プラネタリウム

第86回 地球の月

他の惑星の衛星に比べて地球の月は少し様子が異なっています。 他の惑星で地球の月のような満月を見られるのかどうか考えながらその様子の違いについて見てみました。プログラムの後半は月のクレーターに焦点を当てて研究紹介しました。
特にクレーターの空間分布を数値化する試みは情報幾何学の基本的な考え方に基づいたアルゴリズムです。まだ発展途上にある研究ですが、月科学への応用範囲について最後触れました。

概要

日時

平成28年9月10日(土曜日)午後7時~午後8時30分

講師

本田 親寿(ほんだ ちかとし)氏
(会津大学 先端情報科学研究センター 宇宙情報科学クラスター 准教授)

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  1. 地球の月と他の惑星の月
  2. 光条クレーター
  3. 火クレーターの空間分布
  4. 質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

月の起源の説を示す条件の中で、酸素同位体を重視するのはなぜ?(Tさん・男性・53歳)

酸素同位体比(質量数16の酸素に対する酸素同位体の比)は太陽系惑星・衛星によって固有の値を示すことが分かっています。仮に複数の天体の材料物質の酸素同位体比が同じであると、それらの天体の材料物質が同じであることが予想されます。従来の研究結果と異なって最近の研究によると、地球・月の酸素同位体比が異なるという結果も報告されています。

光条クレーターの消失時間に鉄の多少が関係しているという説明でしたが、他の要因は考えられないでしょうか? (Pさん・男性・32歳)

形成されたクレーターの「光条」は、物質が宇宙風化作用を受けて暗くなる効果の他に、微小隕石が光条へ衝突することによって地下の古い物質と攪拌する効果によっても見えなくなります。宇宙風化作用や微小隕石による攪拌効果の時間スケールを見積もってみたいと私は考えています。

光条の条は、道ですか? 京都の道、都からつながる道に○条などと付いているように思います。 (?さん・?・?歳)

この言葉の起源について考えたことがありませんでした。コメントありがとうございます。「筋」という意味を筋道と考えて「条」という漢字に当てたのだと私も思います。

月以外の衛星もジャイアントインパクト説なのか。なぜ月の噴火活動の年代が分かったのでしょうか。 (Yさん・男性・50歳)

月以外の衛星だと火星衛星もジャイアントインパクト説によって計算上作ることができることが最近証明されています。そうすると火星衛星のサンプルリターンによってこうした仮説を検証できるかもしれません。

月の噴火活動の起きた年代が分かったのはクレーターの数密度を利用した推定方法に寄ります。この方法をクレーター年代学と呼びますが、この手法で得られる結果はあくまで一つの推定結果です。
地球のようにあらゆる場所から岩石試料を得られればその場所の形成年代が良い確度でわかりますが、地球以外の天体の場合はあらゆる場所から岩石試料を持ち帰ることが現実難しいので、クレーター年代学のような推定方法が使われています。

どの惑星の衛星も同期回転しているのは、衛星の出来方に共通的なものがあるのでしょうか? (Oさん・男性・57歳)

多くの衛星の自転公転周期が一致していることが分かっていますが、主惑星との潮汐相互作用によるものでこの作用は大なり小なり共通してどの惑星-衛星系にあることが関係していると思います。

光条クレーターから月の二面性問題の解決に対するヒントはあるのでしょうか?(Yさん・男性・57歳)

二面性問題を何と設定するかに寄りますが、月には表裏があり同じ表面を地球側に向けていることをさすならば、光条クレーターの空間分布を用いることによって一体いつから月の表面を地球に向け続けているのか推定することが可能する。こうした研究はすでにいくつかされており、光条クレーターが消失する時間スケールの中では(例えば現在から10億年前の間)すでに表面が地球側に向いていたことが分かっています。

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