編集し、美しい発色でよりリアルな動きを再現、「ラスト・フロンティア」アラスカの夜空を疑似体験していただきました。
概要
日時
平成23年12月3日(土曜日)
講師
中垣 哲也 氏(オーロラ写真家)
講演プログラム(当日配布したレジュメより)
- 自己紹介
- 極北の自然とオーロラについて
- 質問コーナー
- 新作のオーロラ映像
聴講者からの質問と講師回答
- オーロラ爆発は何回見ましたか。その時の印象的なエピソードがあれば教えて下さい。(Aさん 女性・36歳)
およそ500日の極北滞在で、完璧なオーロラ爆発は10回程度、準爆発は数え切れないくらいあります。 完璧なBreak-up(オーロラ爆発)の時は全身全霊を貫かれます。その後は決まって、しばらく放心状態となります(笑)
- オーロラを撮影するときに、カメラの操作等で一番注意を要することは何でしょうか?(Nさん 男性・52歳)
暗闇でしかもオーロラが活発になると気持ちが焦ります。一眼レフではレンズ交換をよく行いますが、フォーカスを無限大に合わせてテープなどで固定しておかないとピンぼけになってしまうことがあります。夜空ではオートフォーカスは効きませんので、手動で正確に合わせる必要があります。
- カメラ等の防寒はどうされてますか? 動かなくなったりしたことありますか?(Tさん 男性・47歳)
出来るだけ冷やさないように心がけます。その方がトラブルは少なくなるようですし、バッテリーも温存できます。私はフリース素材の布に1箇所レンズがはまる穴を開け、撮影するときはレンズをその穴に通しカメラを風に当てないようにしますが、感覚は人間と同じように寒くならないように考えて工夫しています。 昔のフィルムカメラで、長い時間外に放置すると機械的にどこか凍り付いて動作しなくなる事、またフィルムが凍って切れてしまったりしました。最近は極寒でもよく動いてくれます。
- 北半球と南半球とではオーロラの見え方は何か違いはありますか?(Kさん 女性・40代)
私は同時に見たことがないのでわかりませんが、北極と南極側で、同じ時間に、同じ規模、同じように出ていると聞いています。
- プラズマは人体に悪影響はないのですか?(Nさん 女性・?歳)
太陽から吹き付けるプラズマは、直接地上に飛んできて人間を直撃することはないのだろうと思います。もし人体を直撃するなら、細胞の遺伝子を傷つけ、健康被害をひきおこすものと思います。そのような環境になった場合は、地球磁場が失われてしまったともいえ、たぶん人類は滅びてしまうのだと思います。
- 今まで見た中で一番良かったオーロラは?(Kさん 男性・30歳) 中垣さんの見たオーロラで1番のものはどこのですか?それはどんなものですか?(Tさん 女性・?歳)
《質問を2つまとめて回答しています。》
2004年9月、極北の広範囲に森林火災が広がり、どこへ行っても煙っていて、空を見ることが出来ず途方に暮れていました。 カナダのビジターセンターでアラスカ・カナダ極北の衛星写真を見たら、ほとんどの場所が煙っていて絶望的でしたが、一部火災から逃れ、きれいに空が空いている場所がありました。そこはアラスカ北極圏の、ブルックス山脈を北へ抜けたツンドラ地帯でした。残り3日の滞在しかありませんでしたが、1日1,000キロメートル以上も走り、やっとたどり着いた北米最北にそびえるブルックス山脈。そこを越えたときに、全天でオーロラ爆発が起きて、全身全霊を貫かれました。このときのオーロラは死ぬまで脳裏に焼き付いていると思います。
- 遭難しそうになったことはありますか?(Kさん 男性・30歳)
遭難しそうになったことは、何度か車の調子が悪くなったり、凍った湖の上で撮影していたときに氷が割れたり、くまさんを怒らせてしまったり、いろいろとありますが、今のところ何とかなっています(笑)
- なぜ日本人はオーロラが好きなのだと思われますか?私は3回見に行っています。(Oさん 女性・56歳)
