プラネタリウム

第127回 高精度位置天文観測で挑む天の川銀河の謎 ~赤外線位置天文観測衛星計画JASMINE(ジャスミン)の歩みと今後~

「位置天文観測」とは、星の位置や距離、運動を精密に測定し、天文学で最も基礎となる空間情報を得る観測です。位置天文観測を行うことでどのような宇宙の謎解きが期待されているのでしょうか。位置天文観測衛星計画JASMINEジャスミン)のプロジェクト長を長年務められた郷田先生に、衛星計画の歩みをおはなしいただきました。

(講師からのメッセージ)
宇宙全体の謎を解くためには、一番身近な天の川銀河に関して、その構造・歴史や銀河内の巨大ブラックホール等の謎を解くことが重要です。本講演では、謎を解く有力な手段の一つである位置天文観測の説明とともに、位置天文観測でどういった謎が解き明かされていくのか、また日本で推進している位置天文観測衛星計画JASMINEの概要、計画の歩みと今後を紹介します。

概要

日時

令和8年321(土曜日)午後7時~午後8時30分

講師

郷田 直輝ごうだ・なおてる)氏
国立天文台 JASMINEプロジェクト 教授

講演プログラム(当日配布したレジュメより)

  1. はじめに
     ・解きたい究極の謎とは?

  2. いままで、宇宙のどういうことが分かってきたか?
     ・どういう謎が残っているか?

  3. 天の川銀河探究

  4. 位置天文観測による謎解き
     ・位置天文観測とは?
     ・位置天文観測の歴史
     ・位置天文観測衛星ガイア(Gaia)の成果

  5. 赤外線位置天文観測衛星JASMINE(ジャスミン)
     ・JASMINEとは?
     ・JASMINEの誕生と歩み
     ・JASMINEへの期待

  6. おわりに

質疑応答

聴講者からの質問と講師回答

JASMINEの名前の由来を知りたいです。(Sさん、30代)

JASMINEは、Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration の略称です。日本の「赤外線探査による位置天文観測衛星ミッション」という意味になります。名称は2001年頃、プロジェクト名のネーミングに長けた東大の先生にお願いして付けていただきました。国内外の方にも覚えてもらいやすい名称として、好評を得ています。

JASMINEとGaiaの観測方式が異なるとのことですが、どんな違いがありますか?(S.Sさん、30代)

Gaia(および先行するヒッパルコス衛星)は、大きく離れた2つの視野を同時に観測し、衛星の自転・歳差運動によって連続的に撮像を行いながら、時間とともに観測範囲を広げ、最終的に全天を観測します。一方、現在のJASMINEは、天の川銀河の中心方向の限られた狭い領域を集中的に観測する方式です。視野は基本的に1つで、ある程度撮像したら視野を半視野程度ずらし、同じ手順を繰り返して観測領域を覆っていきます。
Gaia方式は全天を観測するため、星の位置・年周視差・固有運動の絶対値を求められます。一方、JASMINE方式は狭い領域の集中観測に適していますが、単独では位置・年周視差・固有運動の絶対値は得にくく、基準星に対する相対値が中心になります。そこで、GaiaJASMINEの両方で観測される共通星を利用して、JASMINEの相対値を絶対値へ結び付けます。
JASMINEGaia方式をとらないのは、JASMINEの望遠鏡は、Gaiaよりずっと小さいので全天観測を限られた観測期間では困難であること、あと、Gaiaの可視光観測で用いているCCDカメラとは違って、赤外線のカメラでは星像を歪ませずに連続撮像することができないがためです。むしろ、可視光では観測困難な天の川の中心方向さえ観測すればいいので、小型の望遠鏡で、現在の赤外線カメラでも大丈夫なのです。なお、超小型衛星Nano-JASMINEは、(計画上は)Gaiaと同様の方式で全天観測を目指していた経緯があります。Nano-JASMINEというよりは、むしろ、Nano-Gaiaと呼んだ方がふさわしかったです。

Gaiaに対してJASMINEが進歩している点はどこでしょうか?精度などですか? (S.Tさん、70代)

