プラネタリウム

第69回 オリオン座に輝く星ベテルギウスの素顔

冬の代表的なオリオン座。オリオンの右肩に輝く赤い1等星「ベテルギウス」。
ベテルギウスはどんな星なのか、現在までに明らかになったことや将来のことについて、国立天文台で研究をされている松本先生にお話しいただきました。

にぎやかな冬の星空の中、オリオン座をかたどる星ベテルギウス。その姿は丸くない!?
大爆発によりその一生を終える日もそう遠くはないのではと言われるベテルギウスのダイナミックな様子を、最新の天文学に基づいてご紹介いただきました。

概要

日時

平成25年3月23日(土曜日)

講師

松本 尚子(まつもと なおこ)氏
(国立天文台 水沢VLBI観測所 研究員)

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  • 私と天文学 ~VERAとの出会い~
  • 星の一生とベテルギウスの生い立ち
  • ベテルギウスの素顔
  • 質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

ベテルギウスが超新星爆発をする寸前に、そのきざしみたいな現象は観測されるのでしょうか。 (Sさん 男性・44歳)

爆発する寸前には、星の内部で自身の重力を支えられなくなり、重力崩壊と呼ばれる中心の核が押しつぶされる(収縮する)現象が起きます。
その際に、ニュートリノと呼ばれる粒子が飛び出してきますので、カミオカンデという装置がそのニュートリノを検出すると考えられています。詳しくは下記をご覧ください。

スーパーカミオカンデ公式ホームページ(外部サイトが別ウィンドウで開きます)

ベテルギウスには太陽と同じ様にわく星があると思いますか? ある場合は今はどの様になっていると思いますか? (Fさん 男性・38歳)

国立天文台の太陽系外惑星探査プロジェクトSEEDS(シーズ)や、NASAの系外惑星探査機「ケプラー」などにより、多くの恒星には惑星があるということが見つかってきています。
ベテルギウスに惑星があるのかどうかはわかりませんが、ベテルギウスにも惑星がある可能性はあると思います。
ベテルギウスの近くにある惑星は、ベテルギウスが年老いて膨れ上がってしまった際に飲み込まれしまっていると思います。同様の事は未来の太陽系にも言えて、おおよそ20~30億年後に、太陽が年老いて膨らみだすと、太陽に近い惑星は飲み込まれていくと考えられます。

宇宙の膨張しているその外側はどうなっているんでしょうか?(Bさん 男性・30歳)

宇宙には外側はありません。時間と空間全てをひっくるめたものが、宇宙です。
全てが含まれたものが宇宙なので、それの外、というのはそもそも存在しません。
宇宙"膨張"という言い方をすると、まるで風船が膨らむようなイメージを持ってしまいますが、無限の広がりを持った空間が全体として拡大している、そんなイメージの方が適切だと思います。
なんと日本語で表現すればよいのか、難しいところですが…。詳しくは下記をご覧ください。

宇宙図(外部サイトが別ウィンドウで開きます)

昨年よりベテルギウスは既に爆発しているのではないかと云われていましたネ(?さん 男性・69歳)

たしかに、いつ爆発してもおかしくないという点からは既に爆発している可能性もありますね。
太陽系からベテルギウスまでの距離が640光年くらいだとすると、ベテルギウスが爆発してから地球にその様子が観測されるまで、640年くらいの時間差が生じますので、既に現場では爆発していても、まだその光が地球に届いておらず爆発を観測できていないという状況かもしれません。

もし爆発したら地球に被害はないのですか?この間の隕石みたいなことは起きますか? (Aさん 男性・8歳)そんなに大きな星が爆発して地球への影響は考えられないのですか?(?さん 女性・?歳)

ベテルギウスが爆発しても、地球にはほとんど影響がないと考えられます。
それは、距離が十分に遠いからです。もしも地球がベテルギウスから数光年以内にあったとしたら、強烈なガンマ線によって生命にとって過酷な環境がもたらされることでしょう。
幸い、太陽系の近くにはベテルギウスのような超新星爆発を起こしそうな星はありませんので、心配する必要はありません。
ただ、オリオン座の有名な星が消えてしまうのは残念ですね。

