プラネタリウム
第118回 郷土と天文の博物館のプラネタリウム誕生をふりかえる~プラネタリウム100周年に寄せて~
1923年10月、ドイツで近代的な光学式プラネタリウムが初めて公開されました。プラネタリウムが誕生してから100年を迎え、世界でそして日本各地で、節目を祝う会やプラネタリウムに注目したイベントが行われています。
葛飾区郷土と天文の博物館は1991年7月に開館しました。当時、どのような想いでプラネタリウムの設置が行われたのでしょうか。2名の講師より、当館のプラネタリウムの誕生を振り返りながら、天文シミュレーション装置である「プラネタリウム」とその魅力について、講演と対談形式で語っていただきました。
※本講演は、日本プラネタリウム協議会(JPA)プラネタリウム100周年記念事業https://100.planetarium.jp/公認企画として実施しました。
(講師からのメッセージ)
鳫 宏道(がん・ひろみち)氏 より
天文学や宇宙を学ぶために葛飾区は、博物館に当時は珍しい天文台や太陽望遠鏡などの施設と共に、プラネタリウムを入れて天文の世界を区民の方々に広く学んでいただく場とされました。開館から現在までの充実した活躍ぶりはすばらしいことです。さらに最新の天文学の成果が盛り込まれたプラネタリウムへと、進化した姿を拝見しました。今日はその機能の一部もご紹介させていただき、宇宙を駆ける醍醐味をみなさんと味わうひと時としたいと思います。
伊東 昌市(いとう・しょういち)氏 より
<葛飾区郷土と天文の博物館誕生への思いをふり返る>
私はプラネタリウムの仕事にかかわるようになってから、プラネタリウムは何ができるのか?をテーマにプラネタリウムの歴史や機能、そして可能性について調べてきました。そして世界中のプラネタリウムを見たり、担当者と話を重ねてきました。そのような経験の中から、世界的にみても決してひけをとらない設備を備えたプラネタリウムを建設しようと考えました。実際の宇宙の姿→モデルとしてのプラネタリウム→実際の宇宙の姿、この循環によって宇宙への理解を進めるというものでした。そしてできるだけ多くの葛飾区民の方々に宇宙への興味をもっていただけるようなプラネタリウムを創るという目標でした。国内他館での展示の調査では、とんでもない展示も見たりしました。
概要
日時
令和6年2月24日(土曜日)午後6時30分~午後8時30分
講師
鳫 宏道(がん・ひろみち)氏
星槎大学 元平塚市博物館学芸員
元当館運営協議会委員
伊東 昌市(いとう・しょういち)氏
天文・宇宙解説者
プラネタリウム・コンサルタント
元国立天文台専門研究職員(科学文化形成ユニット総括)
当館運営協議会副会長
講演プログラム(当日配布したレジュメより)
はじめに
(趣旨説明、講師紹介)
講演①
(鳫 宏道氏)約40分
~小休止(5分間)~
講演②
(伊東 昌市氏)約25分
~小休止(5分間)~
対談
「郷土と天文の博物館のプラネタリウム誕生をふりかえる」
(鳫 宏道氏×伊東 昌市氏)約30分
クロージング(まとめ)
講演詳細(要旨)
講演①
(演題)
- 「プラネタリウムの進化と葛飾のプラネタリウムの歩みに寄り添って」
(レジュメ)
- 博物館の天文担当学芸員の仕事
特別展示、調査・資料収集、プラネタリウムの運営、天文教育普及行事、館の情報システムの電子化・・・ - 葛飾区からの依頼
博物館にプラネタリウムを併設したいので、ついては天文分野の設備、役割、専門職の配置などご意見を - 葛飾区のプラネタリウムの特徴
18m傾斜スクリーンを持ち、マルチプロジェクションと全天周映像装置、アナライザーを併設した世界的に見ても最先端の機能を持つ設備 - プラネタリウムを持つことの意味
若い世代は今や宇宙を活動の場にして生きる時代。これからどこへ歩もうとしていくのか、自分たちの立ち位置を認識できる場所。 - プラネタリウムはメディア
生かそう、宇宙メディアを。博物館・プラネタリウムは皆さんの温故知新の活動の場でもあります。
講演②
(お話の内容)
- 現代のプラネタリウムで扱う内容は、星空をテーマに扱うだけではなく、宇宙全体へと広がっています。地球科学や生物学を含めて宇宙の不思議や脅威を扱う巨大なキャンバスへと進化しているのです。今や人類は、宇宙がどのように誕生したのか?どのような歴史をたどってきたのか?その大枠(パラダイム)を語ることが出来るようになりました。
デジタルプラネタリウムのエンジンの一つであるMitakaを使って宇宙を俯瞰してみましょう。ダークエネルギー、ダークマターあるいは地球外生命体の探査によって、新たな世界観が生まれようとしています。
対談
(対談の話題)
- ドーム径18mと傾斜15度になった経緯
- オープンに向けて準備時(80年代)にこだわったこと
- 天文シミュレーション装置である「プラネタリウム」の魅力と未来