JASMINEGaiaに対して大きく優位な点は、Gaia可視光観測であるのに対し、JASMINEは赤外線で観測することです。 天の川銀河の中心付近(天の川面、とくに中心方向)は星が非常に密集していますが、同時に星間の塵(ダスト)も多く、可視光は塵で遮られやすいため、Gaiaでは中心領域まで高精度で測れないです。赤外線は可視光より塵の影響を受けにくいため、JASMINE中心領域の星をより高精度で多く測れることが期待されています。

中心核楕円構造の前半分の「5万個の観測予定の恒星」に、どんな天体が含まれると有意義ですか?(Y.Tさん、女性)

講演ではJASMINEが提供できる科学データの詳細を十分にお話しできず、失礼しました。ここでは要点のみ簡潔に説明します。

JASMINEが位置天文観測を行う天の川銀河中心方向では、衛星と地上局の通信量制限のため、現時点では約12万個の恒星に絞ってデータを地上へ降ろす計画です。内訳は次の通りです。
 約7万個:銀河中心まわりの中心核領域(中心核ディスク+その周辺に想定される中心核楕円構造)に属する恒星
 約5万個:その手前にあり、バルジ・棒状構造(バー)・ディスクの一部に属する恒星

1)中心核領域について:
JASMINEは赤外線観測で、かつ比較的明るい星に限られるため、観測対象は赤色巨星などが中心になります。なかでもミラ型変光星は、変光周期と年齢の関係が知られており、周期を測ることで年齢推定に役立つため、中心核の形成史・進化を調べる上で有用です。一方、中心核の力学構造(ダークマター分布や中心巨大ブラックホール進化の理解にも関係)を調べる目的では、「特定の種類の星だけが良い」というより、できるだけ多くの星の距離と運動があるほど有利です。そのため、得られる星の情報を総合的に活用する予定です。加えて、もし中心方向にX線連星が含まれれば、位置天文観測によって連星の伴星の性質などを推定できる可能性があり、X線天文学的にも有用です。

2)手前側(中心核より手前)について:
こちらも多数の星の距離・運動を活用することで、ディスク面の振動、バルジやバー構造の理解が進むと期待されます。

系外惑星について:
JASMINEの位置天文観測(恒星のふらつき)による検出は、精度の観点から太陽系近傍の「木星より重い惑星」などに限られます。 一方、JASMINEは夏・冬に、天の川中心とは別方向を向けてトランジット観測(惑星が恒星の前を通るときの減光)で探査を行う計画で、中期M型星(太陽より1/5程度小さく、暗い赤い星)周りの生命居住可能領域にある地球型惑星を見つけやすい、という特徴があります。

[用語補足]
バルジ/バー:銀河中心付近のふくらみ(バルジ)や、棒状の構造(バー)。
中心核ディスク:銀河中心の周りにある円盤状の星の分布。
トランジット法:惑星が恒星の前を横切るときのわずかな暗くなり方から惑星を推定する方法。

JASMINEの観測結果から太陽の兄弟星(一緒に生まれた星)を見つけられますか?(Sさん、?代)

JASMINEは観測目的が異なるため、太陽の兄弟星を直接探すミッションではありません。ただし、近年のGaiaなどの成果により、太陽に非常によく似た「太陽の双子星」候補が多数見つかってきた、という研究成果があります。詳しくは国立天文台JASMINEプロジェクト関連の公開資料をご参照ください。

[参考]国立天文台JASMINEプロジェクト公開ページ(プレスリリース一覧等)
https://jasmine.nao.ac.jp/release/2026/0313/

系外惑星は既に多く発見されていますが、JASMINEで新たな系外惑星が見つけられるのでしょうか?(S.Tさん、70代)

