プラネタリウム
第128回 隕石・火球と月面衝突閃光 ―流れ星が教えてくれる太陽系の素顔―
流星は、流れ星の元になる小さな天体「流星体(流星物質)」が、地球に飛び込んで光る現象です。また、燃え尽きずに地上に着地したものが隕石です。流星体は月にも飛び込みます。月には空気がないので、流星体はそのまま月面に直撃します。このときの衝突で一瞬光る現象が月面衝突閃光です。本講演は、宇宙空間を漂う「流星体」が主役でした。隕石や火球など、地球に飛来する小さな天体について、研究者より解説をいただきました。
(講師からのメッセージ)
流れ星に願いごとをしたことはありますか?あの一瞬の光は、太陽系をめぐる小さな天体が地球にやってきた瞬間です。特に明るい「火球」は隕石として地上に届くことも。また望遠鏡で月を見つめると、天体衝突の閃光が今も光っています。宇宙からの"訪問者"たちが語る太陽系の物語を、一緒にのぞいてみましょう。
概要
日時
令和8年9月5日(土曜日)午後7時~午後8時30分
講師
阿部 新助(あべ・しんすけ)氏
日本大学理工学部 航空宇宙工学科 教授
日本大学理工学研究所 宇宙科学研究ユニット(NU-SX)代表
講演プログラム(当日配布したレジュメより)
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はじめに ― 流れ星に願いごとをする前に
・流星・火球・隕石・流星体などの言葉の定義について
・秒速11~72kmで飛び込むミリメートルの粒が、なぜ100km彼方から見えるのか -
流れ星の「色」を分ける ― 分光観測
・分光観測とは?
・ナトリウム、マグネシウム、鉄・・・流星の「色」が語る組成
・ふたご座流星群と母天体ファエトンの謎 -
流星群のしくみ ― ダストトレイルを体験する
・彗星が残したチリの帯と、地球の通り道の関係を知る
・地上から見た流星群を嗜み、彗星に乗って流星群になろう!
・しし座流星嵐(1999~2002年の流星嵐と2030年代の予報) -
火球から隕石、人工流れ星まで
・火球と隕石について
・「はやぶさ」地球帰還カプセルや人工物体の大気圏再突入による人工流れ星 -
月面衝突閃光を捉える
・大気のない月では、微小天体衝突が「閃光」として見える
・月面衝突閃光の望遠鏡観測から分かること、大きさ・質量・発光温度
・月面衝突閃光の応用・・・月の内部構造と月誕生に迫る!? -
ドームで見る太陽系と今夜の空
・頭上を行き交う多数の人工衛星
・彗星の軌道と、プラズマ尾・ダスト尾
・これから見ごろの流星群
質疑応答
聴講者からの質問と講師回答
- ファエトン以外の小惑星由来の流れ星は見つかっていないのでしょうか?ファエトンは何が他の小惑星とちがうのでしょうか?(Sさん、?代・大人)
母天体とは何ですか?ファエトンは彗星ですか?(Aさん、50代・大人) 「母天体」とは、流星群のもとになる塵(流星体)をまき散らした天体のことで、多くは彗星ですが、一部は小惑星です。彗星は太陽に近づくと氷が蒸発し、その勢いで表面の塵が放出されます。放出された塵は彗星の軌道に沿って帯のように広がり(ダストトレイル)、地球がそこを通過するときに流星群となります。
ふたご座流星群の母天体ファエトン(3200 Phaethon)は、1983年に赤外線天文衛星IRASによって発見されました。見つかった時には彗星のような尾やコマ(ガスの雲)がなく、小惑星として登録されましたが、その軌道はふたご座流星群と一致していました。ファエトンは太陽に最も近づくとき、水星軌道の内側(太陽から約0.14天文単位)まで入り込み、表面温度は700℃以上に達します。近年の太陽観測衛星による観測で、この時にわずかに塵やナトリウムを放出していることが分かり、彗星と小惑星の中間的な性質をもつ「活動小惑星」と位置づけられています。かつては氷を含む彗星だったものが、太陽への接近を繰り返すうちに氷を失った「枯渇彗星」だと考えられています。ただし、現在の弱い活動だけでは、ふたご座流星群の膨大な塵の量を説明できないため、過去に大規模な放出があったと推定されており、その謎を解くためにJAXAの探査機DESTINY⁺(デスティニー・プラス)がファエトンへの接近観測を計画しています。
ファエトン以外にも、小惑星(あるいは枯渇彗星)に由来すると考えられる流星群はいくつか知られています。例えば、しぶんぎ座流星群の母天体と考えられている小惑星 2003 EH1、おうし座流星群に関係するエンケ彗星の仲間の小惑星群、ファエトンと同じ仲間で昼間のろくぶんぎ座流星群の母天体とされる小惑星 2005 UD などです。
- 流星の観測から、母天体の成分や熱の履歴まで分かるとのことですが、現在の観測技術でもまだ分からないことは何ですか?また、阿部先生が今一番知りたいことは何でしょうか?(Kさん、?代・女性)
流星の光を分光する(虹のように波長ごとに分ける)と、ナトリウム、マグネシウム、鉄、カルシウムなどの金属元素の輝線が見え、流星体の組成や、母天体が太陽の熱をどれくらい受けてきたか(例えば、ナトリウムが蒸発して失われている、など)が分かります。しかし、生命の材料として最も重要な炭素や有機物は、流星の光からはなかなか検出できません。炭素の強い輝線は紫外線の波長域にあり、地球のオゾン層に吸収されて地上まで届かないためです。宇宙からの紫外線観測で流星のスペクトルが偶然捉えられた例が1例あるだけで、流星体に含まれる有機物の量や種類は、まだよく分かっていません。
私が今一番知りたいのは、地球の生命の起源と、地球外生命が存在するかどうかです。彗星や小惑星の塵は、太陽系が生まれた頃の水や有機物をそのまま閉じ込めており、探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った試料からはアミノ酸も見つかっています。こうした物質が流星や隕石として地球に降り注ぎ、生命誕生の材料になったのか、そして同じことが他の惑星系でも起きているのか。流星の研究は、この「宇宙でどうやって生命が誕生するのか」という大きな疑問につながっています。
