プラネタリウム
第126回 未知の流星雨を求めて 流星群の予報研究の最前線
流星群予報研究の第一人者である講師より、
(講師からのメッセージ)
流星は、とても身近な天文現象ですが、30年前までは流星雨の予
概要
日時
令和8年2月7日(土曜日)午後7時~午後8時30分
講師
佐藤 幹哉(さとう・みきや)氏
国立天文台 天文情報センター 普及室
講演プログラム(当日配布したレジュメより)
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流星(流れ星)とは
・光っているもの・場所・性質
・流星と彗星(ほうき星)の関係 -
流星群とは
・流星群の発見
・放射点と流星群の名称 -
流星群を予報する
・過去の流星群予報
・ダスト・トレイルモデルの適用 -
未知の流星雨を求めて
・ヘルクレス座τ(タウ)流星群の予報と観測 -
将来の流星群・流星雨
・今年見られる流星群
・将来の流星雨予報
質疑応答
聴講者からの質問と講師回答
- 流れ星が小さいのに地球から明るくよく見えるのはなぜでしょうか?(Sさん、38歳・大人/女性)
一つの理由は、圧倒的に速いスピードを持っているからです。
平均しても秒速30kmくらいの速度で地球に飛び込んできます。 葛飾区から国立天文台のある三鷹まで、わずか1秒で進む程の速さ です。速度が速いと、そのエネルギーは膨大になるのです。 もう一つの理由は、光り方の効率の良さがあります。流星は、 大気と反応することで高熱になりますが、 その熱によって光っているわけではありません。 流星体に含まれる物質や、衝突する空気が反応し、 それぞれがいわゆるプラズマ発光という仕組みで光りを放つのです 。この仕組みによって、 流星のような小さなものでも非常に明るい光を出すことができるた め、およそ100kmも離れた地上でも、 流れ星の光を目にすることができるのです。
- 流星群の放射点は天球の全体にちらばっているのでしょうか?特定の領域(平面状?)にあるものでしょうか?(Fさん、大人/男性)
一般的には、ちらばっていると考えていただいて構いません。
ただし、太陽系では、惑星は地球の軌道面(黄道面) とほとんど同じ平面で回っており、流星の元となる彗星や小惑星、 またそこから飛び出してきた流星体も、 その平面に近い軌道を描いています。このため、 地球から見たときに、黄道(太陽の通り道) の平面に沿った部分には、放射点分布もやや濃くなっています。 しかしながら、 全く無関係な軌道の流星群もたくさん存在していますので、 多くの部分ではちらばっているとお考えください。
- 流星の速度に差があるのはなぜでしょうか?地球の公転速度以外に要因はありますか?(Uさん、60代・大人)
一つには、飛び込んでくる流星体の速度に差がありますので、その影響があります。もっと大きく影響するのは、地球に飛び込んでくる方向です。地球は、秒速30kmほどで太陽の回りを公転しているわけですが、正面から衝突するように飛び込んでくる場合、地球上で観測する速度は両方の速度を足したような形になり、秒速70km以上にも達します。一方で地球を追い越すように後ろから飛び込んでくる場合には、その差となり、例えば秒速10km程度のこともあります。横から衝突する場合、斜めから衝突する場合など、いわゆるベクトルの合成で計算されますので、色々な速度の流星が存在します。
なお、同じ流星群の中に限れば、その流星は、ほとんどが同じ速度で同じ方向から飛び込んできますから、その速度もほとんど変わらないことになります。
- 流星群と流星雨は同じですか?名称に違いはありますか?(Sさん、女性)
流星群は、英語では「Meteor Shower」(流星の雨)と言います。このため、
特に古い資料などでは翻訳した用語として「流星雨」が「流星群」 と同じ意味で使われていたのです。現在では、 いわゆる流星のグループを「流星群」、 流星がたくさん流れること(1時間におよそ100個以上)を「 流星雨」と呼んで区別しています。古い本を読むときには「 流星雨」が「流星群」の意味で使われているので、 注意してください。
- 未確定(?)の流星群が900種ほどあると教えていただきましたが、確定にならない理由は何故ですか?分析が難しいからですか?(Bさん、31歳・地球人)
流星群の場合、まとまった出現が一度観測されて、論文やCBET
(国際天文学連合の速報)などに報告されると「 ワーキングリスト」に登録されます。その数がおよそ900個にの ぼっているのです。その後に、 年をまたいで何度か観察されたりすると、 これは確実に存在する流星群だと判断されて「確定流星群」 として登録されます。また、母天体( 流星体を放出している彗星や小惑星) がはっきりしている場合などは、あまり多くない出現記録でも「 確定流星群」になる場合があります。ただし、 確定流星群の基準自体はまだ曖昧で、 研究者の間でも議論が続いているところです。 また確定流星群からワーキングリストに格下げになったりすること もあり、流動的な一面もあります。