はい、可能性があります。JASMINEは天の川銀河の中心領域の位置天文観測を行えない夏・冬に、望遠鏡を別方向へ向けてトランジット観測による系外惑星探査を行う計画です。トランジットとは、惑星が恒星の前を通過することで恒星がわずかに暗くなる現象で、その暗くなり方から惑星の存在を推定します。
JASMINEは、とくに中期M型星(太陽より1/5程度小さく、暗い赤い星)周りの生命居住可能領域にある地球型惑星を見つけやすい仕様です。 系外惑星は現在、確認済みだけでも6,000個以上が報告されています(候補はさらに多数あります)。そのうち、生命居住可能領域にあると思われれる惑星は、現時点では70個程度です。さらに、地球のような岩石でできた惑星は、現時点では数十個未満のようです。系外惑星探査の目的は、惑星形成の理解という天文学・物理学的な目的に加え、地球外生命探査という大きな目的もあります。どちらの目的でも「サンプル数を増やす」ことが重要です。JASMINEは他のプロジェクトが不得手とするカテゴリーの星に焦点を当てることで、サンプル拡充に貢献することが期待されます。
候補が見つかれば、JWSTなどの分光観測ができる望遠鏡へ情報提供し、大気成分や生命兆候の手がかりを調べる段階へつなげます。

[用語補足]
生命居住可能領域:表面に液体の水が存在し得る温度条件の範囲(いわゆるハビタブルゾーン)

JASMINEが位置天文観測を春と秋にしかできない理由を教えてください。(Kさん、53歳)

冬は天の川銀河の中心方向に太陽が近く入り、観測が難しくなります。 一方、夏は太陽が中心方向と反対側になるため、中心方向を太陽に邪魔されず「見る」こと自体は可能です。しかし、衛星の望遠鏡やカメラは適切な温度に保つ必要があり、衛星は熱制御を行います。夏に望遠鏡を銀河中心方向へ向けると、JASMINE衛星では「熱を宇宙へ逃がす方向」に太陽が入り、放熱がうまくできなくなって温度制御が適切に出来ずに観測が困難になります。以上の理由から、JASMINEでは冬と夏が中心方向の観測に不利となり、主に春と秋に観測する設計になっています。

JASMINEが民間投資の対象になるのは難しいですか?(Tさん、40代)

JASMINE規模の衛星計画には、多大な予算、マンパワー、多様な技術が必要です。そのため民間単独の投資対象としては規模が大きく、基本的には、やはり国家プロジェクト(公的資金)になると思います。また、JASMINEは科学目的の衛星であり、直接的な商業利益に結び付くものではありません。その点でも、民間が投資動機を持ちにくい可能性があります。

JASMINEの作成にかかる費用はいくらくらいですか?(?さん、?代)

今後、政府へ概算要求を出す段階にあるため、現時点で経費を確定的に申し上げることはできません。ただし、JASMINEが採択されたJAXA宇宙科学研究所の「公募型小型衛星」カテゴリーでは、当初は(打上げロケット費用や衛星運用経費を含め)150億円規模が想定されており、JASMINEもその条件を前提に検討してきました。しかしながら、近年の物価高や情勢変化により、実際にはそれ以上になる見込みです。

太陽系の位置が内側から外側に動いているという話でしたが、全ての天体が同じように動くのですか?外側から内側へ動く天体もありますか?ダークマター分布は関係しますか?JASMINEで分かりますか?( H.Mさん、52歳)