- 流星の数を決定する要因は何ですか?彗星の大きさ、軌道は関係あるのですか?(Tさん、70代・大人・男性)
流星の数は、主に次の3つで決まります。第一に、流星群のもとになる「チリの帯(ダストトレイル)」の中の塵(流星体)の数、つまり空間密度です。母天体の彗星が大きく活動が活発なほど、また放出されてから時間が経っていない新しい帯ほど、塵が濃く集まっています。第二に、地球がダストトレイルの中心にどれだけ近づくかです。塵の帯は木星などの惑星の重力で毎年少しずつ位置を変えるため、同じ流星群でも当たり年と外れ年があります。第三に、地球と流星体がぶつかる速度です。彗星の軌道が地球の進行方向に正面衝突するような向きだと、相対速度が秒速70km近くまで速くなり、小さな塵でも明るく光るため、目に見える流星の数が増えます。
しし座流星群が33年ごとに「流星嵐」を引き起こすのは、母天体のテンペル・タットル彗星が地球の公転とは逆向きに回っているため正面衝突となって速度が最速(秒速71km)になること、そして彗星が回帰した直後には濃いダストトレイルが地球のすぐ近くを通ることの、2つの条件が重なるためです。1999年に欧州、2001年に日本で見られた1時間あたり数千個という大出現は、まさにこの条件が揃った例でした。
- 流星の明るさはどうやって調べるのですか?(R.Uさん、14歳・男性・学生・地球人)
流星の明るさは、同じ画像(または同じ視野)に写っている恒星の明るさと比較して決めます。恒星の明るさ(等級)はカタログで正確に分かっているので、流星の光の量を恒星の光の量と比べれば、流星の等級が求まります。等級は数字が小さいほど明るく、5等級ちがうとちょうど100倍の明るさの差になります。今は高感度のビデオカメラで撮影し、コンピュータで自動的に測るのが一般的です。ただし、火球のようにとても明るい流星はカメラの限界を超えてしまう(飽和する)ので、周囲を照らす明るさから推定したりと、特別な工夫が必要になります。
- 地上に落ちてくるいんせきはどう調べるのですか?(R.Uさん、14歳・男性・学生・地球人)
隕石になるような明るい火球は、離れた2か所以上のカメラで同時に撮影すると、見える方向のずれ(三角測量)から、火球が光った高さや経路、速度が立体的に分かり、そこから宇宙空間での軌道(どこから来たか)も求められます。日本ではSonotaCo(ソノタコ)ネットワークなど、アマチュアの方々のカメラ網が大きな力を発揮しています。高度20~30kmまで低空になると流星体は減速して発光を終え、風に流されながら落ちてくるので(暗黒飛行:ダークフライト)、その日の上空の風のデータを使って落下範囲を計算し、実際に地面を歩いて捜索します。
- ちりはどうやってできているのですか?砂粒ほどの流星体はどこからきたのですか?(R.Uさん、14歳・男性・学生・地球人)
流星体のもとになる塵は、太陽系が誕生する前から存在していました。約46億年前、星と星の間に漂うガスと塵の雲(分子雲)が縮んで太陽が生まれたとき、その周りに残った直径1ナノメートル(10億分の1メートル)から1マイクロメートル(100万分の1メートル)程度の星間塵が、互いにくっつき合って成長しました。こうして塵は千倍から百万倍も大きなミリメートルサイズの粒になり、さらに集まって彗星や小惑星になりました。隕石の中には、太陽系誕生以前に他の星のまわりでできた「プレソーラー粒子」もごく少量含まれており、私たちが見る流れ星の材料は、文字通り星のかけらでもあるのです。
また、こうした塵が氷とともに集まってできた天体が、流星群の故郷である「彗星」です。彗星の核は氷と塵が混ざった「汚れた雪玉」にたとえられ、マイクロメートルからセンチメートル、さらにメートルサイズの岩塊まで、さまざまな大きさの固体粒子でできています。探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に近づいて撮影した表面には、大小の石や岩が転がっていました。彗星が太陽に近づくと氷が蒸発(昇華)し、そのガスの流れに乗って塵が宇宙空間に放出されます。放出された塵は彗星の軌道に沿って少しずつ広がり、地球がそこを横切るときに流星群として見えるのです。
- 流星のクラスターは毎回おきますか?(R.Uさん、14歳・男性・学生・地球人)
流星クラスターは、数秒から数十秒のあいだに、同じ方向から多数の流星が狭い範囲に集中して現れる現象です。宇宙空間で1つの流星体が大気に入る直前(数日前から数時間前)に砕けて、破片の群れとなって飛んできたものと考えられています。砕ける原因としては、太陽の熱による熱ストレス、高速回転による分裂、小さな塵との衝突などが候補にあがっています。1997年のしし座流星群で撮影された例が有名ですが、世界でもまだ10数例しか記録がなく、毎回起こるものではありません。流星群の時にも、ふつうは起こらないまれな現象で、どんな条件で砕けるのか、そのメカニズムは現在も研究中です。
- 1つの流星が分解して降るのと、流星群として降るのと、どう見分けているのですか?(Sさん、30代・男性)
現象の起こる時間と空間の広がりで見分けます。1つの流星体が宇宙空間で砕けて降ってくる「流星クラスター」では、数秒から数十秒という短い時間に、多数の流星が同じ方向から空の狭い範囲に集中して現れ、それぞれの経路は互いに平行で速度もほぼ同じです。一方、流星群は、1時間から数時間、あるいは数日にわたって、空全体(広い領域)に、同じ放射点から流星が現れる現象です。同じ「たくさん流れる」現象でも、時間と場所の集中の度合いがまったく違います。