- 流星と衛星がぶつかることはないのでしょうか?(Iさん、30代・女性)
流れ星となるチリが、宇宙ステーションや衛星などに当たってしまうことはないのでしょうか?(Yさん、40代・地球人/女性) 多くはありませんが、当たることがあります。人工衛星は流星が光っている領域よりも高いところを回っていますので、ぶつかるのは光る前の流星体の状態です。ただし、流星がたくさん出現する流星群の極大でも、その密度は意外に小さく、とても希薄(きはく)なのです。私たちが思っているほどにはぶつからないのでご安心ください。かつて2001年のしし座流星群の流星嵐などが予想されているときには、流星体が飛び込んでくる方向に対して、人工衛星の面積が小さくなるようにして、なるべく衝突しないように姿勢を変えたことがあります。現在は、とてもたくさんの人工衛星が回っていますので、これまで以上に流星体と衝突する事例、例えば当たって故障するような場合が出てくるかもしれません。
国際宇宙ステーションの場合は、外側の壁が多層構造になっていて、表面に衝突してもそこで流星体が砕けて、内側の壁までは影響しづらい構造になっているそうです。ただし、むき出しになっているロボットアームに小さな穴が空いていたことがあり、流星体がぶつかったのではないか、と考えられています。
- 「個体が大気圏に突入した際に光るものが流星」であるなら、探査機はやぶさの帰還カプセルも流星ですか?(Aさん、56歳・大人/男性)
流星については、流星となる元の物質(流星体)が宇宙に由来する、つまり天然物であるという定義があるのです。このため帰還カプセルは、残念ながら定義上は流星ではありません。「人工流星」という言い方をしています。ただし、火球(ある一定以上明るい流星)には、由来についての定義は記述されていません。人工天体の再突入なども「火球」と呼ぶので、混同しないように注意深く言葉を使い分けようと思っているところです。
ちなみに、はやぶさの帰還カプセルの時には、私は、流星の発光の仕組みの解析に役立てたいと思い、自分たちの観測データを分析して、その発光の効率を研究論文にまとめました。帰還カプセルは、大きさや質量、さらに材質もわかっているという、普段の流星ではあり得ないとても貴重な「人工流星」として観測されたのです。
- 2037年しし座流星群、ぜひ見に行きたいです。せっかくなので東京ではなく、「良好な観測地」へ行ってみたいです。車で行ける範囲で観測によい場所や、お勧めのポイント地を教えていただきたいです。(Nさん、40代・大人)
流星や星空を都内でみるならここという場所があれば教えて欲しいです。葛飾区内にはありますか?関東近辺のいい場所、日本でここは良いと思う場所も教えて欲しいです。(昨年末のふたご座流星群は、野島崎に行きましたが、見事雨に降られました(笑))(Hさん、57歳・大人) 暗い場所を探すのは難しいですね。関東平野は平らなので、どこまで行っても東京方面の街明かりが邪魔をして、なかなか良い空に出会えません。まずはひと山越えて関東平野から離れるだけで、比較的暗い空になります。福島県とか新潟県とか山梨県などです。夜間にも入れる公共の駐車場などを利用する人が多いようです。私は東京の西部に住んでいるので、山梨県に出かけることが多いのですが、東京方面の空は明るいですし、富士山の周辺でも少しずつ街明かりが増えて、夜空が明るくなってきたように感じます。
都内の暗い場所を探すのも、かなり難しくなりました。墓地などは暗いのですが、入れませんしね。以前は街灯の少ない河川敷など、見渡しもよく適していたのですが、近年は高くそびえるようなマンションが並んだりして、なかなか難しいです。公園などで街灯の少ない場所を探してみて下さい。
ただし、暗い場所は危険も伴います。複数の方と観察するなど、安全の確保にはくれぐれも注意してください。
- 流星とすい星のちがいが知りたいです。(Mさん、12歳・子ども)
彗星(すいせい)は、氷とチリが固まった天体です。地球などの惑星とくらべるととても小さな天体なのですが、それでも数百メートルから数キロメートルの大きさがあります。この天体が太陽に近づくにつれて、ガスやチリを放出して、ぼんやり見えたり、時には尾と呼ばれるたなびいた様子を見せたりします。
流星は、地上から観察すると派手に光って見えますが、その正体(流星体)は1ミリから数センチ程度の小さな砂粒のようなものです。したがって、大きさや光るしくみなどが違うのです。