まず、恒星の「銀河中心からの半径」が変化していく主因としては、半径15千光年程度に及ぶ棒状構造(バー)や、ディスク上の渦状腕など、非軸対称な構造による力学的影響が重要です。ここでは「ダークマターがある/ない」が直接の原因というより、回転しても形を変えない軸対称ではない構造が存在し、その構造が回転していることが、半径方向の移動を引き起こす要因になります。その結果、もともと内側にあった星が外側へ移動する場合もありますが、すべての星が同じように動くわけではありません。星が生まれた時期や位置・運動、その時期以降のバーの状態などに依存します。外側から内側へ移動する星も起こり得ます。
ではJASMINEとどう関係するか、ですが、太陽の移動を含むこうした現象の鍵はバーの物理状態であり、とくに「バーがいつ形成されたか」が重要な手がかりの一つです。JASMINEが観測する天の川銀河の中心核領域にある中心核ディスクは、数値シミュレーションから「バー形成後まもなく形成されやすい」ことが示唆されています。したがって、中心核ディスクの年齢が分かれば、バー形成時期の推定につながります。JASMINEの位置天文情報(距離や運動)により、中心核ディスクにあるミラ型変光星を選別し、その周期から年齢を推定し、年齢分布を導きます。そこから、最も古いミラ型変光星の年齢を中心核ディスク形成時期の目安とみなし、バー形成時期の推定へつなげる、という考え方です。
ちなみに、このように書くと、わざわざ中心核ディスクの星を使わなくても、まさにバーにある星の年齢を調べて、一番古い星の年齢を出した方が直接的と思われるかもしれません。でも、これは駄目なのです。というのも、バーを構成する星は、特に古い星は、もともとはディスク上にあった可能性が高いです。つまり、バーで一番古い星は、バーができる前にディスクでできたのであって、バーができた時期とは無関係な可能性が高いです。

[用語補足]
非軸対称:回転しても形が変わらない、つまり軸対称ではなく、棒状や腕のように方向性をもつ構造。
ミラ型変光星:明るさが大きく周期的に変化する赤色巨星。周期と年齢の関係が利用されます。

太陽が銀河の中心の方から動いてきたというのは、どうやって分かったのですか?( S.Sさん、30代)

手がかりの一つは、太陽の“重元素量(金属量)”です。天文学では水素・ヘリウムより重い元素(炭素、酸素、鉄など)をまとめて「金属」と呼びます。太陽のような恒星はガスが自己重力で集まって生まれるため、その星に含まれる金属量は、もとのガスの金属量を反映します。一般に、銀河の内側ほど星形成が活発で、世代交代(星の誕生と終末)を繰り返すことで金属量が増えやすい傾向があります。一方、太陽系の現在位置の周辺ガスは、銀河内側ほど金属量が高くないとされます。しかし太陽は周囲より金属量が高い側にあるため、「太陽は現在より内側で生まれ、その後外側へ移動したのではないか」という考え方が提案されてきました。
「どうして移動できるのか」は、前問のようにバーなどの力学的影響を数値シミュレーションで検証し、移動が起こり得ることを確かめる、という流れです。さらに近年では、太陽に似た星々も同様の移動を経験した可能性が示唆されています。詳しくは他の質問の回答で記載した国立天文台JASMINEプロジェクトの公開情報をご参照ください。

バルジはなぜXみたいな形になるのですか?重力で引き合うなら球に近づきそうです。(S.Sさん、30代)

バルジのような三軸不等楕円体(3つの軸の長さが異なる楕円体)は、多数の星で構成されていますが、楕円体内のほとんどの星の軌道は実は「ほとんど規則的」になります。その軌道にはいくつかタイプがあり、たとえばバナナ型の軌道もあり、それらが上下に重なると、見かけ上、X字構造に見えることがあります。そのため、こうした軌道が卓越している可能性が考えられます。
「重力なら球形に近づく」は、重力散乱が十分効いて系がカオス的になり、いわば“熱平衡”に近づく場合に当てはまります。球状星団はその典型で、ほぼ球形に見えます。一方でバルジは星の数が非常に多いため、個々の星同士の散乱効果が相対的に弱くなり、熱平衡に達しにくいです。さらに、多数の星による平均的な重力の強さが卓越し、その結果、規則的な軌道構造がほとんどを占め、形も球形とは限らない、という理解になります。 このように、星が多数集まり、お互いの重力で相互作用をしあって束縛されている系を自己重力多体系と呼びますが、自己重力多体系の力学構造は実に奥深く興味あるものです。

ダークマターと対消滅について簡単に知りたいです。雷(日本海側)でエネルギーを取り出そうとしているのでしょうか?(Cさん、50代)