また、流星体が大気に入ってから砕ける場合もあります。この場合は、砕けた破片が同じ経路上に数珠つなぎに並んで光り、1つの火球が分裂しながら飛ぶように見えます。これは宇宙空間で砕けて広がる時間がなかったためで、砕けた場所(宇宙空間か大気中か)によっても見え方が変わります。2地点以上のカメラで観測して各流星の軌道を求めれば、これらは明確に区別できます。
- 2001年のしし座流星群で二つ同時に流れたのが多くみられましたが、流星群のときは多いのですか?(?さん、?代)
流星は、一定の間隔で規則正しく流れるのではなく、数個が立て続けに現れたかと思うと、その後しばらく現れないという「出現のムラ」があります。これは、流星体が宇宙空間でばらばらに散らばっているためで、サイコロを振ったときに同じ目が続けて出ることがあるのと同じ、偶然の重なりです。数学的には「ポアソン分布」と呼ばれる統計にしたがいます。
2001年のしし座流星群のように1時間に数千個、つまり1秒に1個以上流れるような流星嵐では、こうした偶然の重なりが頻繁に起こるため、2つの流星がまったく同時に流れる場面が何度も見られます。ですから、流星群(特に流星雨や流星嵐)の時ほど同時流星は多くなります。なお、まれに宇宙空間で砕けた破片の群れが本当に同時にやってくる「流星クラスター」という現象もあり、これは偶然ではなく物理的な原因があるものとして区別されます。
- 流星雨と流星群の主な違いは何ですか?また、どちらの方が多いですか?(Mさん、13歳・地球人)
正式な定義はありませんが、流星の出現数で呼び分けられています。理想的な空で1時間あたり10個から100個程度が見られるのがふつうの「流星群」で、毎年決まった時期に見られるペルセウス座流星群やふたご座流星群がこれにあたります。それが数百個以上になると「流星雨」、1000個を超えるようになると「流星嵐(りゅうせいあらし)」と呼びます。
どちらが多いかといえば、流星群は毎年何度も見られますが、流星雨や流星嵐はめったに起こらず、数十年に一度の出来事です。1833年と1966年のしし座流星群では1時間に数万個、1999年には欧州・地中海で1時間に4千個、2001年には日本でも1時間に数千個の流星が見られました。私たちが一生のうちに流星嵐に出会えるのは、運が良くて1~2回しかありません。
- 流星には群流星と散在流星がありますが、肉眼だと経路と長さで判別するかと思います。スペクトル分光などでも、群流星と散在流星の判別が可能なのでしょうか?(Aさん、20代・男性)
群流星か散在流星かは、流星の経路を逆にたどった先の放射点の位置と、流星の速度、つまり宇宙空間での軌道が流星群のものと一致するかどうかで判別するのが基本です。2地点以上のカメラで観測すれば軌道を求めることができ、これが最も確実な方法です。
スペクトルだけで確実に判別することはできません。流星群の流星と散在流星の組成は、どちらも大まかには彗星の塵と同じで、個々の流星のスペクトルは似ているからです。ただし、流星群ごとに組成の傾向はあります。例えば、ふたご座流星群の流星は、母天体ファエトンが太陽のすぐ近くまで接近して加熱されるため、ナトリウムが蒸発して失われた「ナトリウムの少ない」スペクトルを示すことが知られています。逆に、鉄ばかりでできた鉄流星は、小惑星起源と考えられています。このように、多数の流星のスペクトルを統計的に比べると、母天体の個性が浮かび上がってきます。
- スペースデブリが大気圏に突入した場合、流星として観測できますか?(Tさん、60代・大人・地球人)
はい、観測できます。使い終わった人工衛星やロケットの部品などのスペースデブリが大気圏に再突入すると、ゆっくりと移動する明るい火球として見えます。自然の流星が秒速11km以上(速いものは秒速70km以上)で飛び込んでくるのに対し、地球を周回していたデブリの速度は秒速8km程度と遅く、また浅い角度で入ってくるため、数十秒から1分以上かけて空をゆっくり横切ります。この「遅くて長い」のがデブリ起源の流星の特徴です。
多くは突入で爆発したり、バラバラに砕けて多数の光の粒が列をなして飛ぶ「花火」のような光景になります。日本でも、ロケットの上段や衛星の再突入が火球として目撃され、SNSで話題になることがあります。2点観測で軌道を求めれば、速度と経路から自然の流星かデブリかを判別でき、事前に予報されている再突入と照合することもできます。
- 流星群には星座の名前がついていますが、必ず同じ星座の方向から見えるのですか?(Gさん、40代・男性)
流星群の流星は、宇宙空間では互いに平行に飛んでいますが、遠近法の効果で、空の一点(放射点)から四方八方に飛び出すように見えます。まっすぐな線路が遠くで一点に集まって見えるのと同じ理屈です。流星群の名前は、この放射点がある星座からつけられており、極大日にはその星座を中心にして流星が出現します。ただし、流星は放射点の近くだけでなく空全体に流れ、放射点から離れたところに現れる流星のほうが長い経路を描きます。
放射点の位置は固定ではありません。地球が公転しながら流星群に突っ込んでいくため、放射点は毎日1度ほど星座の中をゆっくり移動します。活動期間が長い流星群では、極大日から大きく離れると放射点が隣の星座に入ることもあります。また、母天体の放出した塵の帯(ダストトレイル)は惑星の重力で少しずつ軌道が変化するため、年によって放射点の位置がずれたり、出現の様子が変わったりすることもあります(ほうおう座流星群などがその例です)。なお、しぶんぎ座流星群の「しぶんぎ座」は現在存在しない星座で、放射点はうしかい座とりゅう座の境界付近にあります。
- 太陽系外のすい星はありますか?(Mさん、12歳・子ども)
