プラネタリウム

第64回 地球観測衛星「だいち」が見つめた地球  「だいち」に続く衛星とその仕組み

地球観測衛星「だいち(ALOS)」は、5年余りの間、地球の様子を継続的に見続け、東日本大震災での緊急観測や地図の作成、森林や耕地の状況把握、世界遺産の観測などを行ってきました。本講演では、「だいち」が観測した様々な画像を見て頂くとともに、衛星の仕組みや後継の衛星についても、ご紹介いただきました。

概要

日時

平成24年3月24日(土曜日)

講師

大澤 右二(おおさわ ゆうじ)氏
(JAXA宇宙航空研究開発機構 ALOS-2プロジェクト・プロジェクトマネージャ)

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  • 「だいち」が見つめた地球
  • 「だいち」の構成 ~グルグル回るモデルを用いてご紹介~
  • 「だいち」に続く衛星とその仕組み
  • 質疑応答

講演後、プラネタリウムロビーにて「だいち」がつかった本物の材料などを展示し、講師よりご案内いただきました。

聴講者からの質問と講師回答

富士山の衛星写真で横からとったものがありましたが、どのようにしてとったのですか?(Eさん 男性・53歳) 富士山の写真は(横から写っていたが)、どのようにして撮影したのですか?(Sさん 男性・36歳)

《質問を2つまとめて回答しています。》
富士山を真横から撮影した訳ではありません。「だいち」に搭載されている光学センサ「PRISM」は、立体視機能を持っているため標高を測定できます。面の情報(デジカメ画像)に標高の情報を加えることでスリーD画像になるので、どの方向からでも富士山の姿を見ることが出来ます。

「だいち」が地球一周するのに、どの位時間がかかるのでしょうか?(Sさん 男性・36歳) 「だいち」は何キロ位で移動しているのですか?地球一周にはどれ位かかりますか?(k2さん 男性・51歳)

《質問を2つまとめて回答しています。》
「だいち」が地球を一周する時間は約99分です。およそ秒速7.5キロメートルです。

ALOSとアスナロの違いは、どのように分野をわけるのでしょうか?(K.Kさん 男性・?歳)

ALOSやその後継機(ALOS-2、ALOS-3)は、地球をくまなく観測するような性格の衛星です。一方、ASNAROは観測幅が小さいと聞いていますので、ピンポイントの観測が主ではないかと想像しています。

ALOS-2やALOS-3は、何年間の運用を予定しているのでしょうか?(Nさん 男性・53歳)

ALOS-2、ALOS-3ともに、5年~7年の運用を予定しています。

「だいち」が打ち上げから5年で運用を停止した理由は何ですか?(Nさん 男性・53歳)

「だいち」は、設計寿命3年、目標寿命5年を超えて運用をしてきましたが、電源系機器が故障したため運用を停止しました。

現在「だいち」は昨年5月に停止したとのことですが、現在は全く地球の周りをただよっているだけなのですか?(S.Nさん 男性・63歳)

現状では、これまでと同様に地球の周りを回っています。

「ALOS-2」だけでは、片肺飛行(機能)にならないのですか?(S.Nさん 男性・63歳)

ご指摘の通りです。ALOS-2とALOS-3のセットがないと「だいちと同様の仕事」が出来なくなります。

「だいち」の運用はすでに終了との事ですが、衛星の寿命というのは何によって決まるのですか?技術的には何年くらいまで運用が可能なのですか?(?さん ?・?歳) 衛星の寿命はどうやって決めていますか?寿命を延ばすことも検討されていますか?(Y.Iさん 男性・69歳) 衛星の運用期間はなぜ3~5年位なのですか?(Sさん 女性・48歳)

《質問を3つまとめて回答しています。》
衛星毎の設計は様々なので一律には云えませんが、機器の劣化や故障、燃料の枯渇により寿命となります。長生きの衛星の例として、日米共同プロジェクトの熱帯降雨観測衛星「TRMM」(設計寿命3年)は1997年11月に打上げましたが、今でも運用しています。

「だいち」が終了したというのは、電池切れということですか?電池を長持ちさせる研究もされているのですか?(T.Hさん 男性・62歳)

電源系機器の故障が発生し電力が低下したため、運用を停止しました。また、電池を長持ちさせる研究もJAXAで行っています。

「だいち」は、いずれ落ちてくるとの事ですが、近づいたら場所は予測できるのですか?危ないと思うのですが・・・。(T.Hさん 男性・62歳)

落下する場所の精密な予測は、とても難しいと聞いています。

外国でも同じような衛星を飛ばしていますか?ぶつかってしまうことはないのですか?(T.Hさん 男性・62歳) 世界で何こ、えい星がとんでいるのですか?えい星どうしはぶつからないのですか?(M.Tさん 男性・9歳)