対消滅とは、粒子と反粒子が出会って消滅し、そのエネルギーがガンマ線などの高エネルギー電磁波として放出される現象です。反粒子とは、質量は同じで、他の物理量、例えば電荷などの符号が逆の粒子(例:電子に対する陽電子)を指します。ダークマターにも反粒子があるかどうかは、ダークマターの正体が未解明なため確定していません。ただし候補の一つであるWIMP(弱く相互作用する重い粒子)であれば、反粒子が存在するモデルが考えられています。もし対消滅由来のガンマ線が観測できれば、ダークマターの存在や性質の理解につながる可能性があります。「雷でエネルギーを取り出す」という点については、天文学・宇宙物理の文脈で対消滅の研究が直接それを目的にしているわけではありません。対消滅の探索は主として「ダークマターの正体に迫る」ための観測・理論研究です。
JASMINEとの関係としては、次の通りです。仮に(ダークマターが一番密集していると考えられる)天の川銀河の中心で対消滅由来のガンマ線が検出された場合でも、ダークマターの粒子質量などの物理量を絞るためには、中心付近のダークマターの密度分布・速度分布の推定が重要になります。ダークマターそのものは直接見えませんが、中心領域の恒星の空間分布・運動分布から重力場(全質量分布)を推定し、見える物質の寄与を差し引くことでダークマター分布を推定することができます。JASMINEによる星の距離・運動データは、その推定に寄与することが期待されます。

バリオン、ダークマター、ダークエネルギーの比はどうやって分かったのでしょうか?(S.Sさん・30代)

いくつかの宇宙論的観測を組み合わせ、宇宙モデルに含まれるパラメータ(バリオン・ダークマター・ダークエネルギーの組成比やハッブル定数など)を絞り込むことで推定します。代表的には、宇宙背景放射(CMB)の温度ゆらぎ分布が重要です。ビッグバンのなごり火とも言われる宇宙背景放射ですが、現在は、絶対温度で約2.7Kの電波として観測されています。宇宙背景放射の温度は実は方向によってわずかに違っており、ムラがあります。そのムラの大きさはわずか10万分の1度程度なのですが、COBEWMAPといった観測衛星で得られた温度ムラの分布には、バリオン・ダークマター・ダークエネルギーの存在量の情報が潜んでいて、理論モデルと観測データを比較することによって、それを評価することができます。さらに、ビッグバンから数分後の核融合で作られた軽元素(ヘリウム等)の理論計算と観測量の比較から、バリオン量に強い制限が得られます。加えて、遠方の超新星観測、銀河までの距離と膨張速度、球状星団の年齢など、複数の観測事実を合わせて、最も整合する存在比を評価しています。

銀河中心になれるブラックホールと、そうではないブラックホールの違いは何ですか?(S.Sさん、30代)

天の川銀河を含め、多くの銀河の中心には(超)巨大ブラックホール(太陽質量の数百万倍~数十億倍)が存在します。一方、銀河内には恒星質量ブラックホール(太陽質量の数倍?数十倍)も多数存在すると考えられています。恒星質量ブラックホールは、非常に重い恒星が進化の最終段階で形成されます(もとの恒星が十分重い必要があります)。銀河中心の巨大ブラックホールがどのように形成・成長したかは長年の議論があり、完全には決着していません。大きくは、ガスの降着で成長したという考え方、恒星質量ブラックホール同士の合体を繰り返して成長したという考え方、あるいは両者が組み合わさった可能性などが検討されています。ちなみに、「ブラックホールは何でも飲み込む」というイメージがありますが、実際には物質が落ち込むためには角運動量やエネルギーを失う必要があり、その過程(メカニズム)の理解が難しいのです。そのため、巨大ブラックホールの形成解明が困難なのです。

銀河系内に、地球以外のハビタブル惑星はいくつくらい見つかっているのでしょうか?(S.Sさん、30代)

確認済み系外惑星は6,000個以上が報告されています。その中で「生命居住可能領域にある可能性がある候補」は限定的で、現時点では70個程度です。さらに、「地球のような岩石惑星」に絞るとより少数になり、現時点では数十個未満のようです。ただし、「生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)にあり得る候補」がどのくらいあるかは、定義や推定の更新で数が変わり得ます。

