プラネタリウム

第73回 超新星爆発とニュートリノ 星の一生とニュートリノ天文学

葛飾区郷土と天文の博物館主催 東京理科大学後援 「星の講演会in東京理科大学葛飾キャンパス」
 博物館が施設工事休館期間中の為、東京理科大学葛飾キャンパス 講義棟1階101教室で開催しました。

太陽のような恒星も、生まれ進化し死んでいきます。
星の一生と、重い星の最後に起きる超新星爆発とそのときに放出されるニュートリノと呼ばれる素粒子について解説いただきました。
また関係して、小柴博士が開拓された「ニュートリノ天文学」についてもお話しいただきました。

概要

日時

平成26年3月15日(土曜日)

講師

鈴木 英之(すずき ひでゆき)氏(東京理科大学 理工学部 物理学科 教授)

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  • 1.ニュートリノとは
  • 2. 星の一生
  • 3. 超新星爆発
  • 4. ニュートリノ天文学
  • 質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

HR図の星の進化過程において、星が重力で潰れないようにする為に、内部エネルギーによってその重力に反発する流れになっているという解釈でいいでしょうか? (Yさん 男性・47歳)

星を、玉ねぎのように薄い球殻が重なり合ったものとみなして、一枚の球殻に着目すると、中心に向かって引っ張る重力と、内側から外に押し出そうとする圧力勾配(内部エネルギーの勾配に対応します)がつりあっていると考えることができます。

星の核融合で、H(水素)がC(炭素)やO(酸素)に変わっていくことについて、子供の頃の記憶では、地球で植物などが生まれてO2(酸素)ができたとのような話だったかと思うが、そもそも地球環境では核融合がないと、問題となっているようなCO2(二酸化炭素) 化の解決には至らないのでしょうか? (?さん 男性・43歳)

植物の光合成は、二酸化炭素CO2と水H2Oから酸素分子O2を作る化学反応です。すなわち酸素Oや炭素Cは元々存在していて、その組み合わせを変更する反応です。
一方、星の中で起こる核融合反応は、水素原子核からヘリウム原子核を経て炭素原子核や酸素原子核を作りだすもので、最初存在していなかった炭素や酸素を新たに作り出す反応です。

ニュートリノを観測することによってコアの様子が見えるとありましたが、飛んでくるニュートリノに関する変数の値の違いを比較することによって核反応暴走型、重力崩壊型が見えてくるのですか?もしそうならば、どのようなアルゴリズムでコアの様子を決めるのですか? (Yさん 男性・47歳)

核反応暴走型超新星からは、重力崩壊型に比べて少量のニュートリノしか放出されませんし、放出されるニュートリノの平均エネルギーも低くなります。ニュートリノの量やエネルギー分布から、核反応暴走型か重力崩壊型か区別がつきます。
また、重力崩壊型超新星から放出され観測されるニュートリノの量やエネルギー分布の時間変化と、いろいろな重力崩壊型超新星爆発の数値シミュレーションに対する観測データ予想とを比較することによって、実際の爆発の様子を解析することができます。

核反応暴走型についてもう少しお話いただけませんか?(?さん ?性・?歳)

太陽の8倍くらいより軽い星は、炭素・酸素の中心核ができた後それ以上の核融合が起こらず、外層を静かに放出して中心核がむき出しになります(白色矮星になる)。なかには、この白色矮星が連星系をなしていて(お互いのまわりを回っていて)、相手の星からガスが降ってくるケースがあります。
降り積もったガスのせいで白色矮星の限界質量に達すると、内部の密度が上昇し核融合反応が暴走してしまいます。核反応が暴走して白色矮星全体が爆発してしまうこの超新星は、白色矮星の限界質量に達したときに起こるので、いつも似たような爆発になり、一番明るくなる時の明るさもほぼ同じになります。
逆に、遠くで起こった核反応暴走型超新星(Ia型超新星)の地球での明るさから、その超新星の起こった銀河までの距離を逆算することができます。超新星はとても明るく、かなり遠い銀河で起こっても地球で観測できるので、遠い銀河の距離を測定する貴重な手立てになっています。
こうやって測定した銀河の距離と銀河の後退速度の観測から、現在の宇宙が加速膨張していて、宇宙には大量のダークエネルギーが存在するということが明らかになりました。

ニュートリノ振動によって、素粒子の性質等、どのようなことがわかるのでしょうか? (Hさん 女性・?歳)

ニュートリノの質量差や混合角と呼ばれる素粒子モデルの基本データがわかります。

ニュートリノの速度は、光の速度と同じですか?どのようにして測定しますか?(Iさん 男性・60歳)

ニュートリノ振動が起こっているということは、ニュートリノが質量を持っていることを意味し、ニュートリノの速度は光速よりは遅いことになります。原理的には、ニュートリノが放出された場所・時間と、観測された場所・時間からニュートリノの飛行速度を測ることができますが、光速からのずれは小さすぎて今のところまだ測定されていません。

ニュートリノ自体に寿命はあるのでしょうか?(Kさん 男性・?歳)

