プラネタリウム

第68回 「かぐや」のその後 新しく何がわかったか、次期月探査は?、かぐやの作ったクレーター

月探査衛星「かぐや」の成果と、今後の計画について解説していただきました。

「かぐや」が月に帰ってから3年が経ち、10テラバイトにおよぶ月全球の観測データの解析によって月の起源と進化の新しい科学が明らかになってきました。重力場と地形から月地殻の厚さ分布が、元素・鉱物の全球分布から初期進化で起こったできごとと変遷の歴史が明らかになりつつあります。これまで考えられていた「マグマオーシャン」とはかなり違った進化像を描く必要があります。
講演会では新しい月の描像についての解説に加え、月探査の将来計画や「かぐや」クレーターについてもお話しいただきました。

概要

日時

平成25年1月26日(土曜日)

講師

加藤 學(かとう まなぶ)氏
(宇宙航空研究開発機構 JAXA/ISAS)

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  • 「かぐや」が見た月
    →「かぐや」による発見・成果
  • 次期月探査について
  • 質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

有人月飛行を行なうとすると、日本は自前で月探査機をつくり、国産ロケットで月に行くことになるのでしょうか?(Nさん 男性・54歳)

有人月探査は国際協力で実施することになると思います。現在地球周りにある宇宙ステーションと同じ協力形態で月に行くことになると考えています。潜在的に国産ロケットで行ける能力を開発しつつ国際協力を進めることになるでしょう。

地球の自転速度がおそくなっていると聞きましたが、月と地球は引力でいつか衝突するのですか? (Tさん 女性・70歳)

月と地球の間には潮汐力と呼ばれる力が働いていて地球の海に潮の満ち干きがあり、地球の回転にブレーキがかかっています。一方月にも地球から潮汐力が加わっているので月震を引き起こされているとも考えられています。月は地球の周りを回転していて潮汐で回転エネルギーを失い回転速度を僅かずつ落としていますが、軌道を年に数センチ大きくする(地球ー月間距離を大きくする)ことで回転を保っています。まだまだ周り続けます。

月は何故、地球から見ると同じ面を見せるのか?(Sさん 男性・64歳)

自転と公転が一致すると回転運動が安定するので同じ面を見せてしまっています。何か大きな天体がぶつかるかすることによって地球ー月系の円運動を急激に乱すようなことがない限り続きます。

月に宇宙人はいると思いますか?(Nさん 女性・30歳)

いないとは言えません。人間と同じ形をした生命がいるためには、進化の環境が同じでなければなりませんので、なかなか考えにくいのですが。

まだとんでいる、おきなかおうなに再接触か再通信できるのは、いつまでか?また、どんな事がわかるのか?(Aさん 男性・7歳)

「おきな」は「かぐや」の月面衝突以前に裏側に衝突落下してしまっています。「おうな」は道が安定していますので、まだまだ落下しません。おうなとの通信を復活できますが、復活させても利用することがありませんので、通信を停止しています。

かぐや2はいつごろ飛ぶのですか?(Aさん 男性・7歳)

2018年ころには打ち上げたいと考えていますが、なかなか実現しません。

はやぶさのデータとかぐやのデータあわせて一緒に研究するなどということはあるのでしょうか?(?さん 女性・53歳)

それぞれが太陽系内の物質分布を示すデータになっていますので、当然一緒に考えます。

月面への有人探査、他国はどの程度進んでいるのですか?最も近い将来、人類を月に送る国はどこですか?(?さん 女性・52歳)

先にも答えましたように宇宙ステーションのように国際協力で月面有人探査をやると思います。中国だけはまず、独自にやるかも知れませんが、月面基地を作って長く月面に滞在するようになると国際協力による維持が必須になると思います。

かぐやにのせたかったセンサーはありますか?かぐやではのせられなかった物がどんな物があるか知りたいです。(Fさん 男性・38歳)

太陽系空間を飛び回る塵を観測する装置がのりませんでした。予想される速度が大きすぎて測定する方法がまだ確実でなかったからです。

月の夜は2週間と聞きました。長期の観測をするためには越夜の技術が必要だと思いますが現在研究はどのくらい進んでいるのでしょうか?2週間では無理だけど3日ならOKとか現時点でわかりやすい研究の進み具合を教えて下さい。(Bさん 女性・?歳)

越夜の技術は燃料電池と呼ばれる水素ー酸素のサイクル電池の開発と熱絶縁シートによる保温技術の開発で進んでいます。アイソトープ電池の搭載が困難視される我が国では必須の技術で急速に開発が進んでいますので、数年内には越夜可能になるでしょう。

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