美意識は、おそらく諸外国の人たちよりあると思うのですが、直接的には先入観だと思っています。テレビ番組では「オーロラはなかなか逢えず、奇跡に近い」と大げさにやっていますね。見たこともない人がそれを見て空想し、また大げさに伝えることを繰り返している連鎖が「オーロラは奇跡的・きれい」という先入観を国民に与えてしまっています。ドラマティックにきれいなオーロラには簡単に逢えません。
- ニュージーランドでもオーロラが見れるということでしたが、何月頃でどこの都市が良いのでしょうか(Sさん 女性・?歳)
ニュージーランドで見られる場合は低緯度オーロラと言って、南極方面の遠くの空で活発なオーロラが出たときに、「その上の赤い部分のみ」が地平線に見える現象です。太陽活動が激しく、地球に磁気嵐が起きているようなタイミングで見られます。ですので、地球の季節は基本的に関係ないのですが、ニュージーランド南島で夜がしっかり暗くなる秋~冬(3~8月頃)がより観測しやすいと思います。その時は日本では見られない天の川銀河が一晩中見られますので、満天の星空を見られるだけでも十分に価値があるように思います。場所は南ほど良いと思いますが、テカポ湖やマウントクック周辺、クインズタウンあたりで撮影した事があります。私は2001年で見事な低緯度オーロラを体験しましたが、再び行きたいなと気持ちが騒いでいます。
- 将来はどの地域で何時くらいにオーロラが見られるだろうというようなオーロラ予報が出せるようになるのでしょうか?(Iさん 女性・?歳)
太陽風のエネルギーやその地場の状態や、地球磁場の変動などとも絡んで、かなり予報は難しそうですね。科学が進歩すれば、もしかすると当たる確率が高い予報を出せるのかもしれませんね。でも私は自然の出来事は自然に任せて自然な気持ちでオーロラを待ちたいです。
- 星が湖に写っていた映像がありましたが湖は氷らないのですか?最後に8月のオーロラがありましたが8月は白夜(夏)ではないのですか?(Eさん 女性・42歳)
8月からオーロラが見やすくなりますが、秋ですとそれほど気温は下がりませんので、凍らない水面に宇宙の光が反射して、宇宙と大地が一体化する世界を体験することが可能です。撮影の好きな方は冬より秋の方がドラマチックに撮れるかもしれませんが、天候は不安定です。
- 動画は微速度撮影でしょうか?(Mさん 男性・66歳)
結果的に動画を制作していますが、元の絵は写真です。連写した写真をもとに動く映像をつくっています。
- 1回の旅行で撮影する枚数はどの位ですか?(Sさん 女性・?歳)
私の場合はカメラを3~4台で一網打尽作戦をしていますから膨大です。平均すると、一晩で3,000カット程度、滞在が1~2ヶ月ですから、場合によっては10万カットくらい撮れてしまいます。
- 1眼レフカメラ(フィルム)ならどのような感度のフィルムを持っていくべきか?(Mさん 男性・63歳)
出来るだけ高い感度が有利ですが、増感現像出来るタイプがベストです。いまはすっかりデジタルの進歩に水を空けられてしまいました。
- 一度はみたいと思うオーロラですが場所はアラスカが一番いいのでしょうか?ツアーパンフをみると20万~30万しますがどの程度かけるべきでしょう(Mさん 女性・?歳) サバイバルツアーにとても興味を持ちました。いくつか参加したいと思いましたがどちらで詳しい情報が見れるのでしょうか。 (?さん ?・30代)
《質問を2つまとめて回答しています。》 私は撮影に有利な場所を追求してきましたが、私の結果としましてはアラスカやカナダの極北(北米大陸の北西部)の2~4月がベストだと思っています。世の中にはたくさんのオーロラツアーが存在しています。ただオーロラを見る実績を残すだけなら一般のオーロラツアーで十分だと思います。(一度はオーロラを見てみたい人で、一度見たら十分という方)また、例えば「星野道夫の世界」に憧れているような究極の自然を追究されるなら、多くの人たちとバスに乗って行動を共にする大手ツアーはお勧めしません。当方でもサバイバルツアーを企画していますが、それは一日中自然の流れに身を任す、運が良ければオーロラに逢える、というスタンスです。
