プラネタリウム

第94回 隕石が語る太陽系の衝突進化史

宇宙からやってくる隕石には太陽系内の様々な現象の記録が残っています。この記録を丁寧に読み解くことで、太陽系の進化が解き明かされていきます。太陽系の固体物質は衝突を繰り返すことで進化してき、現在も継続しています。隕石の落下もまた衝突現象の一つです。特に40億年前には、太陽系内で大規模な衝突現象(後期重爆撃)があったと考えられており、その記録は隕石から読み解くことができるのです。 講演では、隕石研究を概説するとともに、太陽系内での衝突現象についてお話しました。

概要

日時

平成29年12月16日(土曜日)午後7時~午後8時30分

講師

新原 隆史(にいはら たかふみ)氏
東京大学 総合研究博物館 特任助教

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  1. 隕石の分類
  2. 隕石研究の現場
  3. 展示隕石解説(休憩)
  4. 太陽系内での衝突現象
  5. 質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

隕石を薄くけずる事で成分や情報が失われてしまう事はないのか?(非破壊で分析できないのか?)  (Sさん・男性・53歳)

隕石の薄片を作るときに、当然失われてしまう情報もあります。 隕石の表面は、大気突入時に溶融したフュージョンクラストでおおわれていますので、隕石の内部を知るために、必ず1度は切断もしくは破砕しなくてはいけません。 隕石試料の破壊を最小限にするために、綿密な研究計画が立てられており、試料の一部は将来の分析のために保管されております。

(1)すい星から来たものの物質が地球近くのものと同じでおどろいたというのはどうしてか? (2)NASAの隕石を調べる部屋は酸素がうすい(ちっそが多い)というのは隕石自体はBOX等に入っていないのですか? (Bさん・女性・40歳)

(1)スターダスト計画によりヴィルト第2彗星から採取された粒子を構成する主要な鉱物は輝石やカンラン石であり、それらの組成幅は幅広いものでした。さらに、炭素質コンドライトに見られる、カルシウムやアルミニウムに富む超難揮発性の包有物(CAI)と同様の物質も存在していました。これらの物質は太陽近傍の高温領域でしか形成しえないため、太陽系の縁辺部であるカイパーベルトからやってきた彗星にこのような物質が含まれていたことが非常に驚きでした。このことは初期太陽系で太陽近くにあった物質が太陽系縁辺部まで輸送されるような大規模な物質移動があった証拠であると考えられています。

(2)隕石を調べる部屋ではなくアポロ岩石を保管している部屋になります。本来は真空中で保管するのが望ましいのですが、一つ一つを真空の箱に入れて保管をするのは大変です。また、作業中も地球の空気にふれて酸化してしまうこともあるため、不活性の窒素を多くして、できるだけ、月面や宇宙の情報を失わないようにしています。

(1)現在、どのくらいの大きさの隕石は望遠鏡で観測できるのか? (2)現在、宇宙の成り立ちを隕石から研究されているが、逆に宇宙の消滅(宇宙の将来)を予測できるのではないだろうか? (3)私も37年前?火球が大地を水平に横切るのを見たことがあるが、あれも隕石だったのだろうか?夜だったので、火球が良く見えました。 (4)隕石は他の天体にぶつからなければ、永遠に飛び回るのでしょうか? (Tさん・男性・57歳)

(1)申し訳ありません、実際にどのくらいの大きさまで捕捉できるかはわかりません。
参考サイトThe International Astronomical Union『Minor Planet Center』(外部サイトが別ウィンドウで開きます)

(2)どのような進化をしてきたのかがわかれば、太陽系の天体が今後どうなるのかが予測できるかもしれません。進化過程もまだまだ分からないことがいっぱいです。隕石研究だけではなく、天文学、惑星探査など多くの分野の研究が進むと、徐々に将来の姿も見えてくるかもしれません。

(3)ご覧になったものが隕石であるかはわかりませんが、多くの流れ星は大気中で燃え尽きてしまいます。そのうち落下したものが隕石となりますが、回収できるのはわずかしかありません。

(4)すべての小惑星が地球や他の天体にぶつかるわけではありません。 軌道を回り続けるものもありますし、小惑星同士がぶつかって軌道が変わることもあるでしょう。

(1)現在、隕石の元になる天体はどれ位の大きさの天体がどの様に分布・移動しているのでしょうか? (2)地球への衝突する隕石はどれくらいの速度の分布になるのでしょう。また衝突する角度によって影響がどの様に変わるのでしょうか? (3)SF映画で隕石衝突後に研究者が放射能防護服を着ているのを良く見ますが、その様な危険性があるのでしょうか? (4)隕石を研究者・研究機関同士でどう分け合っているのですか? (Nさん・男性・40歳)

(1)小惑星自体は火星と木星の間に多くありますが(メインベルト)、隕石として地球へ落下する天体の多くは地球近傍にある小惑星です。参考サイトThe International Astronomical Union『Minor Planet Center』(外部サイトが別ウィンドウで開きます)

(2)およそ20キロメートル/秒くらいだといわれています。大気への入射角度によっては、大気によってはじき返されたり、大気への突入後の減速状況が変わります。ただし、突入してくる天体の大きさや物質によっても影響の程度は変わります。

(3)ケースバイケースです。地球の岩石と反応して有毒ガスが発生した例もあります。

(4)研究プランを提案し、それを基に審査が行われます。認められた場合必要な量が配分されます。
必要以上に隕石を消費しすぎないように注意して配分量は決められています。

(1)太陽系全体の物質の割合としては、鉄と石のどちらがどのくらい含まれているのでしょうか? (2)隕石の"隕"とはどのような意味でしょうか? (3)鉄隕石は絶対に分化でしかできないのか。球状の組織は持ちえないのか気になった。 (?さん・?男性・21歳)

(1)太陽系の中では鉄は非常に多い元素です。それが金属なのか、岩石にイオンとして入っているのかは天体の形成過程によります。
太陽系全体では、質量の99%以上が太陽にあるため、鉄もまた太陽が一番多いと考えられます。

(2)"隕"という字は、"落ちる"という意味があるようです。

(3)鉄隕石に含まれるウィッドマン・シュテッテン構造はゆっくりとした冷却でできると考えており、このような冷却ができるのが、分化した天体の内部であると考えられています。未分化の隕石には小さいですが、金属がコンドリュールのように丸みを帯びているものも観察されていますが、このようなものにウィッドマン・シュテッテン構造は見られません。

(1)ALH84001が火星由来のものだと特定した理由は何ですか? (2)普通コンドライトの中で、LLコンドライトが、LやHコンドライトと比較して多いのは、どのような理由がありますか? (3)バリンジャークレーターがこれまで浸食を受けずに残っている理由を教えてください。 (Tさん・男性・54歳)

(1)詳細な鉱物組成や酸素同位体の分析が行われ、ほかの隕石との対比を行い火星起源であるとされています。

(2)LLコンドライトはこれまでに見つかっているLLコンドライトの中では一番少ない隕石です。H、Lがそれぞれ2万個近くありますが、LLコンドライトは7千個ほどです。ただし、南極や砂漠では落下してから時間がたった後に発見されているもので、もともと1つでも細かく割れて散らばってしまうと、同じ隕石の破片なのか、異なる隕石なのかの判定は非常に難しいため、この数の違いが何を表しているのかはわかりません。

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