あります。2026年夏の時点で、太陽系の外からやってきた「恒星間天体」が3つ見つかっています。1つ目は2017年に発見されたオウムアムア(1I/'Oumuamua)で、細長い形をしていましたが、彗星のようなガスや塵の尾は見えませんでした。2つ目は2019年に見つかったボリソフ彗星(2I/Borisov)で、はっきりとした尾をもつ、正真正銘の太陽系外彗星でした。3つ目は2025年7月に発見されたアトラス彗星(3I/ATLAS)で、これも彗星でした。つまり3つのうち2つが彗星です。
これらの天体は、太陽の重力を振り切るほど速い速度(双曲線軌道)で通り過ぎていくことから、太陽系の外から来たと分かります。ほかの星のまわりで生まれた彗星が、その星系の惑星の重力ではじき飛ばされ、何百万年、何億年も星の間をさまよった末に、たまたま太陽系を通り抜けているのです。宇宙にはこうした天体がたくさん漂っていると考えられており、2026年から本格観測を始めたベラ・ルービン天文台などによって、今後はもっと頻繁に発見されると予想されています。
- 月面衝突の力はどれくらいの力ですか?(Mさん、50代・大人)
地球から望遠鏡で観測できる月面衝突閃光を起こすのは、ビー玉(直径1~2cm)からゴルフボール程度(直径5cm)の大きさの流星体です。重さにするとわずか数グラムから数100グラム程度ですが、秒速25km前後という猛スピードで月面にぶつかるため、そのエネルギーはとても大きくなります。計算すると、ビー玉サイズで10トンの大型トラックが時速70kmで衝突するエネルギー、ゴルフボールサイズでは同じトラックが時速300kmで衝突するエネルギーに相当します。火薬(TNT)に換算すると数百グラムから10kg程度です。
月には大気がないため、こうした小さな粒でも減速せずにそのまま月面に激突し、直径数メートルのクレーターを作ります。衝突のエネルギーのごく一部(0.1~0.5%程度)が光に変わり、それが地球から見える一瞬の閃光です。月全体では、このクラスの衝突が1日に何回も起きていると推定されています。
- 将来月面に基地などをつくった際、どのように防ぐ方法が期待されますか?(Mさん、50代・大人)
アルテミス計画などが進んで、人が月に住むようになったら、クレーターを作るような隕石が飛んできた時に危険だと思いますが、シェルターなどで防げるくらいの威力なのでしょうか?危なくないですか?(Nさん、40代・大人) 前回答で説明したように、閃光を起こすクラスの衝突は1発でトラックの激突並みのエネルギーをもち、しかも秒速20km以上という速さなので、地上の建物のようなシェルターで正面から受け止めるのは困難です。ただし、月は広く、基地の大きさは月面全体に比べれば点のようなものなので、特定の基地に当たる確率は非常に小さいことも事実です。むしろ日常的に問題になるのは、目に見えないほど小さな塵(微小隕石)が絶え間なく降り注ぐことと、近くに落ちた隕石がはね飛ばす砂や石(二次放出物)です。
対策として有望なのは、月の土(レゴリス)を数メートルの厚さで居住区の上にかぶせることで、小さな衝突だけでなく宇宙放射線も防げます。さらに安全なのは地下の空間で、月には日本の探査機かぐやが見つけた直径数十メートルの縦穴や、その先に続く巨大な地下空洞(溶岩チューブ)があり、そこに基地を作れば、隕石・放射線・激しい温度差のすべてから守られます。また、月の南北の極域は、水の氷が期待できることに加えて衝突頻度がやや少ないことも分かっており、比較的安全な場所と考えられています。
- 月面衝突閃光について、20cmクラスの望遠鏡が必要とのことですが、最近のスマート望遠鏡で撮影する余地はあるでしょうか?また、アマチュアの観測意義はあるでしょうか?(Jさん、40代・男性・大人)
月面衝突閃光は、明るさが5~10等級程度で、光っている時間が0.01~0.1秒(ビデオの数コマ分)しかありません。そのため、観測には毎秒30~60コマの動画で、月の夜の部分にある5等級程度の点光源をとらえられる感度が必要です。この条件を満たせば、必ずしも20cmの望遠鏡でなくても検出は可能で、明るい閃光なら10cmクラスでも記録された例があります。
最近のスマート望遠鏡は、短い露出を多数重ね合わせて(スタックして)きれいな画像を作る仕組みのものが多く、一瞬の閃光はその過程で埋もれてしまいがちです。しかし、生の動画(毎秒30コマ以上)を保存できる機種であれば、月の暗い部分を数時間撮り続けて後から解析することで、閃光を捉えられる可能性は十分にあります。
アマチュアの観測意義は大いにあります。閃光はごく短いため、宇宙線がカメラに当たったノイズや人工衛星の反射光との区別が問題になり、離れた2地点以上で同時に記録されて初めて「本物」と確認されます。観測地点が多いほど確認できる閃光が増え、月に衝突する流星体の頻度や大きさの分布が正確に分かります。国内でも個人の観測者が捉えた閃光が世界的に報道された例があり、私たちも複数地点でのネットワーク観測に協力してくださる方を歓迎しています。
- ロシアの隕石が落ちると分かったのは、実際に落ちた時間のどれくらい前なのでしょうか?予防、予測、対策はできるのでしょうか?(Bさん、31歳・地球人)
2013年2月15日にロシアのチェリャビンスク上空で爆発した隕石(直径約17~20m、重さ約1万トン)は、地球に衝突する前に発見できませんでした。この天体は太陽の方向から飛来したため、太陽の光にまぎれて、夜空を監視する地上の望遠鏡ではとらえることが不可能だったのです。秒速19kmで大気に突入し、高度約30kmで爆発した衝撃波で窓ガラスが割れ、約1500人がけがをしました。