しかしながら、流星の元(流星体)の多くは、彗星に含まれていたチリなので、彗星は流星の親のような天体とも表現され、流星群の元のチリ(流星体)を出した天体のことを「母天体(ぼてんたい)」とか「母彗星(ぼすいせい)」と呼んでいます。ただし、親子というよりは、私は人間で例えるなら彗星が「人間の体」で、流星は「フケ」のようなものだと思っています。だいぶ違いますよね。
- 流星の元となる彗星は、どうやって生まれるのですか?(Yさん、40代・地球人)
彗星は氷にチリが混じった天体です。
氷の成分の多くは水の氷ですが、 二酸化炭素や一酸化炭素の氷も含まれます。 これらは温かいところではガスとして存在しています。 それらを作る素材(元素)の中で、 水素はかなり早い時期から宇宙にありましたが、 炭素や酸素の元は星(恒星)で、 星の一生の終わりに放出したガスなどに含まれます。 このガスはやがて何らかのきっかけで集まり始め、 宇宙空間の星間ガスとなります。その中で化学反応が起こり、 水や二酸化炭素などができると考えられています。 これらは低温ではチリを伴って氷となり、 それらが長い年月をかけてくっついて、 彗星のような天体となると考えられます。
- 彗星はどこから来るのですか?(Mさん、50代・大人)
太陽系内の彗星の起源は大まかに二つの領域があります。一つは太陽系の最も遠い惑星である海王星の軌道のすぐ外側から広がっている「エッジワース・カイパーベルト」です。ここには彗星のような氷でできているだろうと考えられる小天体(太陽系外縁天体)がたくさん見つかっています。この天体が、海王星の引力や、さらに木星の引力などで太陽系の内部へと入り込む軌道になることがあり、太陽に近づくことでガスやチリを出して「彗星」として観測されるようになります。
もう一つは、太陽系のかなり外側を球状に取り巻く「オールトの雲」という領域があって、ここから彗星がやってくるというものです。実際、彗星の軌道では、細長い楕円軌道や放物線の軌道を描いて、太陽系の果てからやってくるもの(そして太陽系の果てへと帰って行くもの)が多数発見されているからです。ただし、オールトの雲にある彗星のような天体がどのようにして出来たかはまだ議論の最中です。一説では、太陽系の比較的内部にあった氷の天体たちが、太陽系の形成初期に、海王星などの惑星の引力で外側へと飛ばされたものだという説もあります。彗星の起源の研究は、初期の太陽系を知る上で重要なことなのです。
- 流星の時速はどのくらいですか?(Yさん、40代・地球人)
秒速でおよそ10~70kmですので、時速に直すと、
遅いものでも時速3万~4万km、速いものでは時速25万kmに もなります。猛烈な速さです。
- 2037年ししざりゅうせいぐん、見に行きたいです。ほかのながれかたや、ながれ星のふりかたがちがうことはありますか?(流れ星が途中で曲がったり、向きを変えたりすることはありますか?(保護者様の補足))(A.Sさん、7歳・子ども)
同じ流星群の場合には、放射点(ほうしゃてん)から離れていくように流れていく様子は変わりません。ただし、流れる位置によって、長く流れる流星や短く流れる流星があったり、明るい流星では途中で爆発したように急に明るくなって見えたりすることもあります。2037年のしし座流星群では、いつもより多くの流れ星が見えますから、その様子がよくわかると思います。楽しみに待っていてください。
流れ星が途中で曲がったり、向きを変えたりすることはありませんが、明るい流れ星が途中で急に明るくなって、その後で二つに分かれて見えたりすることはあります。また、私は、大きな明るい流れ星から小さい流れ星が飛び出すように分かれたのを見たことがあります。よく流れ星を見ていると、不思議な様子が見えることもあるので、ぜひじっくりと観察してみてください。
- 地球の外側(例えばISS)から流星を見ることはあるのでしょうか?(Oさん、60代・地球人)
はい、あります。ISS(国際宇宙ステーション)は地上およそ4
00km上空を回っています。流星が光るのは100kmほど上空 ですので、ISSから見ると、地上側、 つまり下側に光って見えます。2011年の10月りゅう座流星群 では、ISSから動画で流星が撮影されましたし、近年も、 ふたご座流星群などの流星が撮影されています。 また専用の人工衛星から流星を撮影する研究もされています。 地上からの観測では、空気があることによって( 流星が放つであろう)紫外線などが邪魔されて、 届かない場合があるのですが、 宇宙からの撮影では空気の影響がないので、 新しい分析ができるのではないかと期待されます。
- ダストトレイルのタイミングと地球の通り道が合えば流星が見られるのはわかりましたが、トレイルが通過よりも早いと見えないのがよくわかりませんでした。たとえば、地球がまだ8月の場所にいる時に、11月に通過予定のところにトレイルがあるということでしょうか?(Bさん、50代・大人/女性)