ベテルギウスが超新星爆発をおこすと地球にはどのような影響があると考えられますか (Gさん 男性・30歳)爆発は地球や銀河系に影響はないのですか?(?さん ?・?歳)

見かけの変化としては、昼間でも明るく輝く新しい星が確認されるようになります。
生態的な影響としては、宇宙線の影響が考えられますが、前述のように生命への深刻な被害はないと考えられています。

銀河系の中で考えると、超新星爆発というのは、星形成にとってとても重要な役割があり、爆発で周囲のガスともども自身のガスも周りへ吹き飛ばします。
そのときに周囲のガスが押しやられ、ガスの濃い部分ができ、そこで新たな星形成が誘発されると考えられています。
また、爆発前までの星の内部の核融合や超新星爆発の際に生成される鉄よりも重い元素は爆発の勢いで周囲へまき散らされ、次に生まれる世代の星々は、それらの元素を取り込むことができます。
軽い星ではそのような重い元素をつくることはできません。
星ができる際には惑星も作られ、私たち生物を形作る材料にもなっています。

ボウ・ショックとは何ですか。ベテルギウスの超新星爆発の時、放射能等の影響はどうなのですか。 (Mさん 男性・47歳)

ボウは英語でbow(船首)。海の中を進む船の先の様子を想像していただければ良いと思います。
その円弧状の形状を作り出す衝突の様子をボウ・ショックと呼んでいます。
超新星爆発の際の放射能に関して、地上での深刻な影響はないと現時点では考えられています。

今回ベテルギウスのお話しでしたが、毎回、すべての星を観察しているのですか?(?さん 女性・29歳)

宇宙にある星の数は膨大ですので、毎日すべての星を観察することは簡単ではありません。
悪天候や観測装置のトラブルはつきものですし、暗い星ほどその光を集めるためにじっと見ないといけないので、到底一晩のうちにすべての星をみることはできなくて、大抵は興味のある星をあらかじめいくつか目星をつけて、その辺りだけ観察するということをしています。
中には、全天観測を目的としている望遠鏡もありますが、やはり一晩のうちにすべての星を見ることは難しいです。
実際にはプロ・アマ問わず世界中の観測で突然明るくなりだした星などを発見した場合は、インターネットを通じて情報共有されています。

ベテルギウスの他にも同様な爆発をしている星はありますか?(Yさん 女性・65歳)

私たちの住む銀河系の中で、同様な爆発、つまり超新星爆発は数百年に1回程度の割合で発生していると言われています。
そのような超新星爆発を起こすような重い星の数は数多ある星々の中では圧倒的に少ないですが、存在はしています。
銀河系の中で有名な星はイータカリーナが挙げられます。
近い将来超新星爆発を起こすと考えられており、星が壊れてしまわない程度の大きな爆発をすでに起こしている星です。詳しくは下記をご覧ください。

AstroArts(アストロアーツ)(外部サイトが別ウィンドウで開きます)

銀河系以外の銀河での超新星爆発は毎年数百くらい見つかっています。
また、超新星爆発の跡と思われる銀河系のガスにぽっかりとあいた穴もいたるところで観測されています。

爆発の光は、その直後に分かるのか(地球に届く)、または、数日後などになるのですか。 (Fさん 男性・15歳)

光が空間を進む速さは1秒間あたり約30万キロメートルです。 そのため、距離が遠い程、私たちのいる地球に光が届くのに時間がかかります。
例えば、太陽と地球の間の平均距離は1天文単位(約1億5千万キロメートル)で、太陽表面の光が地球まで届くのに約8分かかります。
すなわち、地球上で私たちが見ている太陽は約8分前の姿ということになります。
ベテルギウスまでの距離はまだあまり正確には求められていませんが、現在測定された結果の中でもっともらしい距離は640光年(測定誤差150光年)です。
太陽系からベテルギウスまでの距離が640光年とすると、ベテルギウスが爆発してもその光(情報)が地球に届くには640年かかります。