現在、直径1km以上の地球接近天体は95%以上が発見済みで、当面衝突の心配がないことが確認されていますが、チェリャビンスク級の小さな天体は数%しか見つかっていません。対策は着実に進んでおり、まず「予測」については、世界中の望遠鏡による監視で、直径数メートルの天体が衝突する数時間前に発見された例がこれまでに10例ほどあります。さらに、太陽側から来る天体を赤外線でとらえる宇宙望遠鏡(NASAのNEOサーベイヤー)の打ち上げも計画されています。「予防」については、2022年にNASAの探査機DARTが小惑星に体当たりして軌道を変えることに成功し、ぶつかる前に軌道をずらす技術が実証されました。
- 最低突入速度が11km/sとのことですが、なぜそれ以下の速度のものはないのでしょうか?(?さん、40代・男性・大人)
地球には重力があるため、近づいてくる天体は必ず地球に引っぱられて加速されます。ボールを高いところから落とすと地面に着くときに速くなるのと同じで、はるか遠くから地球に落ちてくる天体は、たとえ最初は地球に対してほとんど止まっていたとしても、大気に突入するときには秒速11.2kmになります。この速度は、逆に地球から飛び立って重力を振り切るのに必要な速度(第2宇宙速度、脱出速度)とちょうど同じです。つまり、地球の重力のために、どんな天体でも突入速度は最低でも秒速11.2kmになるのです。
実際の突入速度は、遠くでの地球との相対速度と、この11.2kmとを組み合わせた値になります(速度の2乗どうしを足して平方根をとる)。最も速いのは、太陽系を回る天体が地球の公転(秒速30km)と正面衝突する場合で、およそ秒速72kmになります。しし座流星群(秒速71km)がこれに近い例です。一方、地球の進行方向の後方から追いついてくる流星群は、相対速度が小さいため最低速度に近くなり、ほうおう座流星群(秒速12km程度)やりゅう座流星群(秒速20km程度)が最も遅い流星群です。遅い流星はゆっくりと流れ、色も赤っぽく見えるのが特徴です。
- 肉眼で見えないような流星はどうやって観測しているのですか?(Tさん、30代・大人)
肉眼で見えない暗い流星も、方法を変えれば観測できます。ひとつは、高感度のビデオカメラや大型望遠鏡による観測で、肉眼の限界(6等級程度)よりずっと暗い10等級前後の流星まで撮影できます。
もうひとつが電波による観測です。流星が大気中で光るとき、その通り道には電気を帯びた粒子(電離した大気)の柱ができ、これが電波をよく反射します。そこで地上から電波を発射し、流星が作る電離柱で反射して返ってくる電波をとらえる「流星レーダー」を使うと、肉眼ではまったく見えない砂粒以下の流星まで検出でき、しかも昼間でも曇っていても観測できます。京都大学のMUレーダー(滋賀県甲賀市信楽町)などの大型レーダーはその代表です。日本のアマチュアの方々の間では、遠くのアマチュア無線のビーコン電波が流星に反射して一瞬聞こえる現象を利用した観測(HRO)も盛んで、昼間の流星群の活動を調べるのに役立っています。
※本件は「肉眼で見えないような隕石はどうやって観測しているのですか?」とありましたが、ご質問内容の前後関係より『隕石』は『流星』と解釈し、ご回答いただきました(担当者追記)。
- 以前、S字状に波打って落下する流星をみたことがあります。どのような条件で起こりますか?(?さん、?代)
流星体そのものは秒速数十kmで飛んでいるため、大気中で受ける力ではほとんど進路を変えられず、基本的にまっすぐ飛びます。曲がって見える流星の多くは、視野の端で一瞬とらえたときの目の錯覚や、残像の影響によるものです。ただし、いびつな形の流星体が高速で回転しながら飛ぶと、わずかに揺れ動く(うねる)経路になることがあり、ビデオでそのような例がまれに記録されています。
もうひとつ、はっきりとS字に見える現象として「流星痕」があります。明るい流星が通ったあとに、高度80~90km付近に淡く光る雲のような跡が残ることがあり、数秒から時には数十分にわたって見えます。この高さでは風の向きや速さが高度によって大きく異なるため、最初はまっすぐだった流星痕が風に流されて、時間とともにS字やくねくねした形に変形していきます。ご覧になったものが数秒以上光り続けていたなら、この流星痕だった可能性が高いと思います。
- 炎色反応と同じという説明でしたが、Ca(カルシウム)イオンの色が紫というスライドの表示でした。紫はK(カリウム)で、Caはむしろ橙と習いましたが、これはどうしてなのですか?スライドが正しいとすると、色のくい違いはどこから由来するのでしょうか?(Eさん、50代・女性・大人)
ご指摘のとおり、理科で習う炎色反応ではカルシウムは橙赤色、カリウムは紫色です。スライドで「Caイオン=紫」と表示していたのは、流星の発光では炎色反応とは異なる仕組みで光るためで、どちらも正しいのです。
違いは温度にあります。ガスバーナーの炎は1500℃程度で、この温度ではカルシウムは電気的に中性の原子や分子(実際に橙赤色に光っているのは主にCaOHという分子です)のままです。一方、流星が大気に突入すると、その前面には数千度から1万度に達するプラズマができ、この高温ではカルシウム原子から電子がはぎ取られて、電離したカルシウムイオン(Ca II)になります。イオンになると光る波長がまったく変わり、Ca IIは波長393nmと397nmの紫~近紫外の光を非常に強く出します。流星スペクトルではこの「H線・K線」と呼ばれる2本の輝線が目立つため、スライドでは紫で表示しました。
同じように、流星の中で光る元素の色は、ナトリウムの橙色(589nm)、マグネシウムの緑色(518nm)、鉄の多数の青~緑の線など、温度に応じて強く光る波長が決まっています。つまり、流星の分光は「超高温の炎色反応」と考えると分かりやすいと思います。