宇宙の階層構造にはさらに上位の構造が存在するのでしょうか?(?さん、50代)

宇宙の階層構造のうち、現在私たちが観測的に認識している最大級のスケールとしては、銀河の泡構造(フィラメントやボイドを含む大規模構造)に関連する超銀河団規模が挙げられます。それ以上のスケールについては、観測的な確証はありません。もし、宇宙全体が大局的には一様であるという宇宙論の大前提に影響するほど、超銀河団よりもっと大きなサイズの構造が確かに見つかれば、宇宙全体の進化を記述する宇宙モデルの見直しを迫る可能性があります。ただ現時点では、一様性を前提とした標準的な宇宙モデルと大きく矛盾する根拠は乏しく、超銀河団規模を超え、大局的一様性の前提を破るような“さらに上位の階層構造”が普遍的に存在する可能性は低いと思われます。

なぜそんな遠くまで観察できるのですか?(Sさん、10歳)

遠い星や銀河は、とても暗く見えます。だから、遠くのものを見るには、たくさん光を集められる大きな望遠鏡が必要です。望遠鏡は「光を集めるバケツ」みたいなものだと思うと分かりやすいです。バケツが大きいほど、暗い光も集められます。たとえば日本のすばる望遠鏡は、鏡の直径が8.2mもあります。さらに将来は、直径30m級の望遠鏡を国際協力で建てる計画も進んでいます。大きな望遠鏡ほど、より遠くにある暗い天体も見つけやすくなります。

銀河ってなん個あるんですか?(Aさん、10代)

むずかしい質問ですが、目安となる研究があります。宇宙で見える範囲(観測可能な宇宙)には、少なくとも約2兆個の銀河があるという推定が報告されています。 ただし、これは「とても暗くて今の望遠鏡では見えにくい小さな銀河」も含めて推定した数です。望遠鏡が進歩すると、見つかる銀河も増えていく可能性があります。

宇宙の温度は何度くらいですか?( Uさん、10代)

宇宙空間は、ものすごく冷たいです。宇宙全体に広がる「宇宙背景放射」という“かすかな光”に対応する温度は、約2.7K(ケルビン)です。これは摂氏にすると 約-270℃(マイナス270度)くらいです。 (「K(ケルビン)」は、理科で出てくる温度の単位で、「0Kゼロケルビン)」が「これ以上は下がらない最低温度」です。)

肉眼で見られる星で、一番遠い星は何光年くらい離れていますか?(Tさん、40代)

肉眼で見える暗さの限界は、だいたい 6等級くらいと言われます。「一番遠い星」を1つに決めるのは実は難しく、星の明るさの変化や、距離測定の更新によって情報が変わることがあります。よく名前が挙がるV762 CassiopeiaeV762カシオペヤ座)は、かつて「肉眼で見える最遠の星」として紹介されることがありましたが、最新の視差測定では距離は 約2,500光年程度とされ、1万光年以上という見積もりは不確かさが大きいと説明されています。一方で、代表的に有名な1等星などは数光年~数百光年にあり、遠い方の例としてデネブは 約2,600光年とされます。肉眼で6等級まで見えるような暗い空は都市部では難しいので、街中ではもっと近くて明るい星が中心になります。いずにれしても肉眼で見ることができる星は、宇宙や天の川銀河のスケールと比べると、我々のごくごく近くに限られているわけです。

宇宙の勉強をしたい場合のおすすめの大学と学部はありますか?(Cさん、50代)

以前は天文学・宇宙物理を本格的に学べる学科が限られていましたが、現在は全国の多くの大学で宇宙・天文を学べます。どこが一番おすすめかは一概に言えず、関心分野(観測/理論/惑星/宇宙論など)や研究室、カリキュラム、指導教員との相性などで選ぶのが良いと思います。

[参考]宇宙を学べる大学一覧
https://www.solato.net/solawomanabu/college/alllist/

郷田先生が太陽系で一番好きな惑星は何ですか?(Bさん、20代)

