プラネタリウム

番組のポリシー

機器の性能よりも、大切なことがある。

当館のプラネタリウムの特徴の一つは、充実した設備かも知れません。しかし、プラネタリウムの真の価値は、設備のスペックだけで決まるのでしょうか。
本当に大切なことは、「それを使いこなせるかどうか」だと私たちは考えます。
名器と呼ばれるような高価な楽器を持っていても、それを活かしきる演奏技術がなければ全く意味がありません。
番組を制作せずに配給された映像作品を上映するプラネタリウムが多い中、当館では、年間十数本のオリジナル番組の企画・制作を通して、制作技術を磨き上げてきました。 緻密なプログラムから創り出される映像と音の世界は、国内トップクラスとの評価をいただいています。
さらに挑戦のステージは世界へ。平成21(2009)年には、ハワイ島のプラネタリウムでコンサートを共同開催(外部サイトを別ウィンドウで開きます)平成24(2012年)にはアメリカのドーム映像祭でプラネタリウム番組として唯一のファイナリスト(外部サイトを別ウィンドウで開きます)に。平成27(2015)年にはブルガリアのオーケストラとコラボレーション(外部サイトを別ウィンドウで開きます)するなど、当館の番組制作技術は海外でも高く評価されています。

番組制作のポリシー

番組は大人向けが中心です。

「プラネタリウムは子ども向け」というイメージがありますが、当館は大人向けの番組を中心にラインアップしています。だから、大人のお客様が一人で入りにくかったり、上映中に退屈してしまうことはありません。
もちろん親子でもぜひお楽しみください。まず大人が夢中になり、お子さんに自分の言葉でその魅力を伝えたくなるような番組を目指しています。 さらに子どもたちにも「子どもだまし」ではない、質の高いものに触れていただきたいと思っています。
ただし「大人向け」と言っても、それは天文マニア向けという意味ではありません。あくまでも一般のお客様の目線を持ち続けることにもこだわっています。

配給作品は上映せず、オリジナルのプラネタリウム番組を制作します。

最近のプラネタリウムでは、プロダクションから配給された全天映像作品を上映するのが主流です。しかし、それはパソコンの上でビデオを再生するようなもの。せっかく多彩な機能があるのに映像再生ソフト以外は使われていません。再生機器の性能の違い以外はどこで見ても同じです。
もちろん、中には優れた作品もあるかも知れません。しかしそれはあくまでも「映画」であって「プラネタリウムの番組」ではありません。
そんな中、当館のプログラムはほぼ全てが当館スタッフによるオリジナル。さらに、あくまでも「プラネタリウム」であることにこだわっています。
メーカーと一緒に制作する番組でも、シナリオや演出、プログラミングは当館が中心となって行います。私たちは誰よりも自分たちのシステムを熟知していますから、その能力を最大限に活かした番組を作ることができます。

録音されたナレーションではなく、解説員による生の解説です。

録音された音声を流すだけのプラネタリウムが多い中、当館では星空の解説はもちろんのこと、番組全てを専門のスタッフが解説します。 よくある「星空解説+テーマ番組」でもありません。星座解説を含めた番組全体が、一つのショーを構成しています。
生解説でその時々のお客様の層に合わせたり、最新の話題を盛り込んだりするのは当然。それ以上に、生解説でないと伝えられないもの、表現できないものを追求しています。 星や宇宙の魅力を知らないナレーターがどんなに上手に読んでも、その魅力は伝わりません。 星や宇宙の魅力を知り、お客様と同じ時間と空間を共有している人が語る言葉には、どんな高性能の装置でも表現できない「臨場感」があるのです。
もちろん、魅力のある解説ができるよう、解説員には発声・発音・滑舌・イントネーションなどの基礎はもちろん、わかりやすさ・表現力・シナリオライティングなどを磨く、独自のメソッドによる研修を行っています。

主役は星であり宇宙です。キャラクターや物語には頼りません。

アニメのキャラクターが出てくるような番組や、物語仕立ての番組はこども番組を除いて当館では投映しません。
プラネタリウムは星空に包まれ、宇宙を飛び回る体験ができる場所です。キャラクターや物語を見る場所ではないし、星空や宇宙を体験しているのが「あなた」でなく「登場人物」だとしたら、プラネタリウムとしての魅力が薄れてしまうと思いませんか。
プラネタリウムの中で楽しんでいただきたいのは、物語ではなく、星や宇宙そのものの面白さだと考えています。
プラネタリウムの主役は、あくまでも星と宇宙。そして、それをあなたが体験する。私たちは、そんなプラネタリウムを目指しています。

海外にも目を向け、日本のプラネタリウムの常識にとらわれない番組を目指します。

日本のプラネタリウムは、海外との交流がほとんどない、いわばガラパゴス化した環境の中で独自の発展をしてきました。しかし海外にはまったく違ったプラネタリウムの世界があります。ITの世界でもたびたび起きているように、ガラパゴスはいずれグローバルスタンダードに淘汰されることでしょう。
その中で、当館は平成3(1991)年の開館以来、海外との技術交流を積極的に行ないながらプラネタリウムを進化させていきました。番組制作でも、海外の先進的なプラネタリウム番組の移植と日本語化、プラネタリウムコンサート海外公演の共同企画などを通し、世界レベルの番組制作技術を磨いています。 その経験を活かし、日本ならではの繊細さ・緻密さを活かしつつも、日本のプラネタリウム「だけ」の常識にとらわれない番組作りを目指しています。
それは、星座や神話や癒しとかと言った日本だけの固定的なプラネタリウムの発想から飛び出した、プラネタリウムの新しい世界です。

プラネタリウムは「番組の上映装置」ではなく、「宇宙のシミュレーター」であると考えます。

プラネタリウムは大正12(1923)年、星空を背景にした惑星の運行をシミュレートするために作られた機械です。 そしてデジタル化された現在、その守備範囲は地上から見た星空から人類が観測可能な宇宙の全範囲へ、可視光線からさまざまな波長へと広がりました。 そんな「宇宙のシミュレーター」の機能を使わず、機能とは無関係な「物語」や「映画」を上映するのはプラネタリウム本来の使い方ではないと私たちは考えます。
だから、こども番組であっても、エンタテイメント性の高い番組であっても「宇宙のシミュレーター」としての機能を活かした演出にこだわっています。
当館の番組の映像の美しさを見て、全天CG映画と間違える方も少なくないのですが、ほとんどのシーンは緻密にプログラミングされたデジタルプラネタリウムのシミュレーションにより、リアルタイムに生成している映像。あくまでも「プラネタリウム」の映像なのです。

プラネタリウム番組は「作品」ではなく、「お客様と解説者が共有する時間と空間」であると考えます。

ここまでお読みいただければ、きっとおわかりいただけると思います。 丸いスクリーンに映写された「作品」を第三者の視点で鑑賞しているだけでは、たとえそれが最新で高性能の装置であってもプラネタリウムの本当の臨場感は生まれないことを。
迫力ある映像と音とともに、お客様と解説者が一緒に星や宇宙の世界を体験する。そんな時間と空間こそが、葛飾区郷土と天文の博物館が目指す「番組」なのです。

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