- ダストトレイルの図はガウス分布のように見えましたが、なぜなのでしょうか?(Eさん、50代・女性・大人)
彗星から放出される塵は、放出されるときの速度が1つに決まっているわけではなく、秒速数メートルから数十メートルの範囲でばらついています。また、放出後には太陽の光の圧力や惑星の重力など、さまざまな小さな力を受けて、粒子ごとに少しずつ違う軌道をたどります。こうした「たくさんの小さなランダムなずれ」が積み重なった結果の分布は、統計学の中心極限定理により、ガウス分布(正規分布)に近づきます。これは、ランダムウォーク(一歩ごとに進む方向が確率的に決まる運動)を長く続けたときに到達点の分布がガウス分布になるのと同じ理屈です。
そのため、ダストトレイルの断面(軌道と直角方向の塵の密度分布)は中心が最も濃く、外側に向かってなだらかに薄くなるガウス分布のような形になります。地球がこのトレイルを横切るとき、流星の出現数が時間とともに増えて極大を迎え、また減っていく山型の変化を示すのは、この断面の形をなぞっているためです。
- 国内で流れ星をみるのに最適な場所はどこですか?(Hさん、40代・大人)
もし神奈川県で流星群や天体などを見るならどこで見るのが一番良いですか?日本国内でのオススメの観測場所も教えてください。(Nさん、18歳・学生) 流れ星を見る場所の条件は、空が暗いこと(街灯や都市の明かりがない)、空が広くひらけていること(見晴らしが良く、木や建物で視界がさえぎられない)、大気の透明度が高いこと(郊外や高原など、湿気やちりの少ない場所)、そして安全であることの4つです。流星は空全体に流れるので、視野が広いほど多く見えます。また、場所と同じくらい大切なのが「月」で、満月に近いと明るい流星しか見えなくなります。流星群の極大日と月齢を確認し、月が出ていない時間帯を選んでください。
全国的には、長野県や群馬県、山梨県などの高原(野辺山、乗鞍、霧ヶ峰など)、北海道の内陸部、沖縄や小笠原の離島などは、空の暗さと透明度に恵まれています。神奈川県は都市の明かりが強い地域ですが、丹沢山地の峠や湖のまわり、箱根の高原、三浦半島の南向きの海岸などは、東京方面の明かりを背にして南の空が比較的暗く見える場所です。安全のため、夜間に一人で山に入ることは避け、駐車場のある場所を選ぶことをおすすめします。
- 30年以上前の8月富士山に登りました。頂上でたくさんの流れ星をみた思い出があります。富士山の頂上だと、流れ星を多くみることができますか?それとも私は運良く、ちょうどいい時に富士山に登ったのでしょうか?(Fさん、50代・女性)
その両方だと思います。まず、富士山の頂上(標高3776m)は、流れ星を見るには絶好の場所です。富士山ほどの標高になると、自分より上にある大気の量が地上の6~7割ほどになり、大気による星の光の減光が少なくなって、暗い星や暗い流れ星まで見えるようになります。また、大気中の水蒸気やちりの多くは低い高度に集まっているので、頂上からの空は非常に透明です。さらに、雲を見下ろす高さにあるため、ふもとの街の明かりが雲にさえぎられて空が真っ暗になることも多く、天の川が驚くほどはっきり見えます。
そしてもうひとつ、8月は毎年、三大流星群のひとつであるペルセウス座流星群の時期です。極大は8月12~13日頃ですが、8月上旬から中旬にかけては流星が多く、明るい火球も現れます。もし登られたのがこの頃なら、最高の場所で最高の時期に空を見上げていたことになります。
- 年内(2026年)に見られる流星群は阿部先生はどこで見る予定ですか?(?さん、30歳・大人)
年内で最も期待できるのは、12月14日頃に極大を迎えるふたご座流星群です。2026年は月が宵のうちに沈むため、条件は最高で、暗い空なら1時間に50個以上の流星が期待できます。私は、京都大学岡山天文台(岡山県浅口市)か、日本大学理工学部の船橋キャンパス(千葉県船橋市)で、ふたご座流星群の月面衝突閃光や流星の分光観測などの研究観測を行う予定です。
そのほか、10月21日頃のオリオン座流星群、11月17日頃のしし座流星群も見られます。いずれも夜半過ぎから明け方にかけてが見ごろです。ぜひ皆さんもご覧ください。
- きょうりゅうがぜつめつしたときの、いんせきくらいの大きいいんせきが今おちたら、地球はどうなるのですか?(Y.Iさん、10代・子ども)
恐竜が絶滅した6600万年前に落ちてきた隕石は、直径が約10kmもある巨大なものでした。同じものが今落ちてきたら、ぶつかった場所には直径150~200kmもの大きなクレーターができ、周りは何千度もの熱と衝撃波で一瞬にして吹き飛ばされます。海に落ちれば高さ数百メートルの巨大津波が起こり、世界中でマグニチュード10を超えるような巨大地震が発生します。
しかし、もっと恐ろしいのはそのあとです。衝突で巻き上げられた大量のチリが上空(成層圏)に広がって地球全体をおおい、何か月も何年も太陽の光が地上に届きにくくなります。すると地球全体が冷えて寒くなり(「衝突の冬」と呼ばれます)、植物が育たなくなって食べ物がなくなり、恐竜のときと同じように多くの生き物が絶滅してしまうでしょう。
ただ、安心してください。このように大きな隕石が落ちるのは1億年に1回くらいのできごとで、しかも今は世界中の望遠鏡が空を見張っていて、直径1km以上の地球に近づく天体はほとんど見つかっており、当分ぶつかる心配がないことが確かめられています。
- ながれぼしとせいざの星のちがいはなにですか?(A.Sさん、8歳・子ども)
ながれぼしは、じつは「星」ではありません。ごはんつぶくらいの、とても小さな石やすなつぶが、うちゅうから地球(ちきゅう)にとびこんできて、地球をつつんでいる空気(たいき)にぶつかり、あつくなって光ったものです。光っているのは、地上から100kmくらいの高さで、一瞬(いっしゅん)でもえつきてしまいます。だから、ながれぼしは1秒くらいしか見えないのです。