「これが一番」と決めているわけではありませんが、金星は「宵の明星/明けの明星」としてとても明るく見えることがあり、美しいと感じます。木星も明るくて見つけやすいですね。火星は赤い特徴があり、昔から「火星に生命がいるかも」という話題もあって、子どもの頃から関心がありました。土星は輪が特徴的で印象深いです。ほかの惑星は肉眼で見つけにくいものも多く、そういう意味では少し馴染みが薄いかもしれません。

先生の思う「宇宙の外」が知りたいです。(Uさん、12歳)

とてもよい質問です。まず「宇宙の外」と言うとき、私たちはつい「宇宙の外にも“場所”がある」と思ってしまいます。でも、もしそこに“場所(空間)”があるなら、定義の上では、それも結局「宇宙(空間を含むもの)」の一部になってしまいます。 なので、現時点では「宇宙の外に何があるか」をはっきり答えるのはとても難しいです。それに答えるためには、宇宙そのもの、つまり時間と空間が、どのようにしてできたか、という超難問を解く必要があり、研究者はその謎に挑み続けています。

宇宙における天の川銀河は孤独なのか、先生の考えを教えてください。(Kさん、40代)

天の川銀河は決して孤独ではありません。観測可能な宇宙には銀河が非常に多数あり、推定では2兆個規模とも報告されています。また天の川銀河の近傍には、大小のマゼラン雲のような小さな銀河や、アンドロメダ銀河のような大きな銀河があり、合わせて局所銀河群を構成しています。近くにも仲間がいるわけです。

理論物理や量子力学者が「類推」を進める方法で仏教などを参照すると聞きます。先生は示唆的なアイデアを受けることはありますか?(Sさん、48歳)

難しいご質問ですが、量子力学や相対性理論のような理論を理解する上では、日常感覚では“非常識”に見える前提を、そのまま受け入れる必要がある場合があります。前提を自然にそのまま受け入れる、ということをあるとき“悟って”から、それまでなにかもやもやしていたことに対して、自分の中では理解が一歩進んだ気がしています。また、荘子の思想に「知魚楽」という話があります。日本で最初にノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士が随筆で紹介されており、私はそれを読んで知りました。世界は論理だけでは捉え切れず、科学も直観や想像力に支えられている、という趣旨の話です。実際、物理では論理思考に加えて、直観が助けになることもあると私も感じています。良いアイデアは机の前ではなく、お風呂や布団の中などリラックスした時に浮かぶことが多いです。(余談ですが、私は湯川博士の学統上「ひ孫弟子」に当たります。残念ながら直接お会いしたことはありません。)

今まで研究してきた中で、一番うれしかったこと、つらかったことを教えてください。(Tさん、40代)

研究全般でいえば、一番うれしいのは、どんな研究テーマであっても「問題が解けて結果が出た瞬間」です。達成感があるだけでなく、世界中で誰もまだ知らないことを初めて自分が知った、という感覚があり、研究の醍醐味だと思います。ただし、研究は自分の中だけで完結してはいけません。成果を公表し、多くの人に検証してもらい、面白さや価値を共有してもらう必要があります。そこは難しく、なかなか認めてもらえないこともあります。論理的な反論であれば納得できますが、時に感情や信条などで理不尽に否定されることもあり、それを覆すのに苦労した経験もあります。
JASMINE計画の面では、うれしかったことはJAXAでの難関審査をいくつか通過できた時(特に公募型小型3号機に選定された時)です。つらかったのは、外的要因などで計画がなかなか前に進まず、停滞気味になった時期です。

長期間のプロジェクト推進のモチベーションは何ですか?(?さん、40代)

JASMINEは紆余曲折がありながらも、長い期間続いてきました。困難や苦労も多かったのですが、それでも続けてこられた大きな理由の一つは、やはり好奇心――謎を解いて知りたい」「面白いことをやりたい」という思いです。 また、計画が進むにつれてチームメンバーが増え、支え合える体制ができたことも大きかったと思います。さらに、計画を応援してくださる多くの方々から力をいただけたことも、継続の原動力になりました。

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