どうして星の質量は0.08太陽質量~20<太陽質量までバラつくのでしょうか? 同じ条件で光りだすのであれば同じ質量になってもよいはず数倍ならわかりますが、 200(2ケタ以上)倍以上も違うのは何か制限になっているのでしょうか?(Tさん 男性・53歳)

星が生まれて光りだすまでにどれだけ星の材料を集められるかによって、星の質量にばらつきができます。
特に重い星について、現段階ではそれだけの星の材料を集める物理過程が完全に解明されている訳ではないためはっきりとした事は言えません。
生まれてくる星の個数や質量に違いがでてくる一つの要因としては、宇宙空間の中で星が生まれる現場であるガスが沢山集まった雲(分子雲)自身のサイズや密度の違いが挙げられます。
例えば、もともとガスがそれほど大量に集まっていないところでは重い星を作る事ができません。
また、その雲の中には密度むらがあるため、均一にそれぞれの場所でガスが集まって均一の質量の星をつくるということにはなりません。
ガスが濃いところは早くたくさんガスが集まって、ガスが薄いところはそれよりもゆっくりガスが集まるという状況が考えられます。
密度以外にも磁場の影響や円盤を介した質量降着などがガスを集める際に効いてきますし、金属量なども影響してきますので実際はもっと複雑に考えないといけないと思いますが、密度だけを考えても星を生成している分子雲の密度差は最大で3桁異なりますので、できる星の質量が桁で異なっていても不思議ではありません。
宇宙のスケールはとても大きく幅が広いです。

ベテルギウスが超新星爆発した際、地球環境に望遠鏡で観測できるもの以外に わかりやすい影響などはあるのでしょうか?(Kさん 女性・25歳)

肉眼でわかる程に明るく輝き色が赤から白っぽい色へ変わる可能性があるというのが一番分かりやすい現象だと思います。
他には、宇宙線の中のニュートリノをスーパーカミオカンデで検出できると考えられています。
また、アインシュタインが予言した時空の歪みを伝える波、重力波を検出することができる可能性もあります。詳しくは下記をご覧ください。

国立天文台重力波プロジェクト推進室(外部サイトが別ウィンドウで開きます)

ベテルギウス以外で、同じような状態の星はございますか?(Oさん 女性・50歳)

ベテルギウスは赤色超巨星といわれる状態の星ですが、広い宇宙でこの赤色超巨星はいくつも見つけられています。
有名な星では、さそり座にある赤い星アンタレスも赤色超巨星です。

銀河系の形はどうしてわかるのでしょうか。裏側は見れないですよね? また、全体像も見ることができませんがあくまでも想像図なのでしょうか。(?さん 男性・41歳)

幸か不幸か、太陽系は銀河系の真横から見ていますので、裏側が特別見れないという状況ではありません。
一方で、真横から見ている為に、上から覗けるわけではないため、全体の形を把握するのが難しいです。
特に銀河系の中心部分は濃いガスが特に沢山集まっているので、銀河系の中心よりも向こう側は観測が特に難しいです。
しかし、電波や赤外線など、ガスの濃いところも見通しやすい波長での観測を駆使して銀河系全体の情報を集めようとしています。
基本的には、銀河系の外にある様々な銀河の観測から、真横から見ている銀河系の観測データを上手く説明するものはどれかという調べ方をしているので、数多有る銀河のひとつである銀河系の描像としては、とんでもなく間違ったものではないと考えられますが、やはり、まだ“想像”図の域を出ません。

ブックレットとちらしのオリオンの絵が違うのは何故か。(Fさん 女性・59歳)

葛飾区郷土と天文の博物館では、レンズを使って星を映す光学式プラネタリウムと、CGで宇宙を表現するデジタルプラネタリウムの2つがあります。光学式プラネタリウムは日本製で、デジタルプラネタリウムはアメリカ製になります。2つの機械とも星座の絵を出すことができ、それぞれの星座の絵も違います。
こん棒を持つオリオンと剣を持つオリオンと機械によって様子が違いますが、どちらが正しいというわけではありません。それぞれの国やもとの星図によっていろいろな星座の絵があります。
書物によっても様々な星座の絵がありますので注目して見てみてください。

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