せいざをつくっている星は、太陽(たいよう)とおなじように、自分でかがやいている、とてもあつくて大きなガスのかたまりです。地球の100倍も大きく、光のはやさ(1秒で地球を7まわり半)で何十年、何百年もかかるほど遠くにあります。とても遠いので、ずっとおなじところにあるように見え、何千年もまえの人が見たせいざと、いま私たちが見るせいざは、ほとんどおなじ形をしています。
- 南極で採取された隕石サンプルの長期保存方法を教えてください。(Tさん、60代・大人・地球人)
隕石の大敵は「湿気」と「衝撃」です。多くの隕石には金属鉄が含まれており、空気中の水分と反応して錆び(風化)が進むと、本来の姿や科学的な価値が失われてしまいます。南極の隕石がきれいに保存されているのは、乾燥した氷の中に閉じ込められていたからです。
家庭で長期保存する場合は、衝撃を受けないように柔らかい緩衝材を敷いたケースに入れ、シリカゲルなどの乾燥剤を入れた密閉容器(デシケーター)で、湿気を避けて常温で保管するのが良いと思います。乾燥剤は定期的に交換してください。素手で触ると手の塩分や脂が錆の原因になるので、手袋やピンセットで扱うと安心です。冷蔵庫や冷凍庫での保管は、出し入れの際に表面に結露が生じて錆が進むため避けてください。国立極地研究所などの研究機関では、乾燥した窒素ガスを満たした専用の保管庫で隕石を管理しています。
- 月の裏側はデコボコなのに表側はデコボコでないのはなぜですか?(Tさん、60代・男性・大人)
月の表側と裏側の違いは、月の地殻(表面の岩石の層)の厚さの違いから生まれました。月は約45億年前、火星ほどの大きさの天体が地球に衝突して飛び散った物質から誕生したと考えられています。生まれたばかりの月は表面がドロドロに溶けたマグマの海におおわれていましたが、冷え固まる際に、地球に面した表側と裏側で冷え方が異なり、地殻の厚さに差が生じました。探査機による重力の測定から、表側の地殻は厚さ30~40km、裏側は50~60kmと分かっています。
その後、約40億~38億年前に、大量の天体が月面に衝突する時代がありました。地殻が薄い表側では、大きな衝突が地殻を突き破り、内部から黒い玄武岩の溶岩が噴き出して衝突の穴を埋め、平らな「海」(ウサギの模様に見える暗い部分)が形成されました。一方、地殻が厚い裏側では、衝突クレーターが地殻を突き破ることができず、溶岩で埋められないまま、クレーターがボコボコと重なり合った白っぽい「高地」となったのです。裏側の姿は1959年にソ連の探査機ルナ3号が初めて撮影するまで誰も知りませんでした。なぜ表側だけ地殻が薄くなったのかについては、表側に放射性元素が多く集まって熱くなり続けたという説や、生まれたばかりの高温の地球からの熱が表側を温め続けたという説などがあり、現在も研究が続いています。
- 太陽風は、地球の風のように日によって風向きが変わったりするのですか?(Nさん、40代・女性・大人)
太陽風は、太陽の表面から吹き出す電気を帯びた粒子(陽子や電子)の流れで、太陽から放射状に外へ向かって吹き続けています。地球の風のように向きが逆になることはなく、常に「太陽から地球へ」向かう風です。ただし、太陽が自転しているため、流れ全体は庭の回転スプリンクラーのように渦巻き状(パーカー・スパイラル)になっています。
向きは変わりませんが、強さ(速度と密度)は日によって大きく変わります。ふだんは秒速300~400km程度ですが、太陽表面の「コロナホール」と呼ばれる場所からは秒速700~800kmの速い風が吹き、太陽が地球にその面を向けるたびに(約27日周期で)地球を襲います。さらに、太陽の大爆発(コロナ質量放出)が起こると、秒速1000~2000kmもの塊が飛んできて、大きな磁気嵐やオーロラを引き起こします。また、太陽風は太陽の磁場を一緒に運んでおり、その磁場の向き(北向きか南向きか)は頻繁に変わります。地球の磁場と逆向き(南向き)のときにオーロラが活発になるので、「太陽風の風向きが変わる」というたとえは、この磁場の向きについてはよく当てはまると言えます。
- どんなぼうえんきょうをかえばいいですか?(Tさん、6歳・子ども)
はじめてのぼうえんきょうには、ビクセンの「ポルタII A80Mf」という、くっせつぼうえんきょう(レンズでのぞくタイプ)をおすすめします。レンズの大きさが8cmあって、月のクレーター、土星(どせい)のわ、木星(もくせい)のしまもようと4つの衛星(えいせい)、金星(きんせい)のみちかけなどが、はっきり見えます。それに、ぼうえんきょうを手でうごかすだけでかんたんに星をさがせる、つかいやすい台(かだい)がついているのが、いちばんのおすすめポイントです。
ぼうえんきょうをかうまえに、おうちの人といっしょに、まず7倍くらいのそうがんきょうで星空をながめてみるのもおすすめです。月のクレーターや、たくさんの星があつまったところ(星団)が見えて、星空にくわしくなれます。
- 現在、宇宙の勉強をしていて、今日講演した資料を読んで、しっかり勉強したいです。手にいれることはできますか?(Tさん、49歳・大人・地球人)
講演の資料には、まだ論文として発表していない最新の観測データや、共同研究者から提供された画像などが含まれているため、申し訳ありませんが、資料そのものは公開していません。ぜひまた講演会にご参加ください。
流星や隕石について本格的に勉強されたい方には、国立天文台のウェブサイト(流星群の解説や毎年の予報)、日本流星研究会や日本天文学会の資料、国立科学博物館の隕石展示などが参考になります。また、流星は望遠鏡がなくても肉眼や市販のカメラで観測でき、観測データを研究に生かせる分野ですので、ぜひ実際の観測にも挑戦してみてください。