現在のところニュートリノに寿命があるという実験結果はありません。ニュートリノにも寿命があるという理論もありますが、これまでの素粒子の標準理論を越える理論は、今後の実験で調べていかないと、正しいかどうかわかりません。

太陽からのニュートリノと、他の天体からのニュートリノを見分けるポイントはどこでしょうか? (Tさん 男性・50歳)

ニュートリノ一個一個に太陽出身とかいう名札はついていないので、一個一個の識別はできません。太陽の方向からきたかどうか、エネルギーは太陽内部の反応でできたニュートリノとして矛盾はないか、などの条件を統計的に処理して、太陽からこれだけの量が来たという観測結果に焼き直します。

ニュートリノのスピンは?(?さん ?性・?歳)

電子やクォークと同じ、2分の1です。

「ニュートリノ」は、「ニュート」+「リノ」なのですね?(Mさん 男性・52歳)

電気的中性(ニュートラル)と、イタリア語で「小さい」という意味を持つ -inoをつかってニュートリノの名づけられたようです。和訳は「中性微子」です。

クォークの中で、電荷以外にはどのような条件でわけているのですか?(?さん 男性・12歳)

質量に違いがあります。

質量がない」と予想されていたのはなぜですか? またそれが「質量がある」とわかったのはどうしてなのでしょうか?(Iさん 男性・42歳)

電子型ニュートリノに質量があるとしても電子より非常に小さいことが実験的にわかっていましたし、質量がないとして弱い力の理論が美しくまとめ上げられていました。ところが、質量がないと原理的にニュートリノ振動は起きないのに、ニュートリノ振動現象が発見されたので、質量があることが明らかになりました。

宇宙の水素はどれくらい先まで存在していると考えられているのでしょうか?(?さん ?性・?歳)

10の31乗年以上は存在します。
宇宙の現在の年齢が138億年
13,800,000,000年に対して、
10,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000年以上です。

星の中の水素の量はどのように算出されたのでしょうか?(?さん 女性・50歳)

星の内部構造と進化に関する数値計算結果と、星の明るさや表面温度などの観測データの比較から、星の内部がどうなっているかを知ることができます。内部に残っている水素の量も推定できます。

ニュートリノ天文学は、人類の文明にどのような成果を期待されていますか?(?さん 女性・50歳)

星の内部や超新星爆発の様子をニュートリノで見ることと、光などを使った通常の天文学の観測結果を組み合わせることで、地上の実験では調べることのできないような状態における自然法則を研究することができます。直接的ではありませんが、普遍的な自然法則を明かにしようとする物理学の発展に寄与して、ひいては文明に役立つ技術の発展にもつながると思います。

星の誕生はどのくらいの頻度で起きていますか?(Kさん 男性・39歳)

我々の銀河系では、一年あたり数個から10個ほどの星が産まれていると見積もられています。

ベテルギュースが爆発したら、人間には何か影響はありますか?(Mさん 男性・70歳)

月のように明るく輝き日中でもみることができると予想されますが、数百光年離れているので、直接地球に害をもたらす可能性は低いと思われます。

超新星爆発を肉眼で見ることが出来る事は、期待できますか?あと何年位でしょうか? (Dさん 男性・69歳)

銀河系の中では超新星爆発が数十年に一度くらいの頻度で起こると考えられていますが、肉眼で見えるのはある程度太陽系に近いものに限られ、過去1000年では数個しかありません。

超新星爆発で重い元素ができますが、それがまた集まって次の世代の星、惑星ができるとして、量としては、たとえば太陽系一つ分の元素は超新星爆発いくつ分くらいなのでしょうか?かなり多く爆発していないと足りないように思いますが…。 (?さん 男性・52歳)

太陽系の惑星の総質量は、太陽の質量の1パーセントもありません。重力崩壊型超新星の一例である超新星1987Aでは太陽質量の7パーセントもの鉄が放出されたことがわかっていて、酸素や炭素などはもっと放出されるので、分量的には一回の超新星爆発で足りると思われます。

超新星という呼称で「"新"しい」という語を用いていますが、その意味は何ですか?(Iさん 男性・60歳)

超新星は、新星の中でも桁違いに明るいものとして名づけられました。一方、新星は、いままで星のなかったところに急に明るく輝く星が現れたので、新しい星が生まれたと誤解されその名がつきました。実際は、肉眼では見えないくらい暗い白色矮星の表面で急激に核融合反応が起こって、肉眼でも見えるようになったものが新星だったのですが、昔の人は勘違いしていたわけです。

地球は銀河系の中でも端の方に位置するため、銀河系内の超新星爆発が見えづらいということでしたが、1つの銀河の中で超新星爆発がよく発生している、もしくは発生しやすい場所はあるのでしょうか? (?さん ?性・?歳)

重力崩壊型超新星爆発は、寿命が短い重い星が死ぬときに起こりますから、今も星が生まれ若い星がたくさんあるような領域で起こりやすいと言えます。渦巻き銀河の腕に当たる部分などが、そのような場所の一つです。

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