プラネタリウム

第82回 星の講演会 「水星の科学と探査計画 MESSENGERの最新成果とBepiColombo計画」

太陽に一番近い惑星である水星はどのような星なのでしょうか。近年、NASAのMESSENGER探査機による観測によって、謎に満ちた水星の様子が少しずつ分かってきました。その最新成果をまとめるとともに、日本とヨーロッパが共同で進めている水星探査計画BepiColomboもご紹介しました。

概要

日時

平成28年1月30日(土曜日)午後7時~午後8時30分

講師

西野 真木(にしの まさき)氏
名古屋大学 宇宙地球環境研究所 電磁気圏研究部 研究員

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  • 太陽系と水星
  • マリナー10号の観測
  • 地上観測
  • MESSENGERが見た水星
  • BepiColomboプロジェクト
  • MMOの開発とこれから
  • 質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

大きな盆地はどうやって形成された?(Mさん・男性・33歳)

水星最大の盆地であるカロリス盆地は、それなりの大きさの小天体の衝突によって38~35億年ほど前に形成されたものと考えられています。なお、後期重爆撃期との関係はあまりよく分かっていません。後期重爆撃期の天体衝突による火山活動のため水星の地殻が再形成されたという考え方もあります。

水星の表面の組成が分かるようになったと言う話ですが、水星由来かもしれないという隕石があると聞いた事があるのですが、本当に水星由来なのでしょうか? (Mさん・男性・34歳)

隕石の組成がMESSENGERが観測した水星の表面組成と一致しており、持っている特徴が水星から飛来したと考えても矛盾しません。

表面に鉄が少ないことは、内部に鉄が存在する間接的な証明(と言わないまでも、裏付け)とお考えですか? (Sさん・女性・?歳)

表面に鉄が少ない理由はまだ解明されていません。一つの学説によると、鉄をあまり含まない天体が水星に衝突した際に、鉄を多く含んだ水星の表面が剥ぎ取られてしまったため、現在は表面には鉄が少ないが内部には多く含まれる、という考え方があります。

水星大気のナトリウムというのは金属の状態で存在していると考えられているのでしょうか? (Nさん・男性・57歳)

水星表面にナトリウム原子だけが集まって存在しているわけではなく、月や地球の岩石と同様にナトリウムが成分として含まれている状態です。そのうちの一部の原子が飛び出してくることによってナトリウム大気を形成しています。

MMOは、水星に近づいてから何年ぐらい運用される予定なのですか?(?さん・女性・気持ちは30歳)

水星を周回する軌道に投入してから最低でも1地球年は運用し、さらに1地球年の延長運用を想定しています。

2011年4月に、寺薗先生の講演会で「はやぶさマーク2とは?」という質問をし「ベピコロンボという計画になりそう」とお答えいただき、それが形になったのがとても感概深いです。MMOをはじめとしたベピコロンボの一群の成果が出たら、また葛飾の博物館で講演をしていただけますでしょうか?そのときは、ホルストの水星をピアノアレンジで聴かせていただけますか。 (Tさん・男性・52歳)

はやぶさマーク2とベピコロンボは当初から別のプロジェクトです。次回の講演は、打ち上げの頃や水星到着の頃にさせて頂く方向で検討をしています。 ホルストの水星は作曲家自身が作った2台4手ピアノ版があります。余力があればピアノソロ版にも挑戦してみたいと思います。

電子機器を守るため熱制御は今までとどのようにちがっているのですか?(どのような工夫をしていますか?)(Tさん・男性・51歳)

熱制御で工夫した点は、衛星表面の多くを鏡にしたことと、新たに導電性白色塗料を開発したことが挙げられます。鏡を貼ることが出来ない箇所には白色塗料を使いたかったのですが、以前の白色塗料は絶縁物のものだけでした。ところが、観測要求から絶縁物は使いたくなかったため、高温に耐え、紫外光による劣化が許容できるような導電性白色塗料を新たに開発してもらいました。 また、運用面では、常に観測機器をONにすると発熱するため、機器をOFFにして冷却する期間を設けるなどの工夫をしています。 また、水星到着までサンシールド(MOSIF)で保護することも熱対策の一つと言えます。

MMOのひだひだはどうしてあるのですか?ひだをつくることで重量がまし、打ち上げに不利だと思うのですが。 (?さん・男性・?歳)

ひだひだというのはMASTを覆うカバーのことだと思いますが、収納するために折りたたんであり、伸展すると折りたたんであるものが伸びて四角い筒になります。

水星の磁場の源として、液体の金属核の可能性が指摘されていますが、一方でとっくに核は冷えて個体になっているはず、とも指摘されています。あくまで可能性としての仮説ですが、熱源として(天文学的に)比較的最近(数百万年以内とか)に水星に未知の天体が衝突していた可能性は考えられるのでしょうか?(Tさん・男性・39歳)

水星内部の熱源となりうるほどの天体衝突であれば表面にも大きな痕跡が残るはずですが、比較的最近の衝突は小さなものだけしか起きていません。

水星に関わらずですが、探査機を落としまくって地球から持ってったものを置いてきてよいものでしょうか?(?さん・男性・?歳)

後々の科学探査のためには、地球の物質によって他の天体が汚染されることはあまり良いことではないという考え方もあります。(ちなみに、地球の月はかなり汚染されてしまっています。)

金星フライバイ、水星フライバイで水星に到着すると言っていましたが、スウィングバイとは何が違うんですか? (Bさん・女性・43歳)

スイングバイとフライバイは同じ意味で用いています。ただし、水星探査の場合にはフライバイによって探査機を減速させます。

なぜ、MMOとMPOはスピンと三軸なのですか? (Kさん・男性・12歳)

MMOは衛星周囲の全ての方向の粒子・波動を観測したいからスピン衛星にしています。MPOは水星表面の撮像や測距が主な目的ですので、常に同じ面を水星に向けることができる三軸制御を用いています。

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