- 日光浴のように星の光を浴びることは、心とからだに良いのでしょうか?(Nさん、60代)
星の光そのものは太陽の光に比べてとても弱く、日光浴のように体にビタミンDを作らせるような直接の効果はありません。しかし、心への効果はあると思います。暗い場所で満天の星や天の川を見上げると、宇宙の広さと自分の小ささを感じて、日常の悩みがちっぽけに思えてくる、そんな経験をされた方は多いのではないでしょうか。心理学ではこうした感覚を「畏敬の念」と呼び、ストレスを和らげたり、気持ちを前向きにしたりする効果が研究されています。
また、星を見るために夜に外へ出て、静かな場所で深呼吸しながらゆっくり空を眺めること自体が、リラックスにつながります。私自身、観測の合間に見上げる星空にいつも癒されています。ヒーリング効果は確かにあると、経験から思います。
- 十年前の映画で、彗星が割れて地上に落ちる話がありますが、天文学的にありえる話ですか?(Kさん、30代・女性)
映画『君の名は。』(新海誠監督、2016年)のように、彗星が割れてその破片が地球に落ちてくるというストーリーは、天文学的には十分にあり得る話です。彗星の核は氷と塵がゆるく集まったもろい天体で、実際に分裂する様子が何度も観測されています。1994年には、木星の重力で20個以上に砕けたシューメーカー・レヴィ第9彗星の破片が次々と木星に衝突し、地球サイズの黒い痕を残しました。また、1908年にシベリアのツングースカで森林2000平方kmをなぎ倒した大爆発も、彗星の破片が原因だったという説があります。
一方で、映画の細かい部分には実際とは異なる点もあります。彗星の破片のようなもろい天体は、大気中で減速の衝撃に耐えられず、地上に届く前に空中で爆発(エアバースト)することが多いと考えられます。また、映画では落ちてきた破片が鉄でできた隕石(隕鉄)のように描かれていますが、隕鉄は大きな小惑星の内部で溶けて金属が集まってできたものなので、太陽系誕生時の物質がそのまま残る彗星に含まれている可能性は低いと思います。とはいえ、彗星の分裂と地球への衝突という設定自体はとても科学的で、映画をきっかけに彗星や流星に興味をもってくださる方が増えたことを、とてもうれしく思っています。
- 阿部先生は、なぜ天文学者になったのですか?(Dさん、8歳・子ども・男性・地球人)
宇宙が大好きで、宇宙のなぞをじぶんの手でとき明かしたいと思ったからです。子どものころから、星や宇宙のことを本やテレビで見るのが好きで、「宇宙はどこまで広がっているんだろう」「星はどうやって生まれるんだろう」などと考えるのがとても楽しかったのです。天文学者のしごとは、望遠鏡やカメラで空を観測して、だれも知らなかったことを見つけることです。まだ分かっていないことがたくさんあるので、毎日が宝さがしのようで、とてもわくわくします。Dさんも、ふしぎだなと思うことを大切にしてください。それが科学者になる第一歩です。
- 阿部先生が、天文にハマったきっかけや、星や天体に興味をもったのはいつ頃でしたか?自分は幼稚園でした。(Kさん、10代・男性)
私も幼稚園の頃でした。当時テレビでやっていたUFO(未確認飛行物体、最近はUAP=未確認異常現象と呼びます)の番組を夢中で見ていて、「宇宙には何があるんだろう」と想像をふくらませていました。家にあった宇宙の百科事典を何度も何度も眺めていたのもその頃です。UFOへの興味が、いつの間にか星や惑星、そして流れ星や隕石といった「本物の空から降ってくるもの」への興味に変わっていきました。
- 宇宙に、月でも、行ってみたいですか?阿部先生の次の夢は何ですか?(Aさん、30代・大人)
もちろん行ってみたいです。特に、月のまわりを回る月周回旅行に行き、私が研究している月面衝突閃光を、月のすぐそばから観測してみたいと思っています。
その前に、まず実現したいのが成層圏への旅です。高度20~25kmまで気球などで上がると、空は昼間でも黒くなり、丸い地球の縁と、薄い大気の層を同時に見ることができます。流星が光る高度(80~100km)にはまだ届きませんが、流星や隕石が飛び込んでくる「地球の玄関口」である大気を外側から眺め、地球と宇宙の境目を体感してみたいのです。
- 隕石を拾ってみたいです。阿部先生は、計算の元、実際に拾ったことがありますか?(Pさん、40代・地球人)
残念ながら、まだ自分の手で拾ったことはありません。2020年7月2日未明に関東上空に現れた大火球のときには、複数のカメラの映像から火球の経路と軌道を計算し、上空の風のデータを使って落下範囲を推定して、千葉県習志野市周辺を何日も歩いて探しました。しかし私たちが見つける前に、市内のマンションの住民の方が、マンションの共用廊下に落ちていた石を発見され、これが「習志野隕石」として登録されました。計算した落下範囲の中で見つかったので、方法が正しかったことは確認できたのですが、自分で拾えなかったのは今でも少し悔しいです。隕石を拾うには、火球のあとに「落下範囲の計算」と「地道な捜索」が必要で、さらに運も必要です。日本では建物や田畑、森が多く、落ちた隕石を見つけるのは砂漠や南極よりずっと大変です。それでも、火球の目撃情報やカメラ映像が集まれば落下範囲を絞り込めますので、大きな火球を見たら、ぜひ日時・方角・様子を記録して情報を寄せていただければと思います。
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※講演では、講師が自作されたプラネタリウムアプリの紹介および実演もありました。
Astrarium(アストラリウム)
https://apps.apple.com/jp/app/id6795053748
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