《質問を2つまとめて回答しています。》
外国でも同じような衛星を運用していますが、これまでのところ、ぶつかったことはありません。ちなみに、これまでに世界各国で打ち上げられた人工衛星は6000個を超えているそうです。

エイロス2号、エイロス3号と開発していますが、エイロス4号、エイロス5号と開発するのですか?(M.Tさん 男性・9歳)

更に技術を磨いて、エイロス4号、エイロス5号の開発をしたいと思っています。

「だいち」のデータを中継するのは現在どの衛星ですか?(Y.Sさん 女性・48歳)

JAXAの「データ中継技術衛星:こだま」(DRTS)が、「だいち」のデータを中継していました。

「だいち」はなぜ太陽電池パドルが片側のみ(アシンメトリー)なのですか?(Y.Sさん 女性・48歳)

レーダのアンテナ(約9メートル×約3メートルの長方形)を衛星の横(右側)に搭載するため、太陽電池パドルが1翼となりました。

白黒で撮影した画像にあとから色をつけるのですか?別々に情報を集めてあとから合成するのでしょうか?(Y.Sさん 女性・48歳)

ご指摘の通り「別々に情報を集めてあとから合成」しています。具体的には、白黒画像(PRISM:分解能 2.5メートル)は、カラー画像(AVNIR-2:分解能 10メートル)より細かく見えるのが特徴ですが、この2つの画像を計算機で処理することで、詳細なカラー画像にしています。

レーダー画像とカメラの画像では、どちらの画像の方が重いのでしょうか?(Sさん 女性・30歳)

両方とも重いです(^^;)。例えば白黒のPRISM画像ですが、1つの画像で約2億~4億画素相当です。

レーダーの衛星(ALOS-2)を、カメラの衛星(ALOS-3)よりも先に打ち上げるのはなぜですか?(Sさん 女性・30歳)

ALOS-2とALOS-3の両方とも必要な衛星なのですが、Lバンドのレーダを搭載したALOS-2は世界的に見ても貴重な衛星なので、先に打ち上げることを考えました。ALOS-3も早く打ち上げられるよう、みなさんの応援をお願いします。

ALOS-2では土の中の水分量を観測可能ですか?土砂崩れの予測はできますか?深層大雪崩れのおこりそうな場所を予測できますか?(Zさん 男性・50歳)

土の中の水分量の観測や土砂崩れ、深層大雪崩の予測は、難しいです。

地球資源の探査についてお話ください。(R.Mさん 男性・71歳)

「だいち」のデータを含めた様々な情報等を用いて、海外を含めた資源探査を行っていると聞いています。

ALOSの技術を、地球以外の天体の探査等に応用する予定や計画はありますか?(Tさん 男性・48歳)

具体的な例はありませんが、「だいち」の開発と「かぐや」の開発が、ほぼ同時期だったので、光学センサについての技術的な情報交換などを行っていました。

「だいち」の予算はどれくらいだったのですか?(Kさん 男性・37歳)

衛星の予算は、合計約550億円でした。

レーダーの電波は人体に影響はないのですか?(Kさん 男性・37歳)

はい、影響のないレベルです。

外国を撮影するのに許可はいらないのですか?(Kさん 男性・37歳)

許可は要りません。

他国へのデータ提供は、どういったルートで行われますか?政府を通じてなのでしょうか?(Oさん 女性・48歳)

各国の宇宙機関、防災機関で国際協力の枠組みを作っています。センチネルアジア、国際災害チャータという枠組みがあり、その枠組みで決めたルートに基づき、インターネットを通じて、相手方にお渡ししています。

(大澤プロマネが)世界中の画像を見られて、一番美しいと思われた地域はどちらですか?(Oさん 女性・48歳)

「だいち」で最初に画像を撮った「富士山」が最も美しかったです。

衛星の企画をたてるきっかけは何でしょうか?国民の声なのでしょうか?専門家の意見なのでしょうか?(Oさん 女性・52歳)

ALOSシリーズの例ですが、最初に行うのはニーズの把握と技術的な検討です。それを元に、衛星の企画を立ち上げています。

(「だいち」のカメラで)どこを撮るかを決めるのは誰ですか?(Mさん 男性・67歳)

JAXAが決めています。

去年(2011年)の東日本大震災では、東北地方の太平洋側を南北に、津波や地震の被害がありました。「だいち」は極軌道(南北)に通る衛星だったのでうまく被災地を(数分で?)撮影できました。今後予想される災害は、東海、東南海のエリアとして東西方向の被災が予想されます。今後の衛星で東西方向に撮影するには、どうするのでしょうか?(Zさん 男性・?歳)

ALOS-2のレーダは、最大490キロメートルの幅で観測が出来ます。

ページ先頭へ戻る