説明が上手にできず失礼しました。ダスト・トレイルの位置は日々動いていまして、地球軌道と交差している期間もあれば遠のいている期間もあります。1972年の10月りゅう座流星群(ジャコビニ流星群)の場合は、その年の8月には、ダスト・トレイルが地球軌道と交わっていました。ただし、その場所を地球が通過するのは10月なので、8月の地球は軌道上の別の場所にいたわけです。約2カ月が経って10月に地球をそこが通過するときには、ダスト・トレイルの位置が変化してしまって、地球軌道から離れたところに存在していたため、ダスト・トレイル、すなわちチリ(流星体)の流れに地球が入ることがなかった、ということです。
- まだ発見されていない未知の彗星が現れたら、必ず流星が流れるのでしょうか?(Sさん、70代・大人/男性)
残念ながらほとんどの場合は、流星は流れません。新しい彗星が現れたといっても、地球軌道とぶつかるような軌道を持つものは、とても少ないからです。また地球軌道とぶつかるような軌道でも、彗星の最初の出現時には、流星の元となる大きさのチリ(流星体)は、彗星のごく近くにしか存在しません。一度太陽から遠ざかり、一回りしてもう一度彗星が近づいた場合には、ダスト・トレイルを伴っています。これが運良く地球軌道と交差する場合には、流星群となって見られる可能性もある、ということになります。流星群の方が先に見つかり、やがてそのチリを放出した彗星(母彗星)が発見される、ということはあり得ます。
- 流星の予想家は世界で4人(?)と言っていましたが、予想屋の定義は何ですか?(Y.Mさん、50代・男性)
予想屋や予想家という言い方は正しくなかったかもしれません。科学的根拠に基づいて、流星群の出現数や出現規模を研究している「流星群予報の研究家」という意味です。科学の世界では、論文にまとめて発表するなど、自分の研究を他の人も吟味できるような状況にして公表する必要があります。このような形で流星群予報の研究をしている人たちは、世界でも非常に数が少ないのが現状なのです。単なる予想をしている人、という意味ではありません。誤解のある表現をしてしまい、申し訳ありません。
- 薬学部をご卒業され、天文の世界に入られた経緯に興味があります。(Aさん、50代・大人)
もともと天文学には幼少の頃から興味を持っていましたが、仕事という点では、病気を治すための薬を開発したいという思いがあり、実際に製薬メーカーで医薬品開発に従事していました。その途中で自分が病気になってしまい、働けない期間があったのですが、この時にコツコツとおこなっていた趣味としての流星の研究が実って、論文として発表できるレベルになったのです。このことがきっかけで、やがて国立天文台と縁ができた結果、仕事として天文の世界で勤務するようになりました。
実は、薬学部時代の研究手法が、今の研究手法に役立っている面もあり、自分でも興味深く感じています。
- 流星群の研究を始めたきっかけは何ですか?(Tさん、50代・大人)
先生が研究を始められたきっかけは何ですか?(Pさん、40代・大人/男性) いくつかあるのですが、今回お話しました1972年の10月りゅう座流星群(ジャコビニ流星群)が期待通りには流れなかった、という読み物を読んで、不思議に思ったのがきっかけです。また逆に、1985年10月、多分流れないという予想がある中、この流星群が流れる様子を自分で目撃できたことも影響しました。予想できないものがあるなら、予想してみたいと思ったのです。
また、1998年6月に、6月うしかい座流星群が約70年ぶりに日本で出現しました。私はその夜、たまたま天体の観察をしに富士山に出かけていたのですが、誰も事前に予想していなかったこともあり、曇り空の下で移動することもなく一晩を過ごしてしまい、この様子を見られなかったのです。そのことが悔しくて、誰も予想してくれないのならば「自分で予想すれば良い」と思うようになり、そしていつしか「研究してみたい」となったのです。この悔しかった思いは、今でも研究の推進力になっていると思います。
- 国立天文台に戻られた理由は?(Yさん、40代・地球人)
私は非常勤の職員なのですが、非常勤には5年を超えて勤務するの
が難しいという慣例がありました。前回、 国立天文台で勤務したときには、 何か職務の途中で退職することになった印象を持っていました。 もちろん、その後の職場では、 とても充実した勤務内容だったのですが、 たまたま仕事を辞めてフリーの立場で働いていた頃に、 前回と同じ職場・職種での募集があったので、応募したところ、 採用されたのです。前回はできなかった職務もすることができ、 現在に至っています。(2026年3月回答)