http://www.aurora-dance.com(外部サイトが別ウィンドウで開きます)
- 南半球でオリオンが逆さに見えた様に思います。私の錯覚でしょうか。もし真実なら何故でしょうか?(Yさん 女性・80歳)
南半球ではオリオン座が逆さまになって見え、それを現地で見ると、「ああ、日本からずいぶん南へきてしまったのだなあ」と感じます。
- とてもたくさんの写真をとられていると思うのですが、メモリーカードはどのくらいの容量(ギガ)のものを持っていくのですか?動画はビデオカメラで撮っているのですか?見せていただいた写真の色などは加工してあるのでしょうか?実際の目で見るのとは、やはり違うのでしょうか。(Yさん 女性・29歳)
私はRawデータでオーロラを連続で撮影しますので、大容量を要します。32ギガバイトのコンパクトフラッシュを10枚以上持って行きます。家庭用のビデオでは撮影は困難です。センサーであるCCDを超高感度に交換することで可能ですが、一般的ではありません。 実際に人間の目で見た際、輝きの暗いオーロラは白っぽい雲のようにしか見えず、きれいでも、おもしろくありません。7割はそのようなぼんやりした暗いオーロラです。運がよいと、活発で動きがあって、輝きが強いほど色が見えてきます。カメラのセンサーは人間の目の性能とは次元が違います。人の目で見た感じと同じに映ることはあり得ないのです。私の場合は生データから、出来るだけカメラが感じた色を忠実に、しかも人間の目で感じた色と違和感がないような線を見つけて映像にしています。
- 撮影場所で携帯はつながりますか(Kさん 男性・?歳)
一般の鑑賞地ではつながるかもしれませんが、私が通う北極圏ではまったくつながりません。
- 飛行機内からはどのように見えるのでしょうか?高度が高くなると、どのように見えるのでしょうか?(Oさん 女性・53歳)
機内の窓からは上の方は見えませんので、目線と同じ高さに見える事が多いです。
- 写真にすばるが一緒に写っていたものが多かった様に思うのですが、アラスカからだとオーロラの見える向きと重なる事が多いのでしょうか?カメラの感度は、高感度でしょうか?いくら位でしょうか?(Aさん 男性・7歳)
私が取材をしてる北極圏などでは、オーロラが南に振れる機会は少なめですが、他の方向全てには普通に出ます。
- オーロラは全く熱をもたないのですか?(Tさん 男性・61歳)
オーロラが発生しているところでは相当熱くなっていると聞きます。でも人が眺めている地上までは届きません。
- オーロラに興味を持たれたきっかけはなんですか?(Jさん 女性・37歳)
星空を見にニュージーランドに行った際に、たまたま南極側で活発なオーロラが遠くに見えました。信じられない光景で、オーロラの真下に行ってみたいと強く思いました。
- 日本人の冒険家で、バイクで北極点まで(南極点も)行った方がいましたが、アラスカでバイクに乗っている人には会いましたか?その方も、バイクの上からながめるオーロラは格別だとおっしゃっていました。(Tさん 男性・48歳)
バイクが走れてオーロラが見られるとすれば8月から9月上旬に限られますが、その時期に冒険をしている日本人には出会ったことはありません。道の向こうにオーロラのアーチが見えて、それに向かって行くドライブは最高だと思います。
- トナカイ(サンタクロースが乗る)は、本当にいるのですか?(Fさん 男性・?歳)
野生のトナカイをカリブーと呼んでいます。カリブーは何度も見かけていますが、サンタさんはまだ